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第144話 猛攻


 レッドコングは凶悪な笑みを浮かべる俺を見て、一瞬動きを止めたのだが、すぐに攻撃を再開した。

 俺はすぐさま【要塞】を解除し、【外皮強化】を発動。

 更にヘスターに攻撃開始の合図を出してから、鉄の盾を構えて一つ一つの動作を全て頭に叩き込む。


 太く長い腕を体に巻き付けるようにして溜め、薙ぎ払ってきたのを盾で弾き飛ばす。

 続けざまのバックキックは体を捻らすようにして躱し、掴もうとしてきた動作に合わせてシールドバッシュを顔面に叩き込む。

 モロに顔面にシールドバッシュを食らい、一瞬怯んだそのタイミングに合わせて、ヘスターの【フロストアロー】がレッドコングを襲った。


 ……レッドコングは全ての動きが連動しており、流れるような攻撃なのだが、盾で防げる威力の攻撃なら難なく対処が可能。

 バックキックは威力が高かったが、全ての攻撃が防ぎ切れない訳ではない。

 今のところ【要塞】がなければ防げない攻撃は、左ストレートと先ほどのバックキックのみ。


 この程度なら全然負ける気はしないんだが、レッドコングはまだ底を見せていない。

 【フロストアロー】を受けたレッドコングは、首を振りながら起き上がり、最初よりも激しくドラミングし始めた。


 どうやら本気にさせたようで、胸を叩く度に筋力量が増加していく。

 更に体から炎がチラつき始め、いよいよ本領発揮といったところか。


「ここからは一気に行くぞ。ラルフとスノーはタイミングを合わせ、俺の合図と共に攻撃を行ってくれ。ヘスターは先ほどまでと同じように、隙を見て魔法を頼む」

「了解! スノー行くぞ」

「分かりました!」


 二人に指示を出してから、俺は【戦いの舞】を発動させる。

 右腕のみに強化する箇所を集中させた。


 盾を持っているのは左腕で、右腕には剣を構える。

 ここからはガード一辺倒ではなく、攻撃も加えてレッドコングの隙を作る動きを取りにいく。


 赤い毛を逆立たせ、先ほど以上に全身を使いながら襲い掛かってきたレッドコング。

 ……俺の役目は動きを止め、ラルフとスノーの攻撃の隙を作ること。


 俺目掛けて振られまくる拳を全て回避し、体勢を崩しながら放ってきた裏拳をここぞとばかりに盾で下へと弾き飛ばす。

 下に弾き飛ばしたことで、地面に手をついたのを見逃さなかった俺は、腹目掛けて剣を振った。

 【戦いの舞】の能力上昇も乗っているため、決まれば致命傷――そんな一撃だったのだが、レッドコングは全長の半分はある長い尻尾に炎を纏わせ、俺目掛けて振り回してきた。

 

「クソッ、硬いし――熱い!」


 俺は咄嗟に腹から尻尾へと狙いを変え、このまま尻尾をぶった斬るつもりで振り下ろしたのだが、金属音のような甲高い音が響くだけで斬り落とすことはできず、威力は完全に相殺された。

 炎を纏った尻尾の風圧で熱波が体を襲い、めちゃくちゃに熱い。


 ――これじゃまるで炎の剣だな。

 振るってきた尻尾に対してそんな感想を抱きつつ、俺の攻撃は失敗に終わった訳だが……。


「ラルフ、スノー! こい!」


 バランスを崩した隙を突くため、休む間もなくラルフとスノーに攻撃の指示を出す。

 そのタイミングで、ヘスターの魔法も放たれた。


「【ハイドロボール】」


 水の中級魔法、【ハイドロボール】。

 強烈な水圧の球が、一直線にレッドコング目掛けて飛んでいき――纏っている炎をかき消すかの勢いで衝突した。


 【ハイドロボール】がぶつかった瞬間に、まずはラルフが攻撃を仕掛けに出る。

 その真後ろをスノーがついていき、ラルフの強烈な上段斬りがレッドコングを捉えた。

 

 バランスを崩したところに、ヘスターの強烈な魔法を食らったことで対処できなかったのか、ラルフの一撃は尻尾で弾かれることなく、レッドコングを深々と斬り裂いた。

 その上段斬りに合わせ、牙に氷を纏わせたスノーが左腕に噛みつく。


「ムオあああアアアアア!!」


 叫び声に近い雄たけびを上げ、近くにいる二人を攻撃しようと無我夢中で腕を振るいまくるレッドコング。

 だが……ラルフとスノーと入れ替わるように前に出た俺が、この攻撃を冷静に全て防ぎ切り、カウンターで今度こそ脇腹に剣を深々と突き刺した。


 【肉体向上】に【戦いの舞】が乗った完璧な突き。

 二度の中級魔法を食らい、更にラルフの袈裟斬りとスノーの氷結噛みつき、そして俺が放ったトドメの脇腹への突きにより、初めて片膝を地面に着けたレッドコング。


 ……ただ、まだ目は一切死んでおらず、攻撃を仕掛けるために必死に体を動かそうとしている。

悪あがきはさせずに、ここで仕留めなくてはいけない。

 強くそう感じた俺は、ラルフとヘスターに合図に送り、トドメを刺すべく一気に攻撃を仕掛けにいった。


「ヘスター、魔法を頼む!」

「【フロストエッジ】」


 俺の言葉と同時に刃のような氷が、片膝を着いているレッドコングに襲い掛かり、着弾すると同時に俺が右側。

 ラルフが左側から回り込み、攻撃を仕掛けにいく。


「うりゃああああああ!」


 ラルフの気迫の籠った一撃が、先ほどのスノーの噛みつきによって深く抉れていた箇所に入り、筋肉の鎧を纏った極太の腕を斬り飛ばした。

 【フロストエッジ】で体中がズタズタに傷つけられ、ラルフの一撃で腕が飛んだ。


 ……後は、俺がトドメを刺すだけだな。

 心臓も駄目、両断も駄目となると、残るは頭だけだ。


 動けなくなっているレッドコングの頭蓋を目掛け、鋼の剣を思い切り突き刺す。

 完璧に脳を貫いたこの一撃でようやく絶命したようで、激しく暴れ回っていたレッドコングは、顔から崩れるように地へと伏せた。



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