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第176話 熟練


 それからボルスは、インプの魔法を全て回避。

 狙ってかどうかは分からないが、回避した内の半分の魔法はブルーオーガに直撃しており、主にインプの魔法によってダメージが加算されていったブルーオーガは、力尽きたように頭から地面へと伏せた。


 残った二匹のインプは、背後を取りながらも魔法を全て避け切られたことからも分かる通り、ボルスに何もすることができないまま斬り伏せられた。

 有効な攻撃がなかった故に戦闘時間は長かったものの、危なげない戦いぶりを見せたボルス。

 

 正直、年齢と冒険者歴だけのもじゃもじゃなおっさんとしか思っていなかったが……しっかりと地に足をつけ、経験を積んだ冒険者だということが分かった。

 人は見た目や分かりやすい強さで判断してはいけない。

 そうアルヤジさんから学んだはずなのだが、また無意識の内に舐めてしまったな。


「いやぁ、ブルーオーガ強すぎるだろ! でも……へっへっへ。なんとか倒せたぜ!」

「ボルスさん、凄かった! 俺、思わず見入っちまったもん!」

「そうか、そうか! ラルフがそう言ってくれただけでも、頑張った甲斐があったってもんよ!」


 戻ってきたボルスをラルフが手放しで褒め、ボルスは嬉しそうに頭を掻いている。

 

「それにしても、どうやって倒したんだ? 見ていた限りでは、スキルを使っているようにも見えなかった」

「どうやっても何も……普通に? それ以外には答えようがないな!」


 要領の得ない答えに、俺もヘスターも首を傾げてしまう。

 手合わせでもしてくれれば分かると思うのだが、今この場では無理だろうな。


「答える気がないっていうならいいや。とりあえず、ボルスが戦えることは分かった」

「そう思ってくれただけで十分だ! ――そこで提案なんだが、お前達がプラチナに上がるまで、一時的に今日のような臨時パーティを組まねぇか? 報酬は四分の一……いや、スノーの分も入れるとして五分の一でいい。お前達はプラチナランクの依頼を受けられる! 俺は楽に依頼をこなすことができる! 両者にメリットのある提案だと思うぜ?」


 実力を分かってもらえたと思ったのか、そんな提案をしてきた。

 確かに足手まといにはならないだろうし、プラチナランクの依頼を受けられるのは良い。


 報酬も五分の一でいいなら、特段報酬が減るって訳でもないだろうしな。

 ……なにより、ボルスがどう立ち回っていたのかも気になるし、この提案を受け入れてもいいと思う。


「俺は別に構わない。ラルフとヘスターはどう思ってる?」

「私も構いません。この辺りの地理にも詳しいみたいですし、ちゃんとしたプラチナランクの実力を持っていますからね」

「俺も構わないぜ! ボルスさんから学べることありそうだしよ!」

「……ということだ。その提案を受けさせてもらう」

「よしっ! んじゃ、一時的にパーティの結成だな! 三人とスノー、よろしく頼むぜ!」


 こうして一時的にだが、ボルスとパーティを組むことになった。 

 プラチナ冒険者でエデストルに詳しくもあるため、手を組んで悪いことはないはず。

 俺達は気を取り直し、ブルーオーガ狩りを再開した。



 それから約二時間。

 しっかりとブルーオーガを狩り続けたことで、俺達は合計八匹のブルーオーガを狩ることができた。


 ボルスは魔物を避けつつブルーオーガを見つけ、俺とラルフとスノーでブルーオーガを倒す。

 余分な魔物に関しては、ヘスターの魔法で一掃するという即席パーティにしてはかなり良い立ち回りを取れた。


「いやぁ、本当に強いな! なんでお前達がゴールドランクなんだよ!」

「ゴールドにも上がったばかりだからな。冒険者のランクのシステムが悪いとしか言いようがないな。……まぁ変に融通を利かせてしまうと、おかしくなってしまうんだろうけど」

「昇格試験みたいなのがあればいいんだけどな! 一気に昇格できるようにさ!」


 昇格試験はあってもいいと俺も思ったけどな。

 グリースみたいな、ゴールドランク適正のプラチナランク冒険者を作らないためにも。


「まぁでも、このペースならミスリルまではすぐに上がれるだろ! ……それにしても、ブルーオーガを八匹も狩っちまったぞ? 一匹金貨一枚だから、合計金貨八枚。一人当たりの取り分は金貨一枚と銀貨六枚だろ? 凄すぎるだろ!」


 確かに、緊急依頼以外でこんなに稼げたのは初めてかもしれない。

 はぐれ牛鳥は一回の報酬で金貨五枚を貰ったときもあったけど、何せ遭遇率が低すぎたからな。


「これだけ現れてくれるなら、毎日のように稼げると思うけどな」

「だな! 実質三時間ぐらいだし、もっと粘っても良さそうだけど……やっぱ駄目なのか?」

「三人とスノーの力を考えりゃ、俺もいけるんじゃないかと思い始めているが……。とりあえずは止めておいた方がいいな! バルバッド山を甘く見ると、本当にあっさりと命を落とす」


 深刻な表情でそう告げてきたボルス。

 長年エデストルで冒険者をやっていただけあり、命を落としていく冒険者をいっぱい見てきたのだろう。


「そういうことならやめておこう。経験と知識はあることが分かったからな。ボルスに従って損がないことは理解している」

「だな! これからエデストルに帰るとして、まだ昼過ぎくらいだろ? ボルスさん、エデストルの街を紹介してくれよ!」

「おう、いいぜ! そういうことなら、ついでに俺のパーティメンバーも紹介する」

「怪我をしているんだっけか? 本当のパーティメンバーは」

「いや、病気にかかっちまってる。色々と大変なんだよ、おっさんはな」


 本当に大変そうな表情で、ため息を吐きながらそう言ったボルス。

 どんな生物も年齢による老いには勝てないもんな。


「ボルスさんのパーティって、二人パーティなんですか? それとも複数人病気にかかっているってことでしょうか?」

「三人パーティだな。んで、一人は大病を患っていて、一人は普通の病を患っちまってる」

「へー。それで一人で冒険者ギルドに来てたのか」

「そういうことだ! まぁ詳しい話は戻りながらにでも話すから、ひとまずエデストルに帰ろうぜ!」


 世間話を挟んだところで、俺達はバルバッド山の麓を去ってエデストルへと帰還した。

 あまり期待していなかったが、ボルスも良い人そうだし知識も豊富。

 初日の依頼と考えれば、色々な意味で大成功だったと思う。


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