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第188話 広大な森


 ロザの大森林に入ってから、四日が経過した。

 この四日間。朝から昼にかけては、目星をつけた場所を回って有毒植物の採取を行い、夕方から夜中にかけては拠点作りを行った。


 その甲斐もあり、雨風と少しの寒さは凌げるぐらいの家が完成し、スノーのための家も作ることができた。

 この拠点を囲う柵はまだ不十分だけど、それでも壁から壁にぐるりと一周木の柵は張り巡らせたし、拠点作りの方は大分進んだはず。


 有毒植物に関しても、レイゼン草、リザーフの実、ジンピーの葉の三種は相当量の採取ができ、一月分は優に補える量が手元にある。

 ジンピーの葉はエデストルに戻り次第、『ガッドフォーラ』に持ち込んでポーションにしてもらう予定だ。


 拠点作りに、相当量の有毒植物の確保。

 ロザの大森林の最初の探索と考えれば、十分すぎる成果を得られてはいるが――あと一つ、オンガニールだけは見つけ出しておきたい。


 『植物学者オットーの放浪記』によれば、ロザの大森林にオンガニールはあると記載されている。

 というか、カーライルの森には記載されていなかったんだけど……

 記載されていなかったカーライルの森にあった訳だし、ロザの大森林には確実に存在するはず。


 これまで探索範囲が南エリアの南だけだったのを、南エリア全域に探索範囲を広げ、地道に捜索をしていこうと思う。

 あわよくばスキルの実の捜索も行い、気になる植物もあれば採取していくつもりだ。


 拠点で準備を整えた俺は、スノーと共にオンガニールの捜索に移る。

 この四日間で分かったが、基本的にはスノーがいれば魔物は怖くない。


 生息する魔物の種類は豊富なようだが、カーライルの森ほど魔物が跋扈している訳ではないため、スノーについていけば基本的に魔物と遭遇することはない。

 この四日間でも戦闘となったのは、こちらから襲ったオークの群れを抜かすと数回だけで、そのどれもスノーだけで討伐してしまっている。


 俺が拠点作りをしている間は、単体で森へと出て食料となる動物を狩ってきてくれるし、本当にスノー様々な状況。

 カーライルの森でリスと戯れていたのが昔のことのように思いながら、スノーに索敵を任せてオンガニールの捜索に当たったのだった。



 それからとにかく大森林の隅から隅まで歩き回り、オンガニールを探していたのだが……。

 捜索を開始して数日が経っても見つかる気配がなく、南エリアの南、南エリアの西、南エリアの東と回るように捜索をし――ようやく俺はオンガニールのあの気配を感じ取った。

 

 オンガニールを見つけるまでの所要日数は、約六日。

 随分とかかってしまったが、拠点を作ってからのこの六日間で収穫はそこそこあったため、この気配が本当にオンガニールならば十分すぎる成果だと思う。


「スノー。ここで待機していくれ。何があっても近づくなよ」

 

 スノーがオンガニールに近づいたら危険なため、念入りに忠告してから俺は一人で気配を頼りに進んで行く。

 常に魔物の気配を感じていたロザの大森林だが、オンガニールの気配のある方向に進むにつれて魔物の気配がなくなっていった。


 この感じからして、オンガニールが生えている可能性が高い。

 高まる期待と逸る気持ちを抑え、慎重に進んで行くと――少し開けた場所の日差しが差し込む場所に、神々しく生えているオンガニールを俺は視界に捉えた。


 数は一本だけだが、かなり重苦しい圧を放っているオンガニール。

 宿主としている魔物は……見たことがない魔物だな。


 古傷だらけで強そうな兎のような魔物。

 体格は俺と同じくらいで、両の拳には棘のついたメリケンサックがはめられている。

 一体どんな魔物か分からないが、たった一本しか生えていないオンガニールの宿主となってくれたことに感謝しつつ、俺は更に近づいていった。


 ……見る限りでは、カーライルの森のオンガニールと同じ。

 宿主の魔物が強い魔物だからか立派な木が心臓部から生えており、緑色の果実も生っている。


 果実をもぎ取って回収してから、しっかりと現在地の場所を自作の図鑑に書き込んでいく。

 色々と事細かに記載していったが、カーライルの森のオンガニールが生えていた場所と比較しても、一致する点が少し開けた場所ということ以外当てはまらない。


 数が少なすぎる上に、繁殖方法も超特殊。

 オンガニールには、決まった自生場所というのはないのかもしれないな。


 ……とりあえず、一本見つけることができたのが大きい。

 南エリアの東の西と、拠点からはかなり離れているが全然許容範囲内だ。


 明日にでもオークキングの死体をここまで運び、第一回目のロザの大森林の探索は終了かな。

 カーライルの森でやっていたことは、ロザの大森林でも無事に行うことができそうだし、気になる新種の植物も数種類採取した。


 広すぎるが故に四分割したエリアの半分も回れていないが、オンガニールを無事に発見することができたのが何よりの収穫。

 ただ、ロザの大森林の魔物とも全然戦えていないし、見逃した新種の有毒植物もいくつか存在する。


 オンガニールの捜索している道中でオークキングよりも強い反応も感じたし、スキルの実の捜索もまだまだ不十分。

 やることが多すぎて何から手を付けていいか分からない状況だが、ひとまずはカーライルで行っていたことをやれるようにするのが最優先。


 エデストルに帰ったら今回見つけた情報の精査と、オンガニールの実の効能と採取した新種の植物の識別。

 あとは、ロザの大森林の情報を集め直してもいいかもしれない。


 それから……地図は作らないといけないかもな。

 雑貨屋とかでロザの大森林の地図が売っていればいいんだが、とんだ物好きでも作らないだろうし、頑張って自力で作るしかない。


 本気でやることが多すぎて頭が痛くなってきたが、この瞬間が戦闘と同等――いやそれ以上に生きているという実感が湧く。

 オックスターに停滞せず、エデストルに出てきて良かったと心から思いつつ、俺はオンガニールの場所からスノーがいる場所まで戻ったのだった。


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