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第199話 エデストルでの緊急依頼


 色々行った休養日から一週間が経過した。

 俺達は順調にプラチナランクの依頼をこなせており、今までよりも格段に依頼をこなす速度が上がっている。


 そんなこともあって、今回はオックスター以来の緊急依頼を受けることに決めた。

 エデストルでは緊急依頼が珍しくなく、特にダンジョンからの救出の依頼は頻繁に出されているのを見る。


 救出ということもあって値段もそこそこ良く、ついでにダンジョンで宝箱の捜索もできるということもあり、ダンジョンの救出に特化したパーティなんかもエデストルにはいる。

 俺もできることならば、この緊急依頼を受けたいところなんだが……。


 まず第一に、ミエルがいる時点でダンジョンに近づくのは避けたい。

 次に救出の緊急依頼を受けられるのは、エデストルダンジョン四十階層まで到達したことのあるパーティか、ミスリルランク以上の冒険者のみとなっている。


 どんなに低い階層を挑んでいる冒険者からの救出依頼だったとしても、この前提条件をクリアしていなければ依頼を受けることができないのだ。

 ミエルの件がなくとも、俺達はまだ救出の緊急依頼を受けることはできない。


 そのため、今回はオックスターで受けたような一般的な緊急依頼を選ばざるを得なかった。

 俺達が受けた緊急依頼の内容は、エデストル南の荒野に現れたデッドリッチーの討伐。


 南はオックスターから俺達がやってきた方角で、エデストル近辺では安全とされている方角。

 俺達がやってきたときも、特に強い魔物が現れたりもしなかったし、大量の魔物に襲われる――なんてこともなかった。


 比較的安全ということから南側はとにかく通行量が多く、冒険者ではない一般人も多く利用するため、突如として現れたデッドリッチーは緊急依頼となったようだ。


 討伐推奨ランクも決して低くはなく、ミスリル以上とも噂されている。

 デッドリッチーの討伐依頼も普通ならば受けられない依頼なのだが、緊急依頼ということもあってプラチナランクの俺達でも受けることができるという訳だ。


 緊急依頼でも、討伐と採取ならば基本上限はなし。

 救出依頼に限っては通常依頼以上に、依頼を受けることのできる人に限りがあるという感じだな。



「デッドリッチーの討伐。ちょっと楽しみですね」

「確か、魔法使いの冒険者の成れの果てがデッドリッチーなんだっけか? 同じ魔法使いとして、ヘスターとしては負けられない訳か!」

「別にそんな風には思っていないけど……。どんな魔法を使うのかは単純に気になるね」

「楽しみにするのはいいが、決して油断だけはするなよ? 一応、格上の魔物であることには変わりないからな」

「はい、分かっています。絶対に油断なんかしません」


 ヘスターに限って油断することはないだろうが、魔法のこととなると若干気が緩むからな。

 デッドリッチーがもし仮に、ヘスターが見たことも聞いたこともない魔法を使ってきた際でも、目を奪われることのないように釘だけは刺しておく。


「それにしてもデッドリッチーか……。魔法を使ってくるってこと以外は何も分からないな! ヘスターはなんか知ってるか?」

「軽くなら知ってますよ。高火力の魔法に加え、ワイトやスケルトンウォリアーといった魔物を付き従えている場合もあるらしいです」

「更に情報を付け加えるなら、手下を付き従えている時は強化魔法を主に使ってくるみたいだな。本当に厄介な魔物だから、手下がいた場合はラルフとスノーで蹴散らしてくれ」


 俺が集めた情報によれば、デッドリッチーはオークキングと似たような感じ。

 生物とアンデッド。魔法と近接攻撃――と、違いは明確にあるものの、気を付けなければいけない点は似ている。


 付き従えている可能性のあるアンデッドの下位種には気を付け、デッドリッチーの討伐を即座に済ますのが鉄則。

 単純な魔法の対決なら分があると思っているヘスターにデッドリッチーを任せ、俺はヘスターのサポート。

 ラルフとスノーには、周りの雑魚敵の討伐に回ってもらう予定ではある。


 デッドリッチーの情報の精査と、三人とスノーの動きと作戦についてを話しながら、俺達は南の荒野へと辿り着いた。

 オックスターのどくどくドッグのように、アンデッド種は夜限定で姿を現す魔物も多いのだが、デッドリッチーに関しては昼夜関係なく現れる。


 そのせいで被害も大きいのだが、戦う側としてみれば明るい時に戦えるのは大分ありがたい。

 俺の場合はスキルのお陰で暗くともなんとか戦えるけど、それでも近距離での戦いとなると明確に反応が遅れるからな。


「ここがデッドリッチーの出没場所ですか……。魔物が一匹たりとも見当たりませんね」

「エデストルに来た際にチラッと見た時もこんな感じだったもんなぁ! 本当にこんなとこにいるのか?」

「俺とスノーで少し索敵してみる。二人とも少し静かにしていてくれ」

「よろしくお願いします」

「了解。黙っとくわ!」


 二人の言う通り、見渡す限りまっさらな大地が見えるだけで、魔物の気配なんて少しも感じない。

 通常の索敵に使っているスキルでは何の反応もないため、ここからは少しスキルの量も増やして索敵を行っていく。


「スノーもいつも以上に気合いを入れて索敵してくれ」

「アウッ!」


 スノーにも注意を促し、俺は【知覚強化】【知覚範囲強化】に加えて、【生命感知】【魔力感知】【聴覚強化】も発動させた。

 ちなみに、索敵系のスキルだと思っていた【深紅の瞳】は、俺の瞳が真っ赤に染まるだけでいまいち効果の方が分からないまま。


 俺の見えている視界までも赤く染まってしまうことから、ちょっと使いどころの見いだせないスキルとなっている。

 体力の消費も激しく、【要塞】と同等レベルの体力の消耗があるため、詳しいスキルの効果が分かるまでは封印する予定だ。


 ……と、余計なことを考えていないで索敵に集中しなければな。

 追加で三つのスキルを発動させたが、どのスキルにも反応はないままだ。


 二人にも静かにしてもらっているため、遠く離れた場所から風によって小石が転がる音だけが聞こえていたのだが……僅かに北西方向から何やら奇妙な音が聞こえた。

 距離はかなり離れており、【知覚範囲強化】に【聴覚強化】を使用していなければ絶対に聞こえない音だ。


 俺は即座にスノーを見ると、どうやらスノーも音を感知していたようで俺を見上げている。

 俺達の息遣いと、風と小石が転がる音だけが聞こえる中、僅かに混じった異質な音。

 この音がデッドリッチーのものなのかは分からないが、見に行ってみる価値はあるな。


「北西方向から少し異質な音が聞こえた」

「それ本当かよ!? 俺は何にも聞こえなかったぞ!」

「ここで嘘なんか吐くわけないだろ。恐らく地中から聞こえたはずだ」

「地中……ですか? 地面に潜っているということでしょうか?」

「それは実際に見てみないと分からない。とりあえず音の聞こえた方向に向かう。敵が近くにいると思って準備だけはしておいてくれ」


 ラルフとヘスターに注意喚起をしてから、俺達は音の聞こえた北西方向に足を進めていった。


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