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第223話 非戦闘職


「俺の持っているスキルは【視覚強化】。使うと目が良くなるスキルだ」

「【視覚強化】? 他には何もないのか?」

「ああ。俺は適正職業が【炭鉱夫】だからな。戦闘職じゃないから、スキルもこれだけしか発現しなかったんだわ」


 驚きのあまり固まってしまう。

 適正職業が【炭鉱夫】で、スキルが【視覚強化】のみ。


 俺は似たようなスキルである【聴覚強化】を持っているため、【視覚強化】が有用であることは理解できるが……。

 それでも【視覚強化】だけで、冒険者をやっていけるほど甘くない世界だというのは、俺は身を持って体感している。


 【農民】よりかは能力値の伸びは良さそうに思えるが、それでも非戦闘職だ。

 【炭鉱夫】といっても、能力はたかが知れているだろう。


「ボルスは非戦闘職でその強さなのか? それもスキルが【視覚強化】だけ? 嘘じゃないだろな?」

「こんな意味の分からない嘘なんて吐く訳ないだろ! クリスは散々ダサイだの、無駄に年だけ食ってるだの言ってくれたが、俺がどれだけコツコツと努力を積み上げてきたか……」

「声を掛けてきた理由がダサいって部分に関しては意見は変わらないが、年齢だけしか取り柄がないと言ったことは訂正させてもらう。……あの時の発言はすまなかった。非戦闘職でこの強さは――尊敬に値するよ」

 

 俺は頭を下げてしっかりと詫びた。

 出会った当初の印象が胡散臭いとしか思わなかったし、年上ということをひけらかしてきたから俺も毒を吐いたが、ボルスがこの領域まで達するのには地獄とも思える努力があったはず。


 知らなかったとはいえ、あの言葉は不適切ではなかったと今更ながら思う。

 それは同じ非戦闘職を授かった俺だからこそ分かること。


「……おいおい。改めて謝ってくんなよ! 軽い冗談だっての! それと、同情で尊敬されても困んだよこっちはな!」

「同情じゃなくて心の底から思ってる。言っていなかったが、俺も適正職業が【農民】と非戦闘職だ。スキルには恵まれたからこれだけの実力をつけることができたが、スキルに恵まれていなかったと考えると……」


 思わず身震いしてしまうほど、考えたくもない状況だ。

 【毒無効】がなければペイシャの森で野垂れ死んでいただろうし、なんとか生き長らえたとしてもオークとの戦いで敗れていた。


 仮にペイシャの森に逃げ込まず、そのまま王都に直行していたとしても、俺の能力値はルーキー程度の能力。

 ゴブリン退治をし、一日分の金をなんとか稼いで生き長らえる……そんな生活を死ぬまで送っていたはずだ。


「正直考えるだけで恐ろしい」

「別に俺だってスキルには恵まれたからな! てかよ、クリス。お前も非戦闘職だったのかよ! それに【農民】って……俺なんかよりもよっぽど立場が悪いじゃねぇか! 【炭鉱夫】の冒険者はまだ低ランク帯を探せばいるけど、【農民】の冒険者なんて見たことがないぞ?」

「何度も言うが、俺は本当にスキルに恵まれたんだよ。【農民】だろうが関係ないスキルを授かることができた」

「いや、いくらスキルに恵まれていようが、【農民】じゃどう頑張っても補えないだろ! ……でも、俺は実際に手も足も出なかった訳だしなぁ。一体どんなスキルなんだ? 俺も教えたから教えてくれ」

「俺の授かったスキルは――【毒無効】だ」


 俺がそうボルスに伝えると、目を大きく見開いて口をパクパクとさせながら首を傾げた。

 確かに【毒無効】スキルは、パッと聞いただけじゃ凄いスキルには思えないもんな。

 かく言う俺も、このスキルの凄さに気が付けたのは大分経ってからだった。

 

「【毒無効】が良いスキル……? 全然意味が分からねぇわ!」

「確かに理解するのは難しいだろうな。ただ、本当にとんでもないスキルなんだよ」


 ボルスは顎に手を当て、必死に【毒無効】スキルの活用方法を考えているようだが、全く思い浮かばない様子。

 一から十まで説明してやっても構わないが、時間が無駄に取られるだけのため説明は割愛させてもらう。


「ぜっんぜん分からねぇ! どう使えば戦闘で生きて、そこまで力を見につけられるのか。本気で分からねぇ! 俺を馬鹿にしている訳じゃねぇよな?」

「馬鹿にしている訳じゃない。話が逸れたが……とにかくボルスを凄いと本気で思った。よければ、どう戦っているのか俺に指導してくれないか?」


 話を無理やり元に戻し、俺は頭を下げて指導をお願いした。

 【視覚強化】によって反応速度を速めて対応しているのは分かるが、それだけではあの異様な粘りの説明がつかない。

 経験による何かしらの技術があると思ったし、それは確実に役に立つ戦闘技術だと確信できる。

 

「手合わせで何もできずに完敗した俺がクリスに指導? そりゃあ、どんな罰ゲームだよ!」

「俺が頼み込んでるんだから罰ゲームではないだろ。時間があるときでいいから、指導してほしい」

「……分かった。これから手合わせを後三戦行おうぜ。その手合わせでクリスが全て勝てたら俺が指導するってのはどうだ?」

「それで構わない。俺がこの後の三戦全てに勝てれば、指導してくれるんだな?」

「そういうことだ。ただし、ここからは使えるものは全て使って本気で倒しに行くから覚悟しろよ?」


 ボルスを倒すことができれば指導を受けることができる。実に単純明快だな。

 圧倒的な戦闘能力差を補えるほどの戦闘技術に関しては、是非習いたいと思っているが……。

 手合わせに関しては負ける気は一切しない。

 この後の三戦。何をしてくるか分からないが、サクッと倒させてもらうか。


お読み頂きありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] > 知らなかったとはいえ、あの言葉は不適切ではなかったと今更ながら思う。 > それは同じ非戦闘職を授かった俺だからこそ分かること。 不適切ではなかった=適切だった 「不適切だった」…
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