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第204話 選択肢


 緊急依頼であるデッドリッチーを討伐した日から、約一週間が経過した。

 デッドリッチーの依頼が予想以上の報酬に加えて、残骸から回収した赤い宝玉をヘスターが白金貨一枚で売ってきてくれた。


 そんなこともあり、ロザの大森林から帰還して二週間前後しか経っていないのだが、また依頼をこなさずに時間を過ごすことができる金額を貯めることができた。

 プラチナに上がってからは依頼の単価も上がったし、かなり効率良く金を稼ぐことができるようになったため、これからは二週間の依頼をこなして二週間の自由時間を過ごすというルーティンで過ごせるかもしれない。


 ということで、今日からまた三人別行動となり、各々の強化に当たっていく訳だが……。

 俺はそこから更に選択肢が多いんだよな。


 ロザの大森林へ向かい、植物採取にオンガニールの確認。

 ヘンジャクから貰った情報を頼りに、新たにロザの大森林の捜索に向かいたいという思いもある。


 ただ、ボルスとの特訓もそろそろやりたいし、ヘスターの師匠であるゴーレムの爺さんから魔法も教わりたい。

 前回のロザの大森林の情報もまだ纏めきれていないし、地図の制作もできていないんだよな。

 ……ロザの大森林に行きたい欲は強いが、ここは一度我慢してエデストルに残って、やらなくてはいけないことをやる二週間にするのが正解か。

 

 正直かなり悩んだところだが、今回の二週間はエデストルに残ることに決めた。

 まずは魔法の習得。次にボルスとの手合わせをしつつ、できれば地図の制作も行いたい。

 おおよその予定を決めたところで、俺はヘスターに頼んでゴーレムの爺さんを紹介してもらうことにした。



 二週間の自由時間を定めた翌日。

 俺はヘスターと共に、メインストリートの外れにあるかなり大きな店『マジックケイヴ』へとやってきていた。


「ここがフィリップさんのお店です! ちょっと事情を説明してきますので、クリスさんは少しだけ外で待っていてください」

「分かった。よろしく頼む」


 店の中に一人で入っていくヘスターを見送り、俺は一人店の外で待つ。

 せっかくなら店の中の商品を見ながら待っていたかったとこだが、無理を言って紹介してもらっているため我儘は言わずに大人しく待つ。


 ちなみにだが、スノーはラルフについていっており、初めてのダンジョン攻略を行っている。

 スノーがいれば大幅な戦力アップになるし、単純に索敵も相当に捗る。

 ラルフ次第にもなると思うが、もしかしたらこれから俺とラルフでスノーの取り合いが生まれるかもしれない。


 俺がスノーについてを考えていると、ゴーレムのじいさんと話をつけ終えたのか、ヘスターが店の中から戻ってきた。

 戻ってきたヘスターの手に、何やら紙のようなものが持たれている。


「交渉の方はどうだった?」

「もちろん大丈夫でした。とりあえずこの紙に情報を記載してほしいとのことで、クリスさん書いてもらってもよろしいですか?」

「ああ、もちろん書かせてもらう」


 一度店の中へと入り、俺は入口付近に置かれたテーブルで記入を始める。

 渡された紙は簡単な俺のプロフィールを記載するもののようで、俺はスラスラと書き始めたのだが……。


 生年月日、名前、それから適性職業の次の欄からは、魔法に関するものばかりで一切分からない。

 得意魔法、扱える魔法の属性、魔力操作を行っていられる時間、等々……。

 魔法が扱えないからわざわざ尋ねてきた訳だし、俺は全ての欄に“なし”とだけ記入して、プロフィールの記入を終えた。


「記入は終えたぞ。どうすればいい?」

「それじゃ渡してきますので、ここでお待ちしてもらっていいですか?」

「……俺も行っちゃ駄目なのか?」

「フィリップさんはマジックアイテムの製作中でして、少し機嫌が悪いんですよ。クリスさんだと、もしかしたら軽い口論になりかねませんので、ここで待っていて頂けるとありがたいです」

「そういうことなら待ってる。よろしく頼む」


 記載した紙を渡し、再びヘスターが戻ってくるのを待つことにした。

 このヘスターを橋渡し役みたいにするのは面倒くさいし、直接やり取りさせてほしいという気持ちが強いが……。


 俺はこんな性格だし、機嫌が悪い相手とは絶望的に相性が良くないのは分かっている。

 頼み込んだのはこっちだし、ヘスターが上手く仲介してくれるまで大人しくしておくか。


 自分をそう納得させ、気を取り直して店の商品を見ていくことに決めた。

 魔法屋。……生まれて初めて来たけど、雰囲気的に怪しさ満点の店だ。


 店内は意外と人が多く、普通の従業員らしき人と客もかなりいる。

 俺はそんな客達に紛れながら、店内の物色を開始した。


 まず目にとまったのは、ヘスターも以前口にしていた魔法玉。

 マグス一族が発明したと言っていたアイテムで、魔法が込められた水晶のようだ。


 店には色々な魔法玉が売られていて、俺でも馴染みのある【ファイアーボール】や【アースボール】等の初級魔法から、【フレイムボール】や【ハイドロボール】等の中級魔法までが置かれている。

 上級魔法は店には置かれていなかったのだが、魔法玉の付近に置かれた紙には上級魔法も特注で製作可能と書かれている。


 需要が少ないから店頭には置かれてはいないけど、作ろうと思えば作れるといった感じなのか。

 上級魔法の魔法玉には少し興味があるが、ひとまずは置いておいて違うところも見てみよう。


 魔法玉の場所を移動して、次にやってきたのは魔導書が置かれたエリア。

 『七福屋』とは比べ物にならない量の魔導書が置かれており、どれも俺でも手が出ない値段で売られている。


 一番安くて白金貨十枚。

 とてつもない装飾が施されているものだと、値札すらついていないものまである。


 『七福屋』で買ったあの魔導書は白金貨二枚だったし、やはりかなり値段は抑えられていたようだ。

 白金貨十枚だったら絶対に買おうと思えていなかったし、白金貨二枚で売ってくれた『七福屋』のおじいさんには改めて感謝だな。


 俺が食いつくように、並べられた魔導書の表紙と値段を眺めていると――。

 店の奥からヘスターが戻ってきたようだ。


「商品を見ていたんですね。いいものありましたか?」

「いや、俺には難しいものばかりだな。……それよりもどうだった?」

「プロフィールを見て少し難しい顔をしていましたけど、多分大丈夫だと思います。つれてきてくれと言われたので、奥の部屋まで一緒に行きましょう」

「それなら良かった。案内よろしく頼む」


 どうやら許可を貰えたようなので俺はヘスターについていき、久しぶりのゴーレムの爺さんとの対面を迎える。

 初対面の時の喫茶店。

 それから遺跡で軽く顔を見ただけだし、あまり爺さんについて覚えていないんだが……。


 変な爺さんということだけは覚えている。

 まぁ教わる立場だし、一応怒らせないようには気をつけて挨拶するとしようか。


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