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第262話 高火力の魔法


 疲労困憊の状態でテントへと戻り、眠ること約三時間ほど。

 体力全開とまではいかないが、ある程度の疲れが取れたためゆっくりと体を起こした。


 体の疲労よりも脳の疲れの方が大きいようで、頭をガンガンと内側から叩かれているように痛い。

 腕が六本もあったせいで、人間を相手にするときの何十倍も考えることがあったせいだろう。

 内心文句を垂れつつも、軽くストレッチをしながら体も目覚めさせていく。


「おっ! テントの中で動いていると思ったら、クリスももう起きたのか!」

「クリスも……? フェシリアももう起きてるのか」

「ああ、クリスが起きる数分前に起きてきたぞ! それより、そんな短時間の睡眠で大丈夫なのかよ! 顔色悪いように見えるぜ?」

「体調が万全とはお世辞にも言えないが、問題なく動けるくらいには回復した。いつまでもここで休んでもいられないし、とっとと洞窟内を探索したい」

「そういうことなら俺は強くは言わねぇけどよ!」


 テントの中を覗きにきたラルフにそう伝え、俺はすぐに着替えて準備に取り掛かる。

 フェシリアも既に起きているということだし、早めに着替えを済ませたところで外へ出てみると、全員が準備万端の状態で俺を待っていた。


「待たせてすまなかったな。俺が寝ている間、何か問題は起きなかったか?」

「はい。近くに魔物の気配を感じることもなく、平穏に過ごすことができました」

「スノーも警戒してくれてたけど、特に問題なさそうだったしかなり広い範囲まで大丈夫だと思うぜ!」


 あのタコの魔物以外は、特に問題もなかったみたいで良かった。

 定期的に襲われ、入口でずっと疲弊させられ続けるのだけは勘弁だからな。


「問題なかったなら良かった。……それじゃみんなの準備が整っているなら、洞窟の奥へと行ってみるとするか」

「私はこの先に進んで大丈夫なのかどうかが心配なんだけど、本当に大丈夫なのよね?」

「分からん。さっき戦った魔物は本当に強かったし、あれだけ強い魔物がうじゃうじゃいるのなら、安易に安全とは言い切ることはできない。心配ならこのキャンプで待っていてもいいぞ」

「……それって私一人で待つ訳でしょ? 待っている方が危険じゃないの?」

「それは知らん。俺達は先に進むけど、ついて来たくないなら待っていても良いって言っただけだ」

「……本当にずるいわね。待っている方が危険なら、このキャンプで待っているメリットが皆無じゃない!」

「ならついてくればいい」


 ぐだぐだ言っているミエルを突っぱねつつ、俺とラルフを先頭にすぐ出発することになった。

 ミエルの心配も決して馬鹿にできるものではないが、寝る前にも散々考えたがここで引き返すという選択肢はない。


 タコの魔物のような強敵がたくさんいたとしても、この探索不可と断言できるまでは洞窟内を探し尽くすつもりでいる。

 頬を思い切り叩いて気合いを入れ、俺達は昨日進んだ道を辿るように洞窟の奥へ向かって進んで行った。


 

 キャンプを出発してから約三十分ほど。

 慎重に進んでいるため移動速度は遅いものの、昨日タコの魔物と激戦を繰り広げた場所はとうに超えた。

 ここまで一切の魔物の気配はなかったが、ようやくちらほらと生命反応を感じ取れ始めたため、スノーと共に索敵しつつ更に慎重に進んで行く。

 

「この通路を抜けた先の少し開けた場所。そこに数匹の魔物の気配を感じる」

「この洞窟には初めて来たのよね? そんな細かいことまで分かるの?」

「ああ。音の反響である程度は分かる。それよりもだ、この先の魔物は避けられない。倒して進むぞ」

「クリス、魔物のある程度の強さは分かるか? 強いなら、俺とクリスでしっかりと陣形を組もうぜ!」

「多分だが、そこまで強くないはず。三人の魔法で一気に殲滅してくれると助かる」

 

 タコの魔物ぐらいの強さを想定し慎重に進んできたのだが、先にいる魔物からは生命力を然程感じない。

 それなりの強さはあるだろうが、ヘスター、ミエル、フェシリアの三人の魔法であれば、苦なく倒しきることができるはずだ。


 この提案に真っ先に否定してきそうなフェシリアだが、昨日の一件があったからか文句なく従ってくれ、その様子にミエルが少し驚いた表情を見せている。

 俺、ラルフ、スノーの前衛とヘスター、ミエル、フェシリアの後衛を丸々入れ替え、何かあった時に即座にサポートを行える距離で俺達は待機しつつ、タイミングを合わせて一気に飛び出した。


「魔物の種類は――サハギン系統か? 作戦は変えずにそのまま行く」

「了解しました。【フレイムトルメンテ】」


 前方に見えた敵は、半魚人のような見た目をしている魔物であるサハギン系統。

 通常のサハギンは緑色の体が特徴的だが、目の前にいるのは黒色をしていて更に角のようなものが額から生えている。


 オークとオークソルジャーが正確には違う種類のように、サハギンと目の前にいる魔物が違う種類ではあるのは間違いないが、実際に見た感じも強さを感じなかったため構わず討伐に移った。

 まずはヘスターが、【フレイムトルメンタ】で周囲を囲うように炎を展開。

 逃げ場を失い、サハギン達が正面から強行突破するしかなくなったところを――。


「【ライジングボルト】」

「【アイスクライオニシス】」


 フェシリアとミエルが強烈な魔法を放った。

 超高火力の魔法は正面からサハギン達に襲い掛かり、その後ヘスターの【フレイムトルメンタ】が徐々に収縮を開始し、目の前には映るのは立ち昇る炎の渦のみとなる。

 

 その炎の渦が徐々に小さくなっていき、完全に消えた頃には……。

 昨日のタコの魔物と同様に、複数のサハギン達は存在しなかったかのように跡形もなく消えていた。



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