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第239話 確かな手ごたえ


 俺がルーファスの見えない遠距離攻撃を看破してからは、ボルスとルーファスの二人が俺に攻撃を加えることはできなくなっていた。

 無意識の内に発動させていた【脳力解放】のスキルの補助もあり、二人が仕掛けるよりも前に俺は二人の動きを先読みし、初めて見せる攻撃すらも完璧に読み切ってみせた。


 そんな対応を続けていく内に、二人の揺るがない信頼によるコンビネーションにも陰りが見え始め……。

 攻撃を先読みされ続けたことで、ボルスを信頼しきれなくなったルーファスが一人突っ走り攻撃を仕掛けたところでコンビネーションは完全に崩壊。


 二対一の数的有利を消し去るどころか、焦りで雑な攻撃を仕掛けたルーファスを俺は楽々とKOし、残ったボルスもあっという間に打ちのめし――ボルスとルーファスによる指導は俺の完勝で終了となった。


「はぁ……はぁ……。お、おかしいだろ……。ボルス! 聞いてねぇぞ。こんなバケモンなんてよ!!」

「俺も驚いてんだわっ! 元々年齢以上の実力を持っているとは思っていたが、まさかここまで強いとは思ってもみなかった!」


 修練部屋で大の字で寝転びながら、初めて会った時や戦闘前とは打って変わって汚らしい言葉を吐くルーファスと、膝に手をつきながら酷く驚いた表情でただ俺を見てくるボルス。

 確かにボルスとルーファス相手に完勝できたが、二人の実力が想像以上に高かっただけで元々あっさりと勝てると俺は想像していたぐらいだ。


「ボルスと……ルーファスも。手合わせに手伝ってくれてありがとう。お陰で確実な手ごたえを掴むことができた」

「手ごたえを掴むことができた――じゃねぇよ! 一体どんな芸当だ。初見で俺とボルスのコンビネーションに対応できた奴なんて……【月影の牙】の連中ぐらいだぞ!」

「そいつらは知らないが、俺は冷静に二人の動きを読み切ってただけだな」


 フラフラと歩きながら俺に近づき、両肩を掴んで問いただしてきたルーファスに簡潔に説明する。

 正直、戦闘中はほとんど言語化できない感覚に近いものだったが、言葉として言い表すならこれが最適な回答なはず。


「おい、ルーファス。一旦落ち着けってんだよ! お前の本性出ちまってるぞ!」

「あー、くそ。久しぶりに常識を打ち破られた気分だ。……俺はちょっと外で頭冷やしてくるわ」


 ボルスに諭されたことで、鼻息を荒くさせていたルーファスもひとまず落ち着きを見せたあと、床に落ちているタオルを手にしてから外へと消えて行った。

 やる気なさそうにしていて物腰が柔らかいあの態度は猫を被っていたって訳か。

 

「ルーファスが取り乱して悪かったな! 興奮するとああなっちまうだけだから、あんま気にしないでくれ」

「別に気にしていない。普段はやる気なさそうにしているから、まぁ少し驚きはしたけどな。……それより、俺の動きはどうだった? 対峙してみた感想として、ボルスに近づくことはできていたか?」

「全然近づけてねぇよ! 俺のやってることなんて単純に逃げ回ってるだけだぞ? クリスの動きは俺の更に数段上をいっていたわ! ……まぁ俺達が弱かったのもあるかもしれないが、正直俺からクリスに教えられることは何もねぇな。――免許皆伝だ! これからはクリスが俺のボルス流を背負ってくれ!」


 満面の笑みで俺の肩を叩きながら、そう言ってきたボルス。

 短い期間だったけど、俺はこの短い期間で本当に成長することができた。


 肉切らせて骨を断つ――というほどではないが、本気で攻撃するからこそ相手は最大限の警戒をし、その本気の攻撃すらも囮として使う。

 攻撃の一部分だけを切り取っても、当たり前だと思っていたことが当たり前に実戦できていなかったということを身に染みて思い知らされた。


 今日こうしてルーファスを誘ってまで、俺に最大限の負荷をかけてくれたボルスには頭が上がらない。

 ボルス流としてやっていくつもりは更々ないが、この感謝の気持ちだけは忘れない。


「ボルス流は背負わないが、エデストルにやってきてから今日まで世話になった全てを俺は忘れない。何か俺が助けられることがあればいつでも言ってくれ。この借りは必ず返すよ、ボルス“さん”」

「別に借りを返すなんていら……ん? お、お前、今俺をボルスさんと――」

「それじゃ今日は帰らせてもらう。また街で見かけたら声を掛けるから、よろしく頼む」

「お、おい! クリス、ちょっと待て! もう一回俺をなんて呼んだのか聞かせろっ!!」


 修練部屋に響き渡るような大声でそう叫び、ボルスさんは俺を呼び止めようと追いかけこようとしたが……。

 手合わせでの疲労のせいか、自分の足に引っかかって盛大に転んだ様子。


 転んだボルスに手を差し伸べることも一瞬考えたが、対応が面倒くさいためこのまま帰るとするか。

 ボルスさんには感謝の気持ちを持ちつつ、俺は修練部屋を後にし『ゴラッシュ』への帰路についたのだった。



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