第203話 決着の一撃
「【エアロブラッド】」
ヘスターの詠唱が聞こえ、デッドリッチーの地属性魔法を飲み込みながら進む、まるで嵐のような魔法が放たれた。
恐らく風と水の複合魔法で、デッドリッチーの魔法をも巻き込んでいることから……地属性も含んで土砂の暴風雨のようになってデッドリッチーへと襲い掛かった。
相手の魔法をも飲み込み、まるで反転魔法のようなヘスターの魔法。
デッドリッチーは偽デッドリッチーで紛らわそうと考えていたと思うのだが、そんな小細工すらも消し飛ばすほどの魔法で仕留めにかかった。
なんとかデッドリッチーを守ろうと、偽デッドリッチー達が魔法を唱えながら壁となろうとしていたが……。
六体のスケルトンメイジではどうにかできる訳もなく、土属性も含んだ【エアロフラッド】に巻き込まれながらあっという間に消え去った。
残すは既にボロボロの状態のデッドリッチーのみとなり、迫り来る【エアロフラッド】に俺はどういった対処を取るのか気になったが、無駄な足掻きは見苦しいと思ったのか――デッドリッチーは両手を広げたまま魔法に飲まれていった。
戦闘前は曇天模様だったが、戦闘が終わると同時に日が差し【ファイアーボール】を防いだラルフと、勝負を決めた複合魔法を放ったヘスターを日が照らしている。
【フレアブラスト】に【エアロフラッド】。
二種類の複合魔法を連続で放ったことで、流石のヘスターも疲労を感じているらしく、膝に手をついている姿が見えた。
デッドリッチーの地属性魔法で削られ、その魔法を押し返す威力の魔法で更に削られた地面が今回の戦いの激しさを物語っており、俺はそのぬかるみ削られた戦闘跡を歩きながら二人に近づいていく。
「二人共おつかれ。とんでもない魔法の打ち合いだったな」
「……はい。流石に命の危機を感じました。――それと我儘を言って申し訳ありませんでした」
疲労した様子を見せつつも、俺に深々と頭を下げてきたヘスター。
確かに珍しく自分の意見を通してきたが、結果的に一発も攻撃を受けることなく倒し切った訳だしな。
……その一発が致命傷になっていた可能性もある訳だけど。
「別に謝ることじゃない。一発でも攻撃を受ければ、俺がサポートに入るって約束をしていた訳だしな。デッドリッチーが不審な行動を取ったから、俺が独断で助太刀に入ろうとしただけでヘスターは何も悪くない」
「ですが、正直私も危ないとは感じていましたので。そこを無理やり我儘を通してしまいました」
「ヘスターは倒せる自信はあったんだろ?」
「はい。それはもちろんです」
「ならいい。魔法を知らない俺が見ても最後の魔法は完璧だった。……得られるものはあったのか?」
「ありました! 魔物であり、敵でしたが――デッドリッチーの魔法に関して見習う点が多かったです。正面から撃ち合えて良かったです」
本人は気づいていないだろうが、戦闘中も自然と笑っていたもんな。
高いレベルの魔法を扱う魔物なんていなかったし、ヘスター的にも大分良い経験になったはずだ。
「ラルフもよく守ってくれたな。【ファイアーボール】六連発からのデッドリッチーの魔法は、正直見ていてやられたかと思った」
「俺がクリスを止めたけど、正直ヒヤヒヤだったわ! 【ファイアーボール】はまぁ楽々と止められたけど、視界の奥にとんでもない魔法が迫ってきているのが見えたからな!」
「ヘスターの魔法があの魔法を押し返した訳だが……。ラルフは、あの地属性魔法を受け止めることができたのか?」
「いやぁ……無傷は無理だろうが、ヘスターを守るくらいはできたはずだぜ?」
そう言って、ニカッとかっこよく笑ったラルフ。
なんというか性格的にも、ラルフはタンクが合っているのかもしれない。
もちろん才能も【聖騎士】という適職関係なしに飛びぬけている訳だが、性格が自分よりも他人のための方が力が出ている気がする。
まぁダンジョンで一人で潜っている時のことは知らないから、正確なことは分からないけどな。
「なんというか恰好良い奴だな。俺もいつか言ってみたい台詞だ」
「へへへっ、そうかぁ? 別にそんなことはねぇけどな!」
照れた様子を見せつつも、嬉しそうにニヤニヤしているのはマイナスだな。
せっかくいい台詞でかっこよかったのに台無しだ。
「それよりもクリスの方はどうだったんだ? 大分早くにこっちの様子を見に来てたけど」
「割と全力で戦ったというのもあったが、楽勝すぎたな。スノーも上手く戦ってくれたし、一切の苦戦を強いられることもなかった」
スノーも尻尾を振りながら、俺の足元に体を擦りつけている。
最初は違和感があったようだが、皮の防具もこの一週間で大分慣れたようだし、今日も問題なく動けていた。
「デッドリッチーに気を取られていたので、クリスさんとスノーのことは見ていられませんでしたが……。集中できるように大量の敵を相手にして頂き、ありがとうございました!」
「礼ならスノーに言ってあげてくれ。俺は途中からヘスター対デッドリッチーの戦いを楽しんでいただけだしな。その間もスノーはスケルトンの処理を行ってくれていた」
「そうだったんですか! スノーありがとね!」
ヘスターにワシワシと勢い良く撫でられ、スノーは嬉しそうに喉を鳴らした。
――よし、会話はこの辺りにしてエデストルへ戻ろうか。
デッドリッチーを討伐した証を回収したいところだが、この激しい戦闘で残っているかどうか……。
それから三人で手分けをして必死に探し、デッドリッチーの右目の赤い宝玉だけが残されていたため、それを討伐の証として回収。
俺達は西の荒野を離れて、エデストルへと帰還したのだった。





