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第222話 違和感


 まず先に動いたのはボルス。

 お手本のような綺麗な構えから、これまたお手本のような上段斬り。

 

 速さもそこそこだし、悪くない攻撃だが……基本に忠実なほど俺にとってはやりやすさしか感じない。

 楽々とボルスの上段斬りを受けてから、返しの胴を打ち込む。

 一撃でのノックアウトを狙った強打だったのだが、バックステップを踏んだボルスに楽々と躱されてしまった。


 …………この違和感。

 しばらく期間が空いて忘れていたが、正面から対峙したことでボルスに覚えていた違和感をはっきりと思い出した。


 ボルスが放った上段からの一撃は、しっかりと踏み込んだ正にお手本のような上段斬り。

 俺はこの上段斬りを完璧に読み切り、無防備に近い胴を狙った一撃放った。


 ノックアウトを狙って威力を込めたため、少し溜めたというのもあったが決して避けられるタイミングではなかったはず。

 剣で受けるならまだ分かる。でもボルスは楽々とバックステップで回避したのだ。


「良い一撃だったぜ! 次はこっちから行かせてもらう!」


 ボルスはそう叫んだあと、今度は一気に距離を詰めてきた。

 狙いは突きか? ――いや、下段を狙っている。


 細かな動作からボルスの動きを即座に看破し、下段への攻撃に合わせてガードする。

 ここで初めてボルスの剣を受け止めた形になったが、やはり威力自体は相当弱い。


 決して弱めに打ち込んでこの威力ではなく、思い切り打ち込んでこの威力。

 この一撃だけしかまともに受けていないが、ブルーオーガ戦でのことも鑑みて筋力の能力値はシルバーランクぐらいしかないと予想できる。


 これなら負けるはずがないと思うのだが……こっちの攻撃も本当に当たらない。

 俺の攻撃を先読みされているかの如く、ありとあらゆる攻撃を次々と避けられている。


 敏捷性の能力が高い訳でもないことから、ボルスに感じていたこの異様さはスキル――それも特殊スキルが関係している可能性が高い。

 このまま空を斬り合っていても埒が明かないため、戦闘スキルも使って決めにかかるか。

 ボルスに覚えていた違和感がおおよそスキルと判明したし、もう勝負を決めにいってもいい。

 

 俺は【肉体向上】【戦いの舞】【身体能力向上】の三つのスキルを発動させ、一気に攻撃を開始した。

 とにかくボルスでは対応できない速度で打ち込みまくり、回避の手に出てきたら【疾風】【脚力強化】を使って距離を詰めて徹底的に追いまくる。


 本気を出したこの状態なら数十秒も持たないと予想していたのだが――恐ろしいことにボルスは、俺のスキル発動下の状態の攻撃にも対応してきた。

 反撃は一切できず剣で受けるという防戦一方だが、それでも俺の打ち込み全て対応している。


 フェイントに一切ひっかからないというのが非常に厄介で、大雑把な性格とは裏腹に冷静な対応を見せてきた。

 結局、剣で受けたといえども蓄積ダメージによって動きが鈍り、肉体強化系のスキルを発動してから五分後には有効打三発を打ち込むことができ、なんとか俺の勝利で手合わせは終わったが……。

 俺が想像していた何倍もボルスには粘られたし、プラチナランクも納得の実力を持っていた。


「ぷはーっ……。ク、クリスッ! お前強すぎだろ! 手合わせっていうか、俺が必死に攻撃から耐える競技に変わってたわ!」

「いや、木剣とはいえかなり本気で打ち込んだぞ。まさかここまで耐えられるとは思わなかった。改めて、ボルスが実力者ってのを認めざるおえないな」

「なんじゃその超がつくほどの上から目線は! ……完敗してるから言い返せないのが何よりもムカツクな!」

「実力からして俺が圧倒的に上なんだよ。そんな俺相手に食らいついてきているんだ。心の底から賞賛している」

「この野郎ぉー……。嫌味じゃないって分かるのが一番ムカツクぜ! 休んだらもう一度手合わせに付き合え! 今度こそ確実に勝ってやる!」


 ボルスは顔を真っ赤にさせて怒っているが、俺の言ったことは全て事実だ。

 能力も俺の方が上で、スキル量と質に関しても俺の方が上。

 対人での技量面でいっても俺が上だと断言できる。


 ただ、その差を経験と僅かなスキルで打開しているのがボルス。

 この実力差であれだけ粘られたら、試合に勝って勝負に負けたといっても過言ではにない。


「何度でも再戦は受け付けるが仮に俺が全勝したら、ボルスのスキルについて教えてくれ。本気でどんなスキルを使っているのか気になる」


 ラルフも最初は俺に話すのを渋っていたように、この世界では自分のスキルに関しては語らないのが当たり前。

 手の内を晒すことになるわけだし、物騒なこの世界では手の内を晒すと生死にも直結する。

 

 俺は【毒無効】しか持っていなかったから、晒す手も糞もなくペラペラと話していたが、今のスキル量だと追われている身というのもあるが……。

 関係値の低い他人に話す気にはなれない。


 そんな重要なことを教えてくれと頼んだのは、どうしてもボルスのスキルが気になってしまったから。

 この提案は断られても仕方ないと思っての発言だったが、返ってきた言葉は意外なものだった。


「ん? スキルぐらいなら別に今教えてやるよ。というか俺、クリス達に教えてなかったか?」

「多分教えられていなかったと思うけど。……そんな軽々と教えていいのか?」

「一時的にとはいえ、一緒にパーティを組んだ訳だしな。それに大したスキルじゃねぇし教えても教えなくても変わらん」


 大したスキルではない?

 ボルスの発言に引っかかったが、俺が思考を巡らせる前にボルスは自分のスキルについてを語り出した。


お読み頂きありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
こんな所で「おえない」を見るとは…誤字脱字誤用少ないので意外
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