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第128話 推奨能力値


 翌日。

 今日からは、ゴールドランク依頼を受ける予定。


 早速冒険者ギルドへとやってきた俺達は、受付へと向かった。

 ……やっぱりグリースがいない、静かな冒険者ギルドはいいな。


 あれだけ荒れていた冒険者ギルドも、すっかりレアルザッドぐらいまで治安もよくなったし――仕方なく従ってはいたものの、グリースのことをよく思っていなかった冒険者が大多数であった様子。


 グリースの代わりとなりそうな取巻き達も、俺が脅したことで別の街へと移っていったし、ギルド長も副ギルド長が務めているから、オックスターの冒険者ギルドはしばらくの間は安泰だろう。

 平和となった冒険者ギルドを眺めながら、椅子に座って副ギルド長が来るのを待っていると、奥の部屋から歩いてやってきた。

 その顔は疲れきっていて、まだ仕事に慣れていないのが分かる。


「みなさん、待たせてしまってすいません。ちょっと仕事が立てこんでいまして……」

「いや、全然構わない。忙しいのに呼び出してすまなかったな」

「い、いえいえ! クリスさん、ラルフさん、ヘスターさんは、この冒険者ギルドの英雄ですからね! いつでも喜んで顔を出しますよ!」

「喜んでという割には、疲れ切ってるみたいだが……大丈夫なのか?」

「いやぁ、ギルド長の仕事が思いの外忙しくてですね……。ギルド長が突然の辞職をしてしまったので、副ギルド長の指導も済んでおらず、ギルド長の仕事と副ギルド長に仕事を教えるのできりきり舞いなんですよ」


 深くため息を吐きながら、そう言葉を漏らした副ギルド長。

 やはりこのギルドの基盤となっていたのは、前ギルド長とグリースだったということが分かるな。


 残っていた方が良かったとは決して思わないが、それでもいなくなるとその分のしわ寄せが誰かに降りかかる。

 それも相当量のしわ寄せがな。

 グリースに関しても腐ってもプラチナランク冒険者で、奴のパーティでこなしていた依頼も数知れないだろうし――いなくなっても尚、負担をかけるとかとんでもない二人だな。


「それはご愁傷様だな。ギルドに関しての手伝いは出来ないが、依頼に関してならこなせるからいつでも言ってくれ。色々と良くしてもらっているから、副ギルド長になら幾分か融通を利かせる」

「ありがとうございます! 本当に頼もしいです! ……それとなんですが、そろそろ副ギルド長というのを止めてはもらえませんかね? 新しい副ギルド長もいますので……」

「えー? 副ギルド長は副ギルド長だろ! なぁクリス!」


 今まで後ろで話を聞いていたラルフだったが、そのお願いに対して初めて口を挟んできた。

 確かに、俺にとってももう副ギルド長は副ギルド長だからな。

 

「まぁそうだな。ギルド長だろうが、副ギルド長は副ギルド長だ」

「えー! ……なら、せめて名前付けで呼んでくれませんかね?」

「マイケルだっけ? マイケル副ギルド長ならいいのか?」

「私はマイケルではなく、ローレンです! マイケルは前ギルド長で……いえ、やっぱりいいです! これまで通り副ギルド長と呼んでください! なんかもっとややこしくなりそうな気がしました」

「それはありがたい。変わらず、副ギルド長で統一させてもらう」

「それで……本日は何のご用件で尋ねてきたんですか?」


 軽い雑談を挟んでから、本題を訪ねてきた副ギルド長。


「今日は、各ランク帯の推奨能力値などがあれば教えてもらいたくて尋ねにきた。流石に知らないということはないよな?」

「各ランク帯の推奨能力値ですか? えーっと……確かルーキーがオール10です。基本的にはそこから、能力を倍々に計算していくのが推奨能力と言われていますね。ブロンズでしたら20、シルバーでしたら40、ゴールドでしたら80――みたいな感じです」

「なるほど。ゴールドランク帯の依頼を余裕でこなせる能力は、オール80って訳だな」

「そういうことですね! まぁあくまでも、これは目安の一つでして……スキルも技術も持っていない人の推奨能力となっています。能力値がオール80に到達していなくても経験が豊富な方や、強力なスキルを持っている方とかは楽々と依頼を達成されますね」


 これは分かりやすいが、やっぱりランクが上にいくにつれて壁は高くなっていく訳か。

 プラチナなら160で、ミスリルは320。

 クラウス達の推定ランクはダイアモンドだから――推定能力値はオール640か。


 クラウス達は強力なスキルを保持しているだろうから、能力自体はもっと低い可能性もあるが……。

 近くに感じていたけど、こう聞くとまだまだ遠い先にいるな。


 ただ推奨能力値がオール80ということなら、俺達はゴールドランク帯の依頼は楽々こなすことができそうだ。

 ラルフが若干下回っているが、耐久は基準を超えているしスキルも豊富。

 ヘスターは大幅に下回っているけど魔力が飛びぬけているため、遠距離に特化させれば……【魔力回復】も考えると、むしろプラチナでも通用するレベルと見ていい。


「なぁ副ギルド長! ということはよ……グリースはオール160の実力があったってことなのか?」


 俺がゴールドランク帯でやっていけるかどうかを思考している中、ラルフがそんなことを聞いた。

 確かに、グリースにオール160の能力があったとしたら――色々と辻褄が合わなくなる。

 スキルも俺を遥かに凌駕する数を持っていたし、ビビり散らかしていたとはいえ、あそこまでの圧倒はできなかったはずだ。

 

「グリースはプラチナランクの冒険者でしたが、ほとんどゴールドランク帯の依頼を受けていました。二度ほどプラチナランク帯の依頼を受けていましたが、いずれも失敗していましたしね。……ですので、ゴールドランク帯の依頼をこなしてプラチナには上がりましたが、実力的にはゴールド以上プラチナ以下ってところではないでしょうか」


 なるほど。これなら納得できるな。

 相対した時に感じた圧からも、平常心だったのであれば俺と互角ぐらいには渡り合える強さを持っていると感じた。

 典型的なゴールド以上、プラチナ未満冒険者だったって訳か。


「ありがとう。色々と目安が分かって良かった」

「いえいえ。これぐらいのことであれば、いつでもお教え致しますので。……それではもう質問等は大丈夫ですかね?」

「ああ。大丈夫だ」

「分かりました。それでは仕事がありますので、私は戻らせて頂きます。また何かあれば、ご気軽にお呼びください!」


 そう言い、軽くお辞儀をしてから奥の部屋へと戻っていった副ギルド長。

 残された俺達は――掲示板を見て、ゴールドランク帯の依頼を吟味するとしようか。


「なぁ、推奨能力値を聞けたのは良かったな! 俺がまだまだだってのが明確に分かった!」

「俺もまだまだ鍛え方が甘いと感じたな。あの話に当てはめるなら、クラウス達はオール640に近い能力を誇っているという訳だからな。……スキルが馬鹿げている可能性もあるから、単純な能力値でいったらもっと低いのかもしれないが」

「とりあえずゆっくりしている時間なんて、一秒たりともないというのが分かりました! これまで以上に集中して励みます!」


 まだまだ上を目指さなくてはいけないということが分かり、気合いを入れ直した俺達三人。

 クラウスを超すため、俺はどんな依頼も全力でこなしていくと決めたのだった。


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