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閑話 王女と騎士


 ――エデストルダンジョン三十二階層――



「おい、遅いぞ。シャーロット様を待たせるな。……ついてこれないなら、置いていくぞ」

「ゴーティエ、放っておいていいわよ。私は待つつもりなんて一切ないから。――ミエル、あなたが頼み込んでパーティに入ってきたんだからね。役に立たないなら、即座に切り捨てるわよ?」


 膝に手を当て、息を切らす私に冷たくそう言い放った二人。

 一人は、幼い頃から王直属の近衛兵団の中でも選りすぐりの者たちで構成された、『ロイヤルガード』として活躍していた男。


 つまりは『天恵の儀』を受ける前から、圧倒的な身体能力でのし上がった正真正銘の化け物であり……。

 更に『天恵の儀』で上級職の【聖戦士】を授かった、『剣神』クラウスに次ぐ強さを誇る――ゴーティエ。


 もう一人は、この国の王の実娘である正真正銘の王女。

 シャーロット・アレクサンドラ・ジャンヌ=メルドレーク。


 王族は王族らしく、王城でふんぞり返っていればいいものの――シャーロットは【戦姫】という特級職を授かった。

 その能力は凄まじく、クラウスの【剣神】に次ぐ職業と呼べるもの。

 王女の務めを全て投げ出し、猛反対されながらも冒険者となることを選んだ王女。


 数百年に一人の肉体を授かったゴーティエと、数百年に一人の適性職業を授かったシャーロット。

 このコンビが弱い訳もなく、学園でもクラウスの派閥と対を成す存在となっていた。


 最上位を目指すならば【剣神】のクラウスについていくか、王女であり【戦姫】であるシャーロットについていくかの二択なのだが……。

 私はクラウスの兄であるクリスに嵌められ、クラウスとの縁が完全に切れた。


 なんとか汚名返上しようとクリスの捜索に当たったのだが、そんな私を嘲笑うかのように姿を晦ましたクリス。

 そんな私は泣く泣く王女であるシャーロットに媚を売ったのだが、思っていたよりも何倍も酷い。

 

 シャーロットは確かに強いけれど、戦闘以外は何もやらない。

 護衛であるゴーティエもお守りするために目を離せないと、全ての雑用を私に押し付けてくる。


 その癖、近接職でない私に一切の配慮もせず、ガンガンと先へと進んで行く横暴っぷり。

 このコンビの穴を埋める魔法職でありながら、【賢者】という職業故に私だけがパーティの加入を許され、一時は本当に嬉しかったのだが……蓋を開けてみればこれだ。


「なに、ボケっとしている! 返事をしろ、返事を!」

「すいませんでした。頑張ってついていきます」


 口先だけでそう返事をするが、正直もう限界に近い。

 元々、王女と王女にぞっこんの馬鹿騎士となんて、絶対にパーティを組みたくなかったのに……。

 全部、全部、全部あの糞兄貴のせいだ! 

 

 胸中で不満を爆発させ、王女に当てることのできない怒りを全てクリスにぶつける。

 いつか絶対に居場所を見つけ、借りを何倍にして返してやる。

 ――そう強い復讐心を糧に踏ん張り、私はハイペースで先へと進む二人に必死についていったのだった。



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