第187話 有毒植物探し
拠点にて無事に一夜を明かすことができた俺は、早速スノーと共にロザの大森林の捜索に入っていた。
まずは新種の植物の確保よりも、自作の植物図鑑を駆使して基礎体力を上昇させる五種類の植物探しから始める。
自作の図鑑の情報を頼りに、該当する場所を狙っての捜索を開始した。
スノーには索敵と魔物の討伐をお願いし、俺はとにかく植物の捜索に専念する。
最初の狙いは、体力を上昇させるレイゼン草から。
レイゼン草は日陰となっている場所を好み、風通しが良い場所に生えていることが多い。
更に、樹皮がざらつきのある特徴的な木の近くに生えている可能性が高いことから、遠くからでも分かりやすい樹皮がざらついた木から探す。
ロザの大森林は広すぎるため、俺はロザの大森林を大まかに四つに区分し、現在地をロザの大森林の南エリアと定めた。
正直、四つに区分しても広すぎるのだが……これ以上は区分のしようがない。
拠点がある位置が南エリアの南の南で、その拠点から東に進むこと約三十分。
樹皮がざらついた木が密集している場所へと出た。
木同士の間隔も広いため、この辺りならレイゼン草が生えているはず――そう思って捜索を開始し、俺はすぐに見つけた。
「あった。ロザの大森林でも問題なく生えていてくれたな」
紫色の可愛らしい花を咲かせているレイゼン草が、密集するように生えていた。
有毒植物だけあって、草食動物や草食の魔物に食われることもないため、生息地帯に安定して生えていてくれるのは本当にありがたい。
「スノー。ここからは採取に入るから、索敵と戦闘は頼むぞ。もし強い魔物が現れたら、その時はすぐに合図をくれ」
「アウッ!」
スノーに全てを任せ、俺は鞄にレイゼン草をどんどんと入れていく。
拠点に近い位置にあるため、繁殖してくれるよう採りすぎには注意をし、樹皮のざらついた木の裏を転々としながらかなりの量のレイゼン草を採取した。
カーライルの森の時のように、根ごと採取して拠点近くに植えてもいいとも考えたのだが、自家栽培はまだ少し早いな。
拠点も未完成だし、畑に手を回す余裕はまだない。
それにロザの大森林を端から端まで巡るつもりでもいるし、自家栽培は全ての探索が終わってからだな。
採取しながらそんなことを考え、俺は周囲に生えていたレイゼン草を一通り採取し終えた。
この調子で五種類の植物を生息場所を巡って、今日中に全ての植物の採取を終えようか。
一日中、南エリアの南を巡りに巡って、なんとか五種類の有毒植物を採取することができた。
流石に広いだけあって、四つに区分した更に南側だけで全種類が見つかるのだから、とんでもない森だと思う。
レイゼン草は南エリア南の東、ゲンペイ茸は南エリア南の中心、リザーフの実は南エリア南でまばらに生息、ジンピーの葉は南エリア南の北、エッグマッシュは南エリア南の西。
南エリアという区分でも広すぎるため、こんな風に訳が分からなくなってくるが……とりあえず五種類の有毒植物の生息場所はこんなところだった。
俺が欲しているレイゼン草とジンピーの葉が、真逆の位置に生息しているのが少し難点だが、見つかっただけ良かったと思うしかない。
今日の採取だけで鞄の約四分の一ほどを採取できたため、これらは全て日持ちさせるため天日干しにする。
明日はレイゼン草とリザーフの実の採取、明後日はジンピーの葉とリザーフの実の採取に専念し、とりあえずは能力強化のための植物を搔き集めるつもりだ。
そして、この二日間で中途半端な拠点もなんとか完成させ、三日後からはオンガニールの捜索に移りたいと考えている。
オンガニールに関しては、結局ゴブリンから生えたあの一本しか見つけることができなかったからな。
あの一本のオンガニールを繁殖させ、オックスターではなんとかやり繰りをしていたが……正直、情報が少なすぎる。
偶然見つけただけで、どういった場所に自生しているのかも分からないし、とにかく足で回るしかない。
あのなんとも言い知れぬ重苦しい圧を頼りに、探しだそうと思っている。
オークキングに関しても、定期的にスノーに凍らせてもらっているため、もう少しは大丈夫なはずだ。
なんとかこのオークキングを宿主としたいところだが、焦りは禁物。
地に足着けて、一歩ずつロザの大森林の探索と植物の採取を行っていく。
……さて、明日以降の予定を考えたところで拠点作りへと移ろうか。
まずは、寝床とする家をどうするかを考える。
一日中換気を行い、なんとかオークの家を再利用ができないかを考えていたのだが、こびりついた臭いは落ちる気配が一向にない。
鼻をつまんで中も確認したのだが予想以上に不衛生なため、これは一から建て直した方がいいかもしれないな。
カモフラージュとしてこのオークの家は残したまま、俺が住むための家を作ろうと思う。
昨日製作した、藁の屋根に葉を垂らしただけの簡易的な家を土台とし、完璧な藁の家に仕上げていく。
カーライルの森のゴブリンの洞穴は完璧だったんだなと、元拠点に思いを馳せながら、俺は夜中まで必死に作業を行ったのだった。