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第250話 【月影の牙】


 一人は青髪短髪の精悍な男。筋肉量も見るからに凄まじく、体のバランスの良さも抜きんでている。

 両手を広げて肘をソファの背もたれに乗せ、足はテーブルの上に組んで置かれている非常に行儀の悪い座り方だが、そんな座り方でも一瞬の隙も見当たらず立っている俺から攻撃を仕掛けても難なく防がれる――そんな脳内予測が簡単につく。


 もう一人は、頭にサークレットのようなものをつけた金髪美人。

 髪は貴族のような巻き髪で、所作が王女のシャーロットと彷彿とさせることから良いとこの出だというのが分かるが……。

 キリッとした好戦的な表情のため、武人だということが分かる。


 そして、二人と比べて力の強さを感じなかった人物だが、黒髪キノコヘアーの小さくちょこんと座っている中世的な人物。

 何処となくアルヤジさんを彷彿とさせるこの人物が、ラルフも言っていた有名な四人と比べて、世間にも知れ渡っていない五人目の人物だろう。


 二人からはボルスと戦った時に感じたような、肌がヒリつくような感覚を俺はビシビシと感じている。

 ラルフを待っている時に強者を探す遊びをしていたからこそ、そこらの凡人との違いがはっきりと分かるな。

 

「ヴィンセントさん! わざわざ時間を作って頂き、ありがとうございます!」

「ラルフの頼みとありゃ、時間を作るぐらい朝飯前だ。……それより、隣の男が例のクリスって人物か?」


 何処か【銀翼の獅子】のレオンと似た雰囲気のある、ヴィンセントと呼ばれた青髪の男。

 俺を顎で指しラルフに尋ねたタイミングで、自己紹介を行うことにした。


「ラルフと一緒にパーティを組んでいるクリスだ。【月影の牙】のことはラルフから色々と聞いている。ラルフと仲良くしてくれてありがとう」

「ふーん。わざわざ呼び出しておいて、随分と生意気ですわね」


 ヴィンセントの方を向き、軽い会釈も交えて挨拶したのだが、反応したのは隣に座っていた巻き髪の金髪女。

 魔力が駄々洩れ始めたし、イラついているのがありありと見える。


「おいおい、フェリシア。タメ口を聞かれたくらいで怒るなよ。もっと寛容にいこうぜ?」

「別にタメ口を使われたから怒っているのではありません! 呼び出しておいて、そのことに対するお礼の一つもない礼儀知らずだからこそ怒っているのです」

「それならラルフがお礼してたじゃんよ。リアムも聞いてたよなぁ?」

「……え、ええ。ま、まぁ」

「――もういいです! 早く本題に入って頂けませんか?」


 金髪巻き髪のフェリシアと呼ばれた女が、俺の態度に対して怒った様子を見せてきたが、ヴィンセントがからかった様子で宥めてくれた。

 ただ、フィシリアはからかわれたこともあって怒りが更に増長しているようだが、さっさと本題を促してくれたのは助かる。


「わざわざ集まってもらった理由なんだが……。ロザの大森林の探索を行うに辺って氷魔法を扱える強い冒険者を探していて、実力があると評判高い【月影の牙】にアポを取らせてもらった。金は払うから俺達の手伝いをしてくれな――」

「お断り致します。私達も暇ではありませんので。それでは、ご機嫌よう」

「勝手に断るなって。そう邪険にしたら俺がラルフに嫌われちまうだろ? フェリシアは黙ってていいから、もう少し話を聞かせてくれや」


 俺の言葉を聞き終わる前に立ち上がろうとしたフェリシアの腕を握り、行かせないようにしたヴィンセント。

 そんな睨むようにヴィンセントを見下ろしつつも、腕を組んでそっぽを向きながら座り直したフェリシア。

 ……どうやらヴィンセントのお陰で、まだ交渉の余地はありそうだ。


「フィリシアさん、すいません! クリスはちょっと口が悪いので、寛容な心で対応してくれるとありがたいっす!」

「ラルフ、別に謝らなくていいぞ。フィリシアはちょっと気が立ってるだけだからな。それでクリスと言ったか? 詳しく話してくれよ。条件によっちゃ受けてやってもいいぞ」


 ヴィンセントはニヤリと笑いながら俺を指さした。

 条件によっては引き受ける――か。金なのか、それとも物なのか。

 納得できるものを提示できるか分からないが、交渉次第ではチャンスはまだある。


「ヴィンセントはスキルの実って知っているか?」

「スキルの実? もちろん知ってるぜ。スキルが増えるっつう伝説の実だろ?」

「ああ、そうだ。俺はそのスキルの実がロザの大森林にあると聞いて、このエデストルにやってきたんだ」

「…………おお。なるほど、なるほどな! スキルの実を探しに行くために、腕が立ち尚且つ氷魔法を使える人間を探しているってことか!」


 元からニヤニヤ顔だったが、スキルの実という単語が出た瞬間に満面の笑みへと変わった。

 体勢も前のめりになっているし、ヴィンセントは興味を示してくれたようだが……他の二人は依然として態度は変わらない。


「その通りだ。報酬はそれ相応の金額を支払わせてもらう。どうにか協力の方を頼めないだろうか?」

「いいじゃねぇか! めちゃくちゃおもしれぇ! おい、フィリシア。ついていってやれよ」

「絶対に嫌です。面白いと思うのであれば、ヴィンセントがついて行けばいいでしょう」

「俺がついて行きたいのは山々だが、クリス達が求めているのは氷魔法を使える人物だろ?」

「ああ、そうだ。氷魔法を使える人物を探している」

「ほらな? フィシリア。ラルフの頼みでもあるんだから、協力してやれっての!」

「嫌ですって。ラルフも別に好きではありませんし、私には関係ありません」


 フィシリアに真正面から好きではないと言われ、ラルフは人知れずショックを受けている様子だが……。

 そんなことはどうでもよく、ヴィンセントも説得してくれているこの状況は本当にありがたい。

 

 話の流れ的にフィシリアが【賢者】。

 俺からもなんとかお願いをし、フィシリアの助力を得られるように説得にかかろう。



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― 新着の感想 ―
[良い点] おもしろいです! [一言] フェリシアなのかフィリシアなのかフィシリアなのかフェシリアなのか笑
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