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第244話 探索


 拠点に着いてからすぐに材料集めを行い、俺の指示のもと家作りを開始した。

 三人に加えてスノーもいたことで、粗末な家ではあるものの想像の何倍も早く二軒の大きめの家を建てることができた。


「ふぃー、完成! ちょっと隙間風は気になるけど、かなり良い感じの家を建てられたんじゃないか?」

「だな。寝床として使うなら十分だろう。予定よりも早く家を建てられたし……今から東側にも行ってみるか」

「ん? 東側って来週探索予定の場所だよな?」

「正確に言うと違う。来週探索するのは東エリア。今回の探索で向かおうとしているのは南エリアの東側だ」


 頭の中に地図を思い浮かべているようだが、いまいち理解し切れていないラルフは置いておき、俺達はオークの拠点を離れて東側を目指して歩を進める。

 今日行いたいのは、明日の拠点作成に向けての拠点地探し。


 これまで通り、魔物の巣か洞穴が理想ではあるだが……ペイシャの森の岩と岩の隙間みたいな拠点に向いている場所なら正直どこでもいい。

 ラルフとヘスターにもその条件を伝えており、スノーに索敵を任せて三人で周囲を窺いながら森の中を歩いていく。



「クリスさん。あそこの洞穴はどうですか? 少し狭そうではありますが、洞穴と呼べるんじゃないでしょうか?」

「うーん……少し狭いな。決して悪くはないがもう少し探してみよう。探して良い場所がなければ、あそこに作るでいいと思う」


 ヘスターが良さそうな洞穴を見つけてくれたのだが、かなり狭そうだし位置もまだ少し東エリアからは離れている。

 もう少し良い立地がないか粘りたいところ――。

 そんな理由からヘスターの提案を一時却下したと同時に、次はラルフが驚いたような声を上げた。


「クリス、ちょっとこれ見てくれよ! 何かしらの糞じゃねぇか?」


 地面を指さしながら声を上げたラルフの下に近づき、その指さす方向を確認してみると確かに軽く穴が掘られており、そこに一匹とは思えない魔物らしきもの糞があった。

 これはもしかすると……近くにこの糞の主の魔物の巣があるかもしれない。


「既に臭いも落ち着いているし、隠すようにあったのによく見つけたな」

「丁度、俺もトイレがしたくなって木の裏に行ったら見つけたんだ! 今日はツイているかもしれないぜ!」

「……ん? ここにラルフの糞も混じってるのか?」

「催したのは小便の方だし、まだしてねぇよ! トイレを出発前に行ったの知ってるだろ!」

「なら良かった。スノー次第だが、臭いで辿れるかもしれない」


 スノーが糞から辿ってくれるか分からないが、やる気さえ見せてくれれば魔物の巣に辿り着けるかもしれない。

 早速、スノーを呼んで交渉してみるとするか。


「スノー。この糞の持ち主を探したいんだが、臭いを辿って探してくれるか?」


 俺は腰を落とし、スノーの目線に合わせてそう尋ねたのだが、何を頼まれているかすぐに理解したスノーは嫌という素振りでそっぽを向いた。

 ……やはりこの反応を見る限りだと、糞の臭いを辿りたくないってことだろう。

 俺も同じ立場だったら嫌だし、既に索敵で役に立ってもらっているから強要は出来ないな。


「スノーはやりたくないみたいだから、足跡とかの痕跡を辿って探していくぞ」

「糞もカラッカラに乾いている状態だし、もう足跡なんて残ってないだろ! 俺からもスノーにお願いしてみるわ!」

「断られたんだからやめろ。ラルフもこの大量の糞の臭いを嗅いで、糞の臭いを頼りに探すのなんて嫌だろ?」

「……確かに嫌だな」

「三人で手分けして魔物の痕跡を探すぞ。スノーも大量の魔物の反応を見つけたら教えてくれ」

「アウッ!」


 今度は一つ吠えて返事をしてくれたスノーを撫でてから、魔物の巣探しが開始された。

 俺達は痕跡探しで、スノーは複数固まっている魔物の気配探知。


 道中で何匹かの魔物との戦闘も交えつつ、捜索しながら東側を練り歩いていると――。

 突然、スノーが東北東を向いて複数回吠えた。


「もしかして見つけたのか?」

「アウッ!」

「やっぱスノーは凄いな。よくやった」

「痕跡が全然残されてなかったし、今日中の捜索は無理だと思っていたけどやっぱスノー様様だな! よーし、いっちょ魔物退治と行こうぜ!」

「ちょっと待ってください。ラルフは一回落ち着いて。……クリスさん、まずはどんな魔物かの確認をしましょう。強い魔物相手なら作戦を立てないといけませんから」

「そうだな。ひとまず俺一人で気配を消しながら様子を見てくる。ラルフ、ヘスター、スノーは待機で頼む」

「分かりました。よろしくお願いします」


 ヘスターの言う通り、警戒するに越したことはない。

 索敵スキルを保有している俺が様子見してから、どう狩るかを考えた方がいい。

 

 それに複数の魔物の反応があるからといってそこが魔物の巣であるかどうかも不明だし、魔物の巣がお粗末なものなら戦う意味がないからな。

 一度冷静になり、俺は二人とスノーを置いて一人で東北東を目指して歩みを進める。


 【知覚強化】【生命感知】【魔力感知】【聴覚強化】【知覚範囲強化】【隠密】【消音歩行】に、新たに取得した【野生の勘】を発動させて慎重に進んで行く。

 分かれた位置からしばらく歩いていたところで、ようやく俺の索敵スキルにも魔物が引っかかった。


 かなりの数の生命反応。

 それにオークよりも強いも生命反応ではあるが、若干上回ってるくらいで特筆して高い生命反応という訳ではないな。


 警戒レベルを一段階下げつつも、とりあえず魔物の種族の確認を行うため木の陰に隠れながら更に近づいていく。

 徐々にオークの拠点に近い集落のような拠点が見え、そこに巣作っていたのは俺の見覚えのある魔物だった。


 人間に近い体を持っており、白い体毛で身を包んだ長い耳を持つ魔物。

 そう。オンガニールの宿主になっていた――人型兎だ。



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