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第200話 デッドリッチー


 スノーと俺が先導して進むこと約二十分。

 ――恐らくだが、この近辺から異質な音が聞こえたはずだ。


「音が聞こえたのはこの付近なのか?」

「ああ、間違いなくこの付近なんだが……」


 これだけ近づいても、未だにスキルでも何も感知ができない。

 ……魔力反応も生命反応もない。


 キョロキョロしながら周囲を窺い、魔物らしき影を見つけようとした瞬間――。

 背後からヘスターの悲鳴のような声が上がった。

 即座に振り返ってみると、地中から白い棒のような腕が伸びており、ヘスターの足を掴んでいる。


「ヘスター、一度止まれ! ラルフがヘスターの足を掴んでいる腕を斬り飛ばせ!」


 ヘスターが足元に向かって魔法を放とうとしているのを止め、ラルフに腕を斬り飛ばすように指示を出す。

 隣に立っていたラルフは俺の指示を聞いてすぐに玉鋼の剣を引き抜くと、ヘスターの足を掴んでいた腕だけを綺麗に斬り飛ばした。


 ガッチリと足を掴んだままの手をへスターは気味悪そうに振り払うと、白い骨だけの手は放物線を描いて綺麗に飛んで行った。

 ……とりあえずは大丈夫そうか。


 不意を突かれて焦ったが、生命反応がないということはアンデッド。

 魔力反応も感じなかったことから、ゴブリン、コボルトと名を連ねる最弱魔物の一匹――スケルトンの可能性が高い。


「クリス! なんだ今の魔物は!」

「多分、スケルトンだと思う。弱すぎた上にアンデッドだったせいで不意を突かれただけで、そこまで怯えることはない魔物だ」

「……スケルトンですか。私、本気で焦りましたよ」

「この一帯はスケルトンが出るってことか? それともデッドリッチーの影響なのか?」

「正直、分からん。ただ、デッドリッチーの気配は感じられな――」


 そこまで言いかけたところで、前方から突如として強い魔力反応を感じ取った。

 俺が大きな物差しでしか量れないというのもあるが、ヘスターと同程度の魔力量の魔物だ。


「前言撤回だ。前方から相当量の魔力を持った魔物を感じ取った。……この強い反応はデッドリッチーかもしれない。足元にも気を付けつつ、近づくぞ」

「なーんか肌寒くなってきたし、ちょっと怖いな」

「ラルフ。余計なことを考えずに、戦闘の準備をしましょう」


 魔力の反応を頼りに、デッドリッチーがいると思われる場所まで向かうと、前方に絢爛な赤いローブを身に纏った魔物が見えた。

 遠くから見ると身分の高い人間にしか見えないのだが、あれは確実に魔物。


 肌は腐り切っていて、色はドス黒い。

 全体的に皮膚が溶けているような感じがし、目も左目しかついていない。

 右目には綺麗な宝玉のようなものが埋め込まれており、その宝玉のようなものからは強い魔力反応も感じられる。


 そんなボロボロな肉体とは対照的に、身に纏っているローブは見た目同様質の高さを窺い知れるし、手に持っている二メートル近い杖も質が高いということだけは俺でも分かった。

 装備にこの魔力量。強さは相当なものだろうな。


「なあよぉ……。危険な匂いがぷんぷんしないか?」

「ラルフが感じた通り、魔物ですが相当な魔法使いですよ。討伐推奨ランクミスリルは伊達じゃありません」

「ヘスターがメインでも大丈夫そうか? 駄目そうならば、俺が代わってもいいけど」

「クリスさん、何を言っているんですか! 私は絶対に負けないですよ。安心して私のサポートに回ってください」


 ヘスターはクールに笑うと、俺に向かってそう言い放った。

 少し心配していた部分があるが、この分なら何の心配もいらなそうだな。


 ヘスターの言動から成長が覗い知れ、少し嬉しい気持ちになりつつ、俺は自分の仕事へと移る。

 情報通り、デッドリッチーの周囲には数々の魔物の反応が現れ始め、一気に取り囲まれるような形となった。


「ワイトにスケルトン。スケルトンウォリアーは数は少ないが、思った以上にスケルトンメイジの数は多そうだ」

「変わらず、俺とスノーが雑魚狩りか?」

「……いや。ラルフはヘスターのサポートに回ってくれ。魔法を使う魔物が予想以上に多いから、即座に殲滅するためにも俺が雑魚狩りに回る」

「ダンジョンでは、こんな状況何度も乗り越えてきたし……。別に雑魚狩りが俺でも構わないけどな! まぁクリスの指示には従うけどよ!」


 確かにダンジョンで一対多の戦闘を行ってきたラルフに任せてもいいとは思うけど、俺はより安全な選択を取っていきたい。

 ヘスターも壁となるラルフがいた方が、安全に戦うことができるだろうしな。


「ラルフはヘスターを守ってやってくれ。俺も雑魚敵をサクッと倒して、そっちのサポートに回る」

「任せろ! 全て俺が防ぐ!」

「私もサクッと倒しちゃいますから、クリスさんも焦らず倒してくれて構いませんよ」

「二人共、随分と頼もしくなったな」


 こう言ってくれていることだし、俺のことだけに集中して戦闘に臨むか。

 スノーには、ロザの大森林で散々行ったハンドサインで指示を飛ばし、回り込むように襲わせる。


 その間に俺は索敵スキルを解除し、【肉体向上】【戦いの舞】【鼓舞】【身体能力向上】の四つのスキルを発動してから、更に追加で【威圧】のスキルを発動させた。

 実戦でちょくちょく使っていた【威圧】。


 ほどほどに強い相手には効果をなさないのだが、弱い相手には超がつくほどの強力な効果を発揮する。

 自分に向けることはできないため、しっかりとした効果は分からないのだが、ラルフ曰く殺意を向けられた感じと似たような感覚らしい。


 【威圧】を受けた力の弱い魔物は一瞬体を硬直させたり、その場から逃げる魔物もいる。

 アンデッド相手には効果は薄いけども、それでもスケルトンは俺の【威圧】を受けて動きが固まった。


 その隙を見て、囲むように近づいていくる大量の魔物に俺は突っ込み――風穴を開けるように斬り裂いてスケルトンの群れの中に潜り込むと、内側から一気に斬り裂きまくった。


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