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第256話 弱肉強食


 単純な強さはさることながら、電気を帯びているため水中に落ちれば一発で感電させられてしまう。

 ヘンジャクも散々危険な魔物の一匹として名を挙げていたが、正直ここまで体の大きな魔物だとは思っていなかったな。


「あの魔物はサンダーアリゲーター。電撃を扱う水陸両用の魔物だ。くれぐれも水中に引きずり込まれないように気をつけろ」

「気をつけろって言われてもよぉ……もう近づいてきているぞ!」

「俺達は高い位置を取っているんだから、足場に登らせないようにしつつ引きずり込まれないようにも気をつければいいんだよ」

「そんな上手いこといくのかよ! 電撃を使ってくんだろ? ……もし水中に引きずり込まれたら助けてくれよな!」

「あの、私が電撃魔法でサンダーアリゲータなる魔物を倒しましょうか? 安全且つスピーディに倒せると思いますよ」


 氷の足場の上で、俺とラルフとで激しく口論しながらどう動くかを揉めていたところ、見兼ねた様子のフェシリアが再びそんな提案をしてきた。

 やはり水中の敵に対して有効なのは魔法であることは間違いないし、慌てふためいている俺とラルフに任せられないという気持ちもあるのだろう。


 ……ただこの先のことを考えたら、サンダーアリゲーターは俺とラルフで処理しなければいけない。

 足場も作れない俺達が、ただ突っ立っているだけって訳にもいかないからな。


「サンダーアリゲーターは、高い電撃耐性を持っているらしいから意味がない。自分の電撃攻撃で自身の体を傷つけたら意味がないからな」

「――でしたら、【アイシーバースト】で氷漬けにしてさしあげます。これならば文句もありませんよね?」

「駄目だ。何度も言うが魔力は温存してもらいたい。俺とラルフを信じて静観していてくれ」

「あなたたちに一切の信頼も置くことが出来ません。……が、魔力を温存しておきたいというのは同意見ですね。少しでも劣勢と判断すればすぐに私が倒しますので、頭に入れておいてください」


 ピシャリとそう言い切ったフェシリアにモヤモヤとしつつも、俺もその条件で了承する。

 言っていることはもっともだし、俺達が手こずる=自分を危険に晒すことでもあるからな。

 とにかく手出しさせないように、圧倒的に戦いを進めれば問題ないだけだ。


「ラルフ、絶対に手間取るなよ。俺達で完璧に倒す」

「あれだけ言われちゃ、俺だってやる気出てきたわ! クリスは上から攻撃を加えてくれ。俺はこの足場に上がらせないように立ち回る!」

「了解。確かに分担した方が上手くいく。攻撃は任せろ」


 サンダーアリゲーターのいきなりの登場で少し慌てたが、フィシリアの発言で冷静になれた。

 かなり特殊な場だが、しっかりと攻守で役割をはっきりさせればそう恐れる相手ではない。


 見るからに危険だと分かる体色に、人一人くらいならば丸飲みできる大きな口。

 更に電撃という強力なスキルを保有しているサンダーアリゲーターだが、ラルフが盾を使って水中に留め、俺がその隙を狙って上から剣を突き刺していくことで、攻撃の隙を与えることなく一方的に攻撃を行うことに成功。

 

 このまま徐々に弱らせて倒しにかかろうと目論んでいたのだが、泥で濁っている水は血によって更に濁りを増し、そんなサンダーアリゲーターの血に誘われて小さい肉食の生物が集まり始めた。

 集まってきた小さな生物は動きを活発化させ、一気に襲い掛かってきたのだが――襲われたのは俺達ではなく、血を流したサンダーアリゲーターだった。


 自身の体を食いつかれたが分かったようで、すぐさま俺達からも離れて逃走を開始したが、無数にいる生物に次々と襲われ……サンダーアリゲーターはあっという間に無残な死体となった。

 死んだきっかけは俺達なのは間違いないが、殺した感は一切ない。


 この東エリアでも上位に食い込むであろうサンダーアリゲーターでも、容赦なく食い殺される弱肉強食の場所。

 魔物は魔物で結託する訳でもなく、全てが敵でありながら飯でもある異常な環境。

 フェシリアを見返すべく圧倒してやろうと意気込んでいたが、そんな気持ちに冷や水をぶっかけられたような感覚だな。


「サンダーアリゲーターは死んだんだよな?」

「ああ。ひっくり返って水中から腹が出ているし、今もなお水中では捕食されているのか、血がドンドンと溢れ出ている」

「……なんだろうな。この素直に喜べない感じはよ! この水没林、ちょっと特殊過ぎないか?」

「だから何度も言っただろ。東エリアは危険な場所だってな」


 数分前まで脅威であったサンダーアリゲーターが、無残な姿で水流に流されていくのをそんなことを呟きながら見送る。

 とりあえず……実際に戦った俺とラルフだけでなく遠巻きに見ていた三人も、この水没林の危険性についてを分かっただろうしプラスに考えよう。


「ねぇ、柵のようなものつける? 魔力を余分に使うけどさ」

「いやいらないだろ。注意だけはしておけば大丈夫なことには変わりない」

「ここはクリスの意見に賛成ですね。とにかく先に進むことが一番の安全だと思います。ここから目的地までは分からないようですが、先に進むことを考えましょう」


 フェシリアの言う通り、先に進んで早く抜けることが一番安全だ。

 ここからどれほどの距離があるか分からないが、目指すはこの先にある洞窟。

 ヘンジャクの話によれば、その洞窟も危険極まりない場所らしいが――とにかく行ってみなければ話が始まらない。

 

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