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第257話 長い道のり


 道中で様々な生物に襲われつつも、俺とラルフでなんとか退けて進むこと約半日。

 徐々に水域が低くなっているのが感じ取れ、沼地のような緩い泥になりかけた時――ようやく前方に洞窟らしきものが見えてきた。


「見えたぞ! 絶対にあの洞窟がそうだろ!」

「見るからに洞窟だし、あそこで間違いなければいいんだがな」


 ラルフは飛び跳ねながら喜び、ミエルも安堵した様子を見せている。

 予想以上に道のりが長く、ミエルに関しては魔力ポーションを使ってなんとか凌いでいた状態だったからな。

 交代交代とはいえ、半日近くも魔力で足場を作っていたのだから魔力切れを起こすのも無理はない。


「ヘスター、ミエル、フェシリア、スノー。ここまで足場を作ってくれて本当に助かった」

「お礼は全てが終わってからにしてください。帰りもまた足場を作らなければいけませんし、洞窟の中は道中以上に危険なんですよね?」

「ああ。話によると洞窟の中の方が危険という話だ。何よりも厄介なのが、何が危険なのかが分からない点。くれぐれも注意してくれ」

「えー。また注意しなくちゃいけないの? 注意しすぎてもうヘトヘトよ」

「とりあえず……洞窟の入口付近でキャンプを張るつもりでいる。安全を確保次第、休憩とするからそれまでは気張ってくれ」

「クリスさん、洞窟でキャンプって大丈夫なんですか?」

「分からないけど、体を休めないとどうしようもないからな。索敵を行い、安全を確保でき次第になるだろうが休める時に休みたい」


 洞窟が危険といっても、洞窟の入口から危険ということはないと踏んでいる。

 俺とスノーで入念に索敵を行い、大丈夫と判断し次第キャンプを張る予定だ。


 氷魔法なしでも歩けそうなドロドロの沼地になったからといって気を緩めることはせず、目の前に見えている洞窟までしっかりと足場を作ってもらい、俺達は目的地であろう洞窟の中へと足を踏み入れた。

 洞窟の中はポタポタと水滴が落ちる音のみが響き渡っており、それ以外は一切の音がしない。


 魔物の気配もなく、【生命感知】【魔力感知】の二種類のスキルを発動させたが、スキル範囲内には何の反応もなかった。

 ……ただ、スノーは何かしらの気配を感じ取っているらしく、毛を逆立たせながらグルルと喉を鳴らしている。

 

「クリスさん。魔物の気配の方はどうですか?」

「入口付近からは何も感じない。もう少しだけ索敵するから待っていてくれ」

「俺もついていこうか? いきなり襲われたらあぶねぇだろ?」

「ラルフも入口で待ってていい。魔物とは別の何かがあった際は、俺一人の方が対処できる」


 ついてこようとするラルフを制止し、俺はスノーも置いて一人で洞窟の奥へと進んで行く。

 スキルも【生命感知】【魔力感知】の二つから、更に【知覚強化】【知覚範囲強化】【聴覚強化】【深紅の瞳】【隠密】【消音歩行】の索敵、隠密スキルを発動させ、フクロウの魔物から新たに獲得したスキルである――【音波探知】のスキルも発動させた。


 【音波探知】のスキルは、音によって立体的に視ることのできるスキルで、【聴覚強化】や【深紅の瞳】の上位互換とも呼べるスキル。

 無音の場所だとしても俺が言葉を発すれば、その音の跳ね返りで真っ暗な場所でも正確に場所の把握できるという訳だ。


 デメリットを上げるとすれば、こちらから音を出さなくてはいけないことと、スキルの燃費が非常に悪いこと。

 有用なスキルにありがちだが、【音波探知】は【能力解放】と同等以上の体力を消費してしまう。


 そのため使用するタイミングは考えないといけないのだが、今は使わなくてはいけないタイミング。

 他のスキルと組み合わせつつ、俺は洞窟内部の索敵を行っていく。

 

 入口付近からは何の反応もなかったが、やはり洞窟の奥には何かしらの魔物が生息しているようで、スノーが警戒するのも分かるほど様々な音が聞こえてきた。

 声を出しながらゆっくりと歩を進めていき、魔物の数を図ろうと思ったのだが……ここからでは遠すぎるせいか、正確な数までは図ることができそうにない。


 洞窟のため音が余計に反響して分かりやすくなっているものの、流石に洞窟内全てを把握することは無理のようだな。

 とりあえず、近くに脅威はないということが分かっただけで相当な収穫。


「少し奥まで進んで索敵したが、入口付近には魔物がいないことが分かった」

「本当ですか? 私はその言葉が本当かどうか心配なのですが」

「心配なら自分で見て来ても構わん」

「分かりました。この目で確認させてもらいます」


 俺の報告に疑問を持ったフェシリアを行かせ、俺達はキャンプを張ることに決めた。

 荷物は最小限に留めたため、テントと寝袋のみという最低限のものだが、何もないよりかは格段にマシと言えるだろう。


「クリス。ここで一泊するのか?」

「俺はそのつもりだが、みんなはどう思っている?」

「私は賛成。魔力もほとんど空だし、洞窟内の探索は明日に回した方がいいと思ってるわ」

「私も賛成ですね。私自身の魔力には余裕がありますが……クリスさん、ラルフも疲れているようですし、危険な洞窟なら万全の状態で挑むのがいいと思います」

「俺も! 慣れない場所での戦闘に加えて、氷の足場で体が冷え切って余計に体力を使ったからな! 心から休める場所ではなさそうだが、少し寝るだけでも大分違うはずだ!」


 索敵に行ったフェシリアを除く三人も賛成してくれたみたいだし、ひとまず洞窟の入口で体を休めるとするか。

 本格的な洞窟攻略は明日から。

 ラルフの言う通り、ゆっくりと休める環境ではないが……少しでも体を休ませて明日の攻略に備えるとしよう。



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