第215話 聴取
「知っていることだけしか話せないわ。それと、全て話したら生きて解放してくれるのよね?」
「ああ、知っていることだけでいい。情報次第では生きて解放することも一考する。まずは――クラウスが今何をしているのか教えろ」
「初っ端からで申し訳ないけど、クラウスが今何をしているかは知らないわ。……あんたの手紙のせいで関係がこじれたから、私には基本的に情報が渡らないようになっているのよ。それに、つい昨日までダンジョンに潜っていたから本当に何も知らない」
俺の手紙を思い出したのか、怯えた様子を見せつつも強い怒りの籠った目で俺を睨みつけてきた。
確かに、ミエルとクラウスの関係を拗らせたのは俺だし、ミエルからクラウスの現在の情報を聞き出そうとしたのは間違いだったな。
昨日までダンジョンに潜っていたというのも、ラルフの情報と合わせて考えても嘘ではないと思う。
どうやら俺に対しての強い怒りを持ち合わせつつも、生きるために情報を渡すつもりはあるらしい。
「それはすまなかったな。本当に関係がこじれるとは思わなかった」
「嘘よっ! あの手紙を読んだ瞬間から、何一つとして聞く気を持たなくなったのよ!?」
「俺とクラウスの仲が悪いのは事実だが、本当に手紙にはミエルを陥れることは書いていない。ちょっとした世間話を書いただけだ」
「世間話であそこまでキレるって、どれだけ仲が悪いのよ! あんたら兄弟のせいで――本当にひどい目にあったわ。糞クラウスから逃げれたと思ったら、今度は糞兄貴の方に殺されかけてるし……関わらなければ良かった」
今にも涙が零れそうなほど目にいっぱいの涙を溜め、しょぼくれ始めたミエル。
何故か俺のせいにされているが、俺をつけてきたのはミエルの方だからな。
先に動いたのだけは俺からだが、攻撃を仕掛けてきたのもミエルだし自業自得としか思えない。
レアルザッドでだって、ミエルから先に手を出してきた訳だしな。
「被害者面してるけど、前回も今回も先に手を出してきたのはお前の方だ。俺がクラウスの兄と言わなければ、あの時殺していただろ?」
「……うぅ。そ、それは――」
「殺されかけたところを手紙の運搬役だけで済ませてやったんだ。俺に恨みをぶつけてくるのはお門違いってもんだな」
「で、でも、あんたの手紙のせいで――!」
「そこまでは知らないし関係ない。俺から言わせてもらえば、手紙一枚ごときで一方的にお前との縁を切ったクラウスが異常だと思うが。違うか?」
その言葉で完全に黙り込んだミエル。
俺の手紙で全てが狂うまで、これまで自分の思い通りに全ていっていたからこそ、俺への恨みを募らせたみたいだが……逆恨みもいいところだ。
やるならやり返されると思わなくてはいけないし、やり返されたくないなら力をつけるしかない。
上手いことしてやられ、実力でもこうして負けた今、ミエルには俺に恨みをぶつける権限はない。
……と、話が脱線してしまったが、さっさと情報を聞き出さないとな。
ミエルと私的な話をしている時間なんてない。
「理解したようなら話を戻す。お前が今パーティを組んでる王女とクラウスの仲はいいのか?」
「…………よくないわよ。もし仲が良かったら、私はパーティにいられない」
「なるほど。王女とクラウスの仲は悪いんだな」
「ええ、決して良くはないわね。クラウスが王女をどう思っているかは分からないけど、馬鹿王女も馬鹿王女の糞護衛もクラウスのことは良く思っていないわ」
こいつ、王女とその護衛のことも嫌いなのか。
周りが敵だらけなのか、それともミエルが全員の敵なのか。
……俺への態度を見る限り、後者としか思えない。
「それだけ聞ければひとまずは十分だな。エデストルはしばらくの間は安全ということが分かった」
「それじゃ、私は解放してくれるんでしょうね?」
「いや、情報はまだまだ頂く。誠意次第で解放することも考える」
「いいかげん拘束を解いてほしいんだけど。頭とか鼻が痒くて仕方ないの」
「それくらい我慢しろ。とりあえず今から聞く情報はクラウスの能力について。それからクラウスの協力者及びパーティメンバーの情報。お前が知っているクラウスについての情報を洗いざらい聞かせてもらう」
こうして、俺は拘束したミエルからクラウスについての情報を洗いざらい聞き出した。
思っていたよりも情報が曖昧な部分が多かったが、流石に同じ学園に通い一時は親しかったこともあり、俺の知らない情報を得ることができた。
特に協力者とパーティメンバーについての情報は大きく、俺が思っている以上に【剣神】の影響力は絶大で、クラウスは自身の力だけでなくその周囲を見ても想像を絶する力を保持していることが分かった。
やはりクラウスを正面から殺すには、スキルの実を見つけて力を得ることが必須。
改めて、ロザの大森林の探索及び調査に力を入れなくてはいけなそうだな。
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