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第167話 いつもと変わらぬ場所


 ノーファストからオックスターへと戻ってきて、約一週間が経過した。

 戻ってからすぐに旅発つ準備を整え始めたため、既にいつでも旅立てる準備ができている。


 家の契約も解除したし、副ギルド長やシャンテルにも戻ってくるなり報告を済ませた。

 二人は相当悲しんでくれ、シャンテルに至っては本泣きで俺達を止めにきたが……しっかりと一から全てを説明し、なんとか納得してもらうことができた。


「家は粗方綺麗になったな。後の細かい掃除は業者に任せて大丈夫だろ」

「もっと長く住むと思っていましたが、あっという間にまた家なしになってしまいましたね」

「家があるってのは大きかったな! 気持ち的にも大分余裕が生まれたし。事故物件って聞いた時はビビったけど、なんともなかったし本当に良い家だった!」

「本当にそうだな。……ただ、すぐに出て行くことになった訳だし、根掘り葉掘り尾びれがついて変な噂が広まってしまうかもな」

「確かに! ちょっと不動産屋さんに悪いことをしましたかね?」

「こればかりは仕方ないからな。まぁ、担当してくれた人には少し多めに金を渡すつもりだ」


 解約金に加えて、プラスでお金を渡すつもりでいる。

 破格の金額で住まわせてもらったし、多少色をつけても全く痛くないからな。


「うし、それじゃ行くか」

「シャンテルさんと副ギルド長さんは、街の入口で待っていてくれているんですよね?」

「そう言ってたぜ! 見送りに行きますって!」

「また全力で引き止めにこなければいいんだがな。この間は半日はぴーぴー言われながら引き留められたし」

「さ、流石に大丈夫じゃないですかね? 今日そんなに引き留められたら、予定が大幅に狂ってしまいますし」


 シャンテルの対応に少し恐怖を感じつつも、俺達は家を後にした。

 家の鍵を返し、不動産屋への挨拶は二人に任せて、俺は一人で教会へと足を運んだ。


 レアルザッドの時と同様、最後に挨拶を兼ねて能力判別を行ってもらうつもりでいる。

 ……ちなみにだが、先日カーライルの森に入って、カルロから生えたオンガニールの実を食べた。


 能力値の上昇もさることながら、カルロから何のスキルが手に入っているのか――非常に気になるところだ。

 【自己再生】、【肉体鎧化】のスキルは本当に強力なスキルだったからな。


 通常スキルだったら手に入るのだが、はたしてどうなのだろうか。

 期待に胸を膨らませながら、俺は教会へと向かった。


 旅立ちの日というのに、いつもと変わらない穏やかな教会の中。

 神父は気持ちよさそうにうたた寝しており、起こすのが申し訳なくなるが……最後の仕事をしてもらわないといけない。


「寝ているところ悪いが、ちょっといいか?」

「……あへ? ね、寝ていませんよ!? クリスさん、ど、どうもです」

 

 以前と同じような反応を見せた神父に俺は若干の笑みを溢しつつ、早速本題へと入る。


「実はなんだが、今日でオックスターを出るんだ。神父には世話になったから挨拶をしようと思ってな」

「そうなんですか……。それは寂しくなりますね。この教会を訪れる人なんて、クリスさんくらいしかいませんでしたので」


 本当に寂しそうな表情でそう言ってくれた神父。

 確かに何度も来ているが、一度もこの神父以外の人間を教会で見たことがないしな。

 教会としてどうなのかとも思うが、多分本心で寂しいと思ってくれている様子。


「本当に人がいないもんな。この教会」

「ええ。私が神父だからだと思います。……ふふっ、私はどこからどう見ても普通のおじさんにしか見えないですもんね」

「確かに神聖さは一ミリも感じないが、俺は親しみやすさがあって嫌いではなかった」

「慰めて頂きありがとうございます。……クリスさん、最後に能力判別していきますか?」

「ああ、お願いしようと思っていたところだ。最後の俺からのお布施だな」


 金貨を一枚取り出し、俺は神父に渡そうとしたのだが……。

 神父は金貨を受け取らず、手で制してきた。


「今回はいりません。今まで散々稼がせてもらいましたからね! 今日は無償で行わせてもらいます」

「いいのか? 教会側から怒られたりするだろ」

「大丈夫ですよ。私が大変なだけで誰も気づきませんから。ささっ、奥の部屋に来てください!」


 俺は神父の後をついていき、厚意に甘えて無償で能力判別を受けさせてもらうことにした。

 カルロ戦の前にした以来の鑑定だ。


 そこまで時間は経っていないし、植物に関してもいうほど食べれていないから……。

 注目すべき点はカルロのオンガニールが、どれほどの能力を持っているかだけだな。


「それでは最後の能力判別やらせて頂きます。んっはああっ! ふぅー……。終わりました。冒険者カードをお返し致します」

「ありがとう。今まで本当に助かった」

「いえいえ。こちらこそ本当に助かりました。またオックスターに戻ってきた際は是非顔を見せに来てください。次は無償とはいきませんがね!」

「ああ、必ず挨拶に来させてもらう。それじゃあな」


 神父に見送られながら、俺は教会を後にした。

 能力を一刻も早く確認したいところだが……みんなを待たせているため、確認は後にしてすぐに街の入口へと目指した。


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