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第263話 洞窟探索


 高火力の魔法で一瞬にして終わってしまったため、実際の強さがどれほどだったかは分からないが、先ほどの魔法が対処できないレベルの強さだということは分かった。

 タコの魔物ならば、ヘスターの【フレイムトルメンタ】を楽々と躱していただろうし……もしかしたらあのタコの魔物が図抜けて強かった可能性も考えられる。


「一瞬で終わりましたね。昨日戦った魔物を想定して警戒していましたが、拍子抜けした気分です」

「昨日の魔物が強かっただけってのはあるかもしれないが、くれぐれも油断はするなよ」

「油断なんてしません。雇われている以上、もう昨日のような足手まといは致しませんので」

「その気概なら安心だな」


 フェシリアもサハギンとタコの魔物の力量差を感じたみたいだが、昨日はボロボロだったという自覚があったようで、気を緩めるどころか目をギラつかせている。

 『私個人としての仕事はこなせた』とは言っていたものの、プライドもあって即座に反省できなかっただけか。


「おいおい、二人だけで盛り上がってんなよ! 傍から見てる分には俺達が強いって感想しか湧かなかったけど、昨日の魔物ってそんなに強かったのか?」

「もう何度も話したが本当に強かったな。昨日の魔物なら、今の攻撃も確実に躱していたと断言できる」

「二人で戦ったせいで苦戦したからって、敵が大きく見えているだけじゃないの? 逃げ道を塞いで上級複合魔法で仕留める。今のコンビネーションを初見で避けられる魔物なんて、私は想像がつかないけど」

「クリスの話は嘘ではありませんよ。昨日の魔物なら確実に躱していたと私も断言できます」


 タコの魔物と戦った俺とフェシリアと、戦っていない組とで認識の齟齬が生まれている感じがする。

 口では散々説明したつもりだが、やはり実際に戦ってみないと分からないことは多いからな。


「まぁタコの魔物の話はそこまででいいだろ。昨日は嫌な気配を感じて目覚めたくらいだし、あれだけの強さを持つ魔物が近くに現れたら嫌でも分かる。サハギンは無事に倒せた訳だし、群れている敵には今のコンビネーションで狩っていこうぜ」

「了解しました。魔法は任せてください!」


 タコの魔物について盛り上がりかけた話を中断させ、先へ進むことを優先する。

 ここから先は魔物の気配も強く感じられるようになり始めたし、しっかりと役割を分担しつつ手分けしながら戦闘を行っていく。


 俺、ラルフ、スノーは少数の敵を素早く殲滅し、強敵に備えてなるべく体力は温存。

 ヘスター、ミエル、フェシリアは、群れで接敵した時に今のサハギン戦のように高火力魔法で一気に殲滅。

 即席パーティだからこそルールを決め、洞窟の探索を再開した。


 それからサハギン以降も様々な魔物と遭遇したが、やはりタコの魔物ほどの強さを持つ魔物はおらず、特に苦戦することもなく討伐できている。

 そして何よりも、フクロウの魔物から入手した【音波探知】が非常に強力で、洞窟の先の情報を正確に得ることができているため、不意を突かれることもなければ地形による不利を受けることもない。


 体力の消費は激しいものの短い発動時間で済ませられるし、今のところは非常に使い勝手の良いスキルと言える。

 スノーの高い索敵能力も合わさり、バハムートの洞窟に匹敵する危険度と言われて心配していた洞窟探索だが、今のところは順調そのもので攻略できている。


 残る洞窟探索における心配の要素は、やはり洞窟に入って最初に出会った魔物であるタコの魔物だな。

 今のところは遭遇していないのどころか気配すらも感じていなかったが、洞窟の最深部に近づき始めた――そう感じ始めたところで、俺は背筋がゾッとする感覚に襲われた。


「前方に何かいる。タコの魔物の近い気配を感じた」

「俺もっ! 俺も今感じたぞ! 心臓をギュッと掴まれたような感覚!」

「私も感じましたね。ただ、昨日戦ったあの魔物とは少し違った気配だと思います。……もちろん同じくらい嫌な気配ですが」


 俺の注意喚起に対し、ラルフとフェシリアも感じ取ったのかすぐに賛同してくれた。

 そしてフェシリアの言葉だが、俺も全く同じ感覚を覚えている。


 タコの魔物と実際に戦った俺達以外には分からないだろうが、似て非なる気配。

 せめて昨日と同じタコの魔物であれば、絶対に倒せるという自信があったのだが……。

 タコの魔物と同等の強さを持つ、別種の魔物となると話は全く変わってくる。


「俺もフェシリアと同意見だ。多分、前方にいる魔物はタコの魔物じゃない」

「タコの魔物とは別種の魔物で、同等以上の危険な魔物ってことでしょうか? ……クリスさんどうするんですか?」

「本音を言えば避けたいところだが、この嫌な気配を放つ魔物の先が気になる。正面から倒したいと思っているんだが大丈夫か?」

「今更遠慮しないでよ。嫌だって言ったって強行する気でしょ?」

「……まぁそうだな。嫌というなら、一人で引き返してくれとしか言えない」

「ほらやっぱり。キャンプから連れ出された時にもう覚悟決めてるし、さっさと片付けちゃいましょう。私は一秒でも探索を終えて、街に戻って体の隅々まで綺麗にしゆーっくりと眠りたいのよ」


 ミエルのその願望に全員が心の中で賛同したのか、緊迫した空気が少し和らいだ気がする。

 ……そう言ってくれるなら、もう一切の遠慮もいらないな。

 陣形を組み、この嫌な気配を放つ魔物退治と行くか。


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