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第198話 スノーの防具


 持ってきた全ての有毒植物の識別が終わり、流石に少し疲れ気味の婆さんシスターに礼を言ってから俺は教会を後にした。

 シスターが手際良く能力判別を行ってくれたお陰で、外はまだギリギリ日が落ち切っていない。


 この分ならば、ケヴィンの武器屋にギリギリ行けるはずだ。

 俺はすぐにメインストリートから離れた裏道へと歩き、ケヴィンの武器屋へと向かった。


 そういえばだが、五種の新種の植物の内一種だけが能力の変化が確認できた。

 一番初めに識別した植物が、耐久力10の上昇があったのだが……。


 次の識別を行った時には、その10の上昇が綺麗さっぱりなかったことになっていたため、ヴェノムパイソンの毒と同様の一時的な上昇なのだと思う。

 とんでもない植物を見つけたと思ったが、かなりのぬか喜びをしてしまった。


 ただ使えない効能ではないと思うし、一応頭に入れておいてもいいかもしれない。

 微妙なのが耐久力のみしか上昇がないところと、能力の上昇時間は約五分前後。

 

 かなり局所的だし、使う場面は相当限られているだろうけどな。

 筋力の上昇するヴェノムパイソンの毒ポーションですら、カルロとの戦いでしか使っていない。


 こっちの場合は、もったいなさが先行して使えていないだけだけども……。

 新種の植物の効能について色々と考えていると、あっという間にケヴィンの武器屋へと辿り着いた。


 看板も何もないため、営業しているのかどうかが分からないが、明かりはついているしとりあえず入ってみるか。

 扉を押し開け、ボルスと共に来た以来のケヴィンの武器屋に入った。


「ボルスの知り合いのクリスだ。まだ営業中か?」


 店内は見える範囲には誰も見えなかったため、俺は入るなり声を掛けて呼びかけた。

 すると、奥の鍛冶場の方から物音が聞こえ、ゆっくりとこちらへ近づく足音が聞こえる。


「久しぶりだな。営業中といえば営業中だぞ」


 奥から出てきたのはケヴィンだった。

 何やら作業をしていたのか、黒ずんだ汚い作業服に身を包んでいて相当疲れている様子。


「随分と曖昧な答えだな。営業中ということなら、仕事の話をしたいんだがいいか?」

「ああ、構わん。ちなみにだが、お前のペット――スノーの防具はできているぞ」

「丁度良い。今日はその話をしに来たんだ。早速見せてもらってもいいか?」

「もちろんだ。持ってくるから待ってろ」


 ケヴィンはそう言うと、再び奥の鍛冶場へと戻って防具を取りに行った。

 銀貨五枚と言っていたし、そこまでの期待はしていないが楽しみだな。


 適当に店の武器を見ながら待っていると、ケヴィンはすぐに防具を持って戻ってきた。

 肩に担ぐように持たれている防具は黒っぽい皮製のもので、俺の想像の何倍も良いもののような気がする。


「……それがスノーの防具か?」

「ああ。人間以外の防具は久しぶりだったから、気合いが入っちまった。不備がないか近くで見てくれ」


 台の上に置かれた皮性の防具を、俺は直に触れながら確認していく。

 パッと見た印象と変わらず、かなり質の高い皮の防具だ。


 見た目に反してかなり軽量だし、この重量ならスノーも嫌がることはないと思う。

 防具の面積に関しても申し分ないし、本当は追加で面積を広げてもらう相談をしに来たのだが、文句の付け所のない防具だ。


 この防具なら、ヘンジャクが挙げていたレックスビル、メディスンアリ対策にもなる。

 特にメディスンアリは、俺は何とかなってもスノーはどうにもならないからな。 

 危険性を考慮し、スノーにラルフのダンジョンの攻略の方を手伝わせる案も考えていたのだが、この防具があれば問題なく連れていくことができる。


「何も文句はないな。ここまでの防具を作ってくれてありがとう」

「構わねぇよ。俺から提案したことだしな。しっかりと守ってやってくれ」

「ああ。防具もあるし、より安心して連れて行くことができる」


 時間も時間なだけに、俺はスノーの防具を肩に担いで金を払ってから出ようと思ったのだが……。

 この防具が銀貨五枚でいいのかが頭を過った。


 質だけでいっても、俺のフォロスコブラ防具と同等ぐらい。

 サイズのことを考えたら、銀貨五枚では安すぎる気がする。

 俺のフォロスコブラ防具は、上下で金貨六枚だったしな。


「値段はいくらだ? 流石に銀貨五枚じゃ足らないだろ?」

「いや、銀貨五枚で構わない。俺が銀貨五枚で作ると約束していたものだからな。後々金額を上げたら詐欺師と同じだ」

「別にそんなことはないだろ。俺でも質の高さは理解できるし、銀貨五枚じゃ安すぎることも分かる」

「いいんだよ。そう思ってくれたなら、これから俺の店を贔屓にしてくれ。……若いもんは甘えられる時に甘えておけ」


 俺の肩を二度叩き、そう諭したケヴィン。

 俺としてはモヤモヤしてしまう部分があるのだが、こう言ってくれるなら素直に受け取っておこうか。


「……そういうことなら、ありがたく厚意を受け取らせてもらう。エデストルにいる間は贔屓にさせてもらうよ」

「ああ。手入れとかだけでも利用してくれ。というか、ラルフの奴に手入れしに来いと伝えてくれ」

「ラルフの奴、玉鋼の剣を買ってから一度も顔を見せていないのか?」

「ああ。忙しいのか知らないが、一度も来ていないから心配だ。安くない剣だからな」

「簡易的な剣の手入れなら俺が教えたから大丈夫だとは思うが……分かった。ラルフに近々来るように伝えておく」

「よろしく頼む」

「今日はありがとう。こちらこそまたよろしく頼む」


 俺はケヴィンに銀貨五枚を手渡して、頭を深々と下げてから店を後にした。

 早速、宿に戻ったらスノーに着させてみるか。

 

 まだまだやることは残っているが、充実した一日を送ることができたな。

 明日からは依頼をこなす日々へと戻るが、金が貯まってロザの大森林に潜れるようになるまで気合いを入れて頑張ろうか。


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