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第229話 糸の罠


 昨日は大きな泉で引き返し、コンパスを頼りに拠点へと戻った。

 探索範囲自体はそこまで広範囲を探索できた訳じゃないのに、西エリア全体に広がる濃霧のせいで時間だけかなり取られた。


 拠点へと戻る際も、コンパスを見ながら方向を間違えないように確認しつつ、周囲を警戒しながら進まなくてはいけないせいで牛歩状態だったからな。

 特色があって面白いといえば面白いが……今日は濃霧が晴れてくれていれば非常に助かる。


 ――そんな願いも込め、俺は二日目の西エリア探索へと出たのだが、今日も今日とて西エリア一帯は真っ白な濃霧で覆われていた。

 二日もこれだけの霧に覆われているとなると、やはり西エリアは霧の森と考えるのがいいだろうな。


 昨日見つけた植物の類も霧に擬態したものが多かったし、俺も機能から薄々勘付いてはいた。

 冷静に現実を受け止め、西エリアの探索を行っていこうか。


 昨日は西エリアの東から中央までを探索したため、今回は西エリアの北を探索するつもりだ。

 西エリアではまだ魔物と一度も遭遇していないため、今日の目標は魔物を補足すること。


 これだけの霧の濃い場所を縄張りとする魔物だし、一風変わったスキルを保持している魔物がいる可能性も高い。

 水中対策のスキルを持つ魔物もいる可能性もあるし、魔物は積極的に狙いつつ西エリアの探索を勧めていく。



 霧が濃い中を昨日同様に慎重に進むこと、約二時間。

 【知覚範囲強化】【生命感知】【隠密】【消音歩行】【外皮強化】に加えて、【聴覚強化】も発動させて耳も頼りに探索を進めていたのだが……。

 ようやく霧の森で初めての生物を確認した。


 向こうは随分前から俺の存在を感知していたようで、空を飛行しながら一定の距離を取って尾行していた様子。

 僅かに羽ばたくような羽音が聞こえたお陰で、俺もその存在に気付くことができたがかなりの大きさを誇る飛行生物のようだ。


 すぐに襲い掛かってこないことを考えると好戦的な魔物ではなく、俺との距離感も完璧だったため慎重且つ冷静な性格だと言うことが分かる。

 大きな隙を見せないと一定の距離まで近づいてこないことを考えると、狩るのは少々厄介そうだな。


 どうやっておびき寄せるか、まだ存在に気づいていないフリをしつつじっくりと考える。

 一番手っ取り早いのは大きな隙を見せることだが、それをやるとこっちのリスクも大きいからな。


 となると……実戦で使うのは初めてだが、【粘糸操作】を使って罠を張り巡らせてみるか。

 ここは森で周囲には木がたくさんあるし、霧のお陰で糸の存在に気付くことはほぼない。


 悟られないように【粘糸操作】を発動させ、蜘蛛の巣を参考に木と木の間に糸の罠を仕掛ける。

 後は素知らぬフリをして、俺を追尾してくる飛行生物がかかかるのを待つだけだが――。

 どうやら即座にかかったようだ。


 俺から正確な距離を取っていることを逆手に取り、かかるように罠を仕掛けるのは容易かった。

 【粘糸操作】も予想以上に素早く正確な位置に張ることができたし、これはもっと操作に慣れれば戦闘で十分使えそうだな。


 ――っと、【粘糸操作】の使用感について考えている場合じゃなく、糸の罠に引っ掛けた飛行生物を狩らないといけない。

 すぐに罠の位置まで戻り、糸に絡まりながら必死に羽ばたかせている飛行生物の確認を行う。


 見た目は筋骨隆々のフクロウといった形の魔物。

 サイズは一メートル弱で、怪鳥と比べたら小さい魔物だ。


 しっかりと【粘糸操作】で張った糸に絡まってはいるが、筋肉が異様に発達しているため少しでも手こずると脱出される可能性がある。

 高い位置で引っかかってはいるが、【脚力強化】【身体能力向上】【能力解放】の三つのスキルを発動させればジャンプで届くはず。


 【能力解放】の力の調整だけには気をつけ、俺は引っかかっているフクロウの魔物目掛けてジャンプした。

 羽ばたかせているフクロウの魔物が逃げ出す前に到達でき、そのまま剣を振り下ろして斬り裂く。


 粘糸と共に斬り裂いたため、フクロウの体は俺よりも先に地面に叩きつけられる形で落下。

 粘糸は剣で斬れないと思っての攻撃だったが、スキルをフルに使った一撃は流石に耐えらないか。

 俺もなんとか受け身を取りつつ着地をし、フクロウの魔物の様子を窺ったのだが、剣での一撃と落下による衝撃で絶命していた。


 ほとんど戦わずして勝ったため、一体どんな魔物なのか分からないが……この魔物はオンガニールの宿主にしたいな。

 ただ、オンガニールの場所まで運ぶまでが非常に億劫。


 生きていれば【粘糸操作】で生け捕りにして、南エリアへ戻ってから殺すという選択肢も取れたのだが、逃がさないようにという思いが強く力を入れ過ぎてしまった。

 俺はフクロウの魔物の死体の前で悩みに悩み、結局このフクロウの魔物をオンガニールまで運ぶことに決めた。


 動物に似た魔物からは、役に立つスキルを得られる可能性が高いのは経験上分かっているし、フクロウの魔物は元々のポテンシャルが非常に高かった。

 この何も見えない濃霧の中で、正確に俺との距離を推し量っていたのは何かしらのスキルだろうし、使えるスキルを保持しているはず。


 あまりにも有用すぎると特殊スキルとなり、わざわざ運んでも無駄骨になる可能性も高いが……そこに関してはやってみないと分からないからな。

 フクロウの死体を【粘糸操作】を使ってグルグル巻きにし、運びやすいように加工。

 西エリアの北の探索はまだ全然行えていないが、俺はフクロウの魔物の死体を持って南エリアのオンガニールを目指して歩を進めたのだった。



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