第240話 過密日程
ボルスさんから免許皆伝を受けた日の翌日。
明日はいよいよラルフとヘスターとスノーを連れて、ロザの大森林の下見へと向かう。
前回の探索から今日にかけては、依頼に話し合いに修業に人探しにと本当に忙しく、自分の自由な時間を設けることができなかった。
今日も金を少しでも稼ぐべく午前中は依頼を行っていたのだが、前回のロザの大森林の成果の振り返りが全くもって出来ていなかったため、無理を言って午後は時間を作らせてもらった。
疲労も滅茶苦茶溜まっており、正直今すぐにでも眠りたいところなのだが……。
残りの半日でやるべきことがありすぎるため、少しも休んでいる暇はない。
まず――今日絶対にやるべきことは、前回採取した有毒植物の判別。
レイゼン草などは昼食代わりに摂取していたものの、乾燥させた状態のまま放置しっぱなしで教会に行く時間がなく一切手つかずの状態。
数自体はそこまで多くないが、オークキングのオンガニールの実もあるし正確に判別したいところだ。
次にやるべきことは『ガッドフォーラ』に行って、ジンピーのポーションを受け取りに行くこと。
ボルスさんから伝言を貰っていたが、結局『ガッドフォーラ』にも時間がなくて行けていない。
朝から夜まで依頼をこなす日々だから当たり前といえば当たり前なのだが、店の営業時間に間に合わず、依頼から戻ってきたら閉まっているというのが大半。
大手の雑貨店『レラボマーケット』だけは、従業員も豊富にいるため夜遅くまで営業しているのだが……。
教会も『ガッドフォーラ』もケヴィンの武器屋も、俺達の生活リズムでは行くことができなかった。
剣の手入れも自分で出来る限りのことはやってはいるが、そろそろプロに剣の手入れをやってもらいたいし、『ガッドフォーラ』の後はケヴィンの武器屋に行く。
部屋に有毒植物を取りに向かう道中で、頭の中でしっかりとスケジュールを組みながら早足で俺は『ゴラッシュ』へ戻った。
部屋に置いてあった有毒植物を鞄に詰めてから、俺は二度目となるエデストルの教会へとやってきた。
神秘的な雰囲気のある教会の中を進み、俺は能力判別を行ってくれる部屋の中へと入る。
今までずっと埃の被った汚い部屋が能力判別の部屋だったため、まだ綺麗な部屋に違和感がありつつも――俺は部屋に備え付けられているベルを鳴らした。
しばらく座って待っていると、部屋の中に入ってきたのは前回と同じ婆さんシスター。
俺はもちろん記憶に残っているが、前回から結構時間が経っているし幾人もの冒険者を相手にしている向こうは覚えていないはず。
なんて声を掛けようか迷っていると、俺の真向かいに座った婆さんシスターの方から声を掛けてきた。
「あれ。前回たくさん能力判別をしてくださった方ではないですかね?」
「そうだが……覚えているのか?」
「もちろんですよ。エデストルではかなりの人が能力判別を行いに訪れますけど、一日に複数回も能力判別する人はおりませんからな」
まぁ、それはそうか。
一回の能力判別も金貨一枚と安くはないし、一日に複数回も能力判別を行う奴なんてアホだけ。
俺が逆の立場だったとしても、嫌でも印象に残ってしまうだろう。
「そりゃ世界広しと言えど、こんなおかしなことをするのは俺だけか。今回も複数回来る予定だからよろしく頼む」
「今日も複数回行うんですかね? 教会側としてはありがたい限りですけども……まぁ無意味と理解しておるようでしたら、私は無理に止めは致しませんよ。それでは冒険者カードと金貨一枚よろしいですかな?」
俺は冒険者カードと金貨一枚を婆さんシスターに手渡し、能力判別が行われるのを待つ。
新種やオークキングのオンガニールは食べていない状態ではあるが、どれだけ能力が上昇したのか非常に楽しみだ。
「確かに金貨一枚頂きました。それでは始めさせて頂きますよ。――終わりました。冒険者カードを確認してくだされ」
「ありがとう。助かった」
素早く能力判別を行ってくれた婆さんシスターに軽く礼を伝えてから、俺は冒険者カードの確認を行う。
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【クリス】
適正職業:農民
体力 :26 (+434)
筋力 :24 (+512)
耐久力 :22 (+319)
魔法力 :6 (+182)
敏捷性 :14 (+244)
【特殊スキル】
『毒無効』
【通常スキル】
『繁殖能力上昇』『外皮強化』『肉体向上』『要塞』
『戦いの舞』『聴覚強化』『耐寒耐性』『威圧』『鼓舞』
『強撃』『熱操作』『痛覚遮断』『剛腕』『生命感知』『知覚強化』
『疾風』『知覚範囲強化』『隠密』『狂戦士化』『鉄壁』『変色』
『精神攻撃耐性』『粘糸操作』『魔力感知』『消音歩行』
『自己再生』『身体能力向上』『能力解放』『脳力解放』
『脚力強化』『深紅の瞳』
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うーん……。伸びているといえば伸びているか。
平均で30~40前後の能力値が上昇している。
敏捷に関してはジンピーのポーションを受け取れていないため、前回からほとんど変化はないが、他の能力値に関しては及第点の上昇ってところだろう。
本音を言えばもっと爆発的な能力上昇を期待していたところではあるが……これ以上求めるのは流石に身の程知らずもいいところ。
俺自身の能力が平均で1しか上がっていないのだから、有毒植物のポテンシャルには感謝しかない。
噛み締めるように自分の能力を確認してから、いよいよオークキングのオンガニールの効能を調べる。
単体での討伐推奨ランクはミスリルだが、軍を率いるとなると一気に討伐推奨ランクが跳ね上がる魔物。
実際に戦った時も仲間に力を付与していた様子が見受けられたし、そういった類のスキルを持っていることは明白。
そのスキルが通常スキルであることを願いつつ、俺は一度教会を後にしたのだった。
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