第230話 難航
フクロウの魔物の死体のせいで移動速度が著しく落ち、オンガニールの下まで運びこむのに大分かかってしまった。
西エリア探索二日目は洞穴の拠点に着いたところで日が落ちてしまい、夜間の移動を控えたため朝まで拠点にて休憩。
翌日から引き続き死体運びを行い、約半日かけてオンガニールの場所まで運び込むことができた。
【粘糸操作】によってグルグル巻きにしたこともあり、死体そのままを運ぶよりかは大分楽だったが……。
死体から粘糸を外す作業に手間取ったせいもあり、洞穴の拠点に戻ったところで西エリアの探索三日目を行う日が終了してしまった。
広すぎる森が故に、色々と手間がかかりすぎるのが本当に難点。
植物の種類や生息する魔物の種類も豊富なのはありがたいが、移動がどうしてもネックとなってしまう。
せめてオンガニールがもう少し様々な場所で生えてくれていればいいのだが、これだけ動き回って未だに人型兎のオンガニールしか見つけられていない。
拠点と同じく、南エリアの東西南北に一カ所ずつオンガニールを設置したいところだが、運んだ際の周囲のへの被害も怖いし、四カ所全ての管理を行わなくてはいけないというのも相当に面倒くさい。
時間効率を考えて通常スキルはもう諦め、ロザの大森林の攻略に全てを注ぐというのも頭を過るが……。
このロザの大森林を全て探索するには、新たな通常スキルの確保は必須なんだよな。
とりあえず、今回の探索期間ではもうオンガニールには触れず、残りの期間は洞穴の拠点付近で植物採取に当たるか。
西エリアの探索も一時中断し、俺は無難に植物採取を行うことに決めた。
それから滞在期間が二週間となるギリギリまで植物を採取し続け、今回のロザの大森林の探索は終了。
とにかくスノーが不在による不便さを痛感させられた探索だったが、東エリアに足を踏み入れたし西エリアの探索にも着手できた。
有毒植物も前回以上に大量に採取できたし、色々と後悔する点もあるが及第点の探索だったと思う。
その分課題も多く見つかったが、エデストルに戻ってから二人に相談してロザの大森林の探索については考えていこうと思う。
良い案が思い浮かべば、スノーだけでなくラルフとヘスターにも探索を手伝ってもらうのもアリだし、早いところスキルの実に関しては存在の有無だけでも知りたい。
なければないで別の手段を考えるし、あるのであればスキルの実を中心に動いていくことになるからな。
自分の中で今回の探索についてを振り返っている間に、荷物を綺麗にまとめ終わった。
結局、滞在期間中に大ムカデのオスが戻ってくることはなかったため、俺がいない間に洞穴の拠点が荒らされないことを祈りつつ、ロザの大森林を後にした。
いつもの如く、非常に不衛生なため人目は避けつつ、急いで『ゴラッシュ』へと帰宅した俺はシャワーに直行する。
まだ二人とスノーは戻ってきていないようで、誰もいない中ゆっくりとシャワーを浴びることができた。
シャワーを浴び終えてからは、二人とスノーが戻るまでの間にロザの大森林の情報を紙にまとめつつ、地図の制作に当たっていると……。
どうやらラルフとスノーが帰ってきたようだ。
部屋に入る前から匂いで俺が帰ってきていることに気が付いていたのか、ラルフが扉を開けた瞬間に勢いよく飛び掛かってきたスノー。
【外皮強化】を発動させてから受け止め、嬉しそうに顔を舐めてくるスノーを撫でまわす。
「スノーの様子がどうもおかしいと思ってたら……。クリス、やっぱり戻ってたか!」
「ああ。ラルフとスノーも相変わらず元気そうで良かった」
「それはこっちのセリフだっての! 今回は一人での探索だったし、意外と心配してたんだぜ? まぁクリスのことだから大丈夫だろうとも思ってたけどよ」
「心配かけたならすまないな。まぁ次の探索ではスノーを確実に連れていくから、その心配もしなくて済むはずだ」
「えっ!? やっぱり次からはスノーを連れてくのかよ!! くっそぉ、折角スノーとの息が合った攻略ができてきたところだったのに!」
「ロザの大森林が、思ってた以上に危険な森だったからな。俺一人じゃ探索できないというのが、今回の探索で分かった一番の成果とも言える」
「森大好き人間のクリスがそこまで言うって……どんだけ危険な森なんだよ」
俺が森大好き人間と思われているのは癪だが置いておいて……。
確かに弱っちかった俺でも、ペイシャの森では難なく過ごすことができていたからな。
いくら広いと言えど、ロザの大森林も力をつけた俺なら余裕だと思っていた。
今回はそんな考えが甘すぎると実感させられた探索だったし、危険度でいえばカーライルの森とは比較にならない。
「とりあえず報告はいつも通り、ヘスターが戻ってから話す。二人にお願いしたいこともあるしな」
「珍しいな! 俺達にお願いなんてよ」
「そんな喜ばしいものじゃないぞ」
何故か嬉しそうにしているラルフをひとまず放置し、俺はスノーと戯れながらヘスターが帰宅するのを待ったのだった。
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