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第147話 二人への報告


 俺がオックスターの街に戻ってきたのは、翌日の早朝。

 色々と考えると狂ってしまいそうになるため、ほぼ無心でカーライルの森まで行って戻ってきた。


 ……これから俺のやるべきことは、すぐにオックスターの街を離れる準備をすること。

 アルヤジさんの話が正しければ、追手のカルロは俺がオックスターにいることを知っているため、すぐに俺を追ってオックスターにやってくるはず。


 鉢合わせたら一巻の終わりのため、俺はカーライルの森に引き篭もり、力をつけるために植物をとにかく摂取しまくるつもり。

 そして――アルヤジさんのモノも含む、様々なオンガニールを育てまくり、複数のスキルを会得しカルロを必ず殺す。

 

 これからの動きについてを決めた俺は、家の前に置いていたアルヤジさんの装備品を回収してから、家に入ってシャワーを浴び、二人が起きてくるまで静かに待った。



 リビングの椅子に座り、寄ってきたスノーを撫でながら待つこと約一時間。

 あくびをしながら階段を下りてきたのは、ヘスターだった。


「……あれ? クリスさん、もう起きてきたんですか?」

「いや、少し色々あってな。ラルフが起きてきたら、ちょっと話がある」

「……分かりました。もうそろそろ起きてくると思いますので、朝食を作っていますね」


 ヘスターが洗面台へ行って顔と歯を磨き、朝食を作り始めてから十数分後。

 ラルフも伸びをしながら下へと降りてきた。


「おお、無事に帰ってきていたか! 帰りが遅かったから心配してたけど……ん? どうかしたか?」

「ちょっと、な。話があるから、少し座って待っててくれ」


 俺の変化を察知してか、すぐに声を掛けてきたラルフにそう伝え、二人して黙ったまま座って待った。

 それからすぐに朝食を持ってきたヘスターも椅子へと座り、俺の話を聞く態勢が整ったようだ。


「いきなり本題だが――昨日の夜中、アルヤジさんがこの家を訪ねてきた」

「へ? アルヤジさん? アルヤジさんって【銀翼の獅子】のか?」

「ああ、そうだ。【銀翼の獅子】のアルヤジさんだ」

「一体、何をしに夜中に尋ねてきたんですか?」

「昨日、【銀翼の獅子】が襲われた。俺の追手にな。……そのことを伝えに来てくれた」


 そう伝えると、安堵した様子を見せた二人。

 頭の中では、一ミリも【銀翼の獅子】がやられたとは思っていないのだろう。

 俺だって、実際にアルヤジさんを見なければ信じていないだろうし仕方がない。

 

「なんだ、そのことでわざわざ来てくれたのか! せっかくなら俺も会いたかったな! 夜中に来なくても良かったのにさ!」

「急ぎで伝えに来てくれたんだと思いますよ。優しい方々ですから」

「…………二人が思っているのとは違う。【銀翼の獅子】は、追手にやられたんだ。みんながアルヤジさんだけを逃がし、そのアルヤジさんが俺達に報告をしに来てくれた。そして――そのアルヤジさんも、俺にそのことを伝えたあとに息を引き取った」


 俺のその言葉に、目を大きく見開き口をパクパクとさせたラルフ。

 ヘスターも信じられないようで、手で口を強く押さえた。


「う、嘘だろ? だって、この間一緒に修行したばかりじゃねぇか!? あれだけ強い人達が死んだ……? クリスッ! じょ、冗談でも面白くねーぞ!!」

「冗談なんかじゃない。全て事実だ」

「【銀翼の獅子】の面々が確実に死んでしまったんですか? 生きている可能性だって……ありますよね!?」

「アルヤジさんの話だと、ジョイスは確実に殺された。レオンとジャネットはアルヤジさんを逃がすために立ち塞がり、生死は分からないが……追手の強さを聞く限りでは、死んだと思うのが妥当だ」

「な、なんだよそれ……。おかしいだろ! ミスリル冒険者パーティがそんな簡単に……あっちゃいけないだろッ!」


 ラルフは机を思い切り叩き、テーブルに乗せられた料理の乗った食器が大きく揺れる。

 食器がグワングワンと音を鳴らしながら揺れ、その揺れが収まったところで再び話を始めた。

 

「俺も甘く見ていた。所詮は追手だし、一人だから大丈夫だとな。……相手は勇者候補の人脈を最大限に使った追手だ。少なく見積もっても、ダイヤモンド冒険者に匹敵する実力の敵」

「……か、敵わないですよね。そ、そんな相手じゃ」

「ああ。だから逃げるんだ。今回はその提案をするためにここで話している」

「クリスは!! ――クリスは悔しくねぇのかよ! 一方的に攻撃だけされて、行く場所行く場所をこうやって追い出されて!! 逃げて逃げて逃げて……。大事な人達まで殺されてよぉ……!!」

「――悔しいに決まってんだろ!! ……家を追い出され、クラウスに殺されかけてからずっとな。俺だって今すぐに追手のところに行き、ぶち殺してやりたいが今の俺達じゃ敵わない。この怒りは発散せず――溜めて溜めて溜め込んで、借りを絶対に返してやるんだ」


 感情的になったラルフは、歯を思い切り噛み締めながら俯き黙りこくった。

 怒りに任せて行動して、良い方向に進むのは本当に稀だ。


 こんな時だからこそ、冷静になって力をつけなくてはならない。

 【銀翼の獅子】の面々の仇を討つためにも、な。


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― 新着の感想 ―
[一言] もしかして死亡フラグって思ってたら、死亡フラグだった………泣 アルヤジさん…………主人公にとって2人目の人が…………… めちゃくちゃ悲しい……… 普段は楽しく読ませてもらっています。 素晴…
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