第125話 スキルの試し打ち
平原へと着き、早速スキルの試し打ちを行っていく。
俺はこれまで【毒無効】と、ゴブリンのオンガニールから得た【繁殖能力上昇】しか持っていなかったため、自発的にスキルを使ったことが一度もない。
ラルフ曰く、スキルを使うと疲労感が一気に溜まる感じと言っていたが、その感覚の確認も同時に行う。
『天恵の儀』にて、適性職業【農民】で【毒無効】しかスキルを授かることができなかった時は、一生スキルを使うことはないと思っていたが……まさかこの日が訪れることになるとはな。
殺したいほど憎く、事実として殺したグリースに初めて心の底から感謝をし、ワクワクとした気持ちでスキルを発動させた。
「【外皮強化】」
自発的なスキルは初めて使ったが、ラルフのを見ていたしグリースも口に出して使用していた。
スキルを使うと体に意識させつつ、スキル名を口に出して唱えることでスキルが発動された。
――その瞬間。
若干だが走ったような疲労感に襲われたあと、皮膚が一気に硬化した。
硬化を触って確かめようと試みたが、手のひらも硬化されているため何の感触も感じることができない。
仕方なく鋼の剣を引き抜き、軽く皮膚に沿うように軽く刃を当ててみることにした。
うーん…………。
グリースに突き刺した時のような岩のような感触ではなく、せいぜい木くらいの感じだろうか。
俺の耐久力がないのが原因なのか、それともスキルを重ね掛けすることで硬化の強度が増しているのか……。
まぁでも、無事にスキルの発動を行うことはできたな。
早速、スキルの重ね掛けも試してみよう。
「【肉体向上】」
【外皮強化】に加えて、【肉体向上】も追加で発動させる。
【肉体向上】は【外皮強化】と違って、発動した瞬間にその効果を体感することができた。
明らかに体が軽く、筋肉量も一気に増えたような感じだ。
俺は手に持っていた鋼の剣を振るってみると、今までは全力で振らなくては出せなかった速度を片手で軽々と出せた。
これは――楽しすぎるな。
軽くジャンプやダッシュしてみるが、俺の体とは思えない動きとなっている。
その分、動作を行うごとに疲れが溜まっていっているのが分かるが、これはかなり使えそうなスキルだ。
スキルのオンオフが即座に切り替えられるなら、緩急を使った攻撃もより有効になってくる。
このまま少し暴れ回り、実際の魔物に対しても試してみたくなってきたが……。
一度興奮を収めて、スキルの試し打ちへと戻る。
「【要塞】」
最後は【要塞】。
これが一番よく分からないスキルだったのだが、発動した瞬間に体が一気に重くなった。
羽が生えたかのように軽々と動けていた先ほどまで打って変わり、重しを体に乗っけられたような感覚。
【外皮強化】と【肉体向上】の二つよりも、遥かに疲労度合いが高く、全力で走ってるくらいの疲れが生じる。
もちろん三つのスキルを重ね掛けしているというのもあるだろうが、【要塞】が乗った瞬間に比重が大きくなったから、体力の燃費が悪いスキルで間違いないと思う。
すぐに解除したいところだが、皮膚の硬度についてだけ調べてみることにした。
手に持った鋼の剣で、再び腕に軽く押し当ててみる。
さっきまでは木ぐらいの硬度だったのだが――グリースを突き刺したときの硬度に近い、ガッチガチの皮膚になっていた。
【外皮強化】は耐久値によって、外皮の硬度を上昇させるスキル。
【肉体向上】は筋力と敏捷性を底上げさせるスキル。
【要塞】は敏捷性が大幅に落ちるが、耐久力を大幅に上昇させるスキルって感じだろうか。
使ってみて分かったが、非常にバランスの取れたスキル構成だな。
【外皮強化】に【要塞】を重ねることで、皮膚を岩のように硬化させ、【要塞】で大幅に落ちた敏捷性を【肉体向上】で補う。
あのグリースが、プラチナランクまで上がれたのも納得するスキル構成。
一つ文句をつけるとしたら、三つの重ね掛けだと体力の消費が大きすぎること。
この三つの重ね掛けは、余程の強敵との戦いじゃなければ使うことはないかもしれないな。
とりあえず、汎用性の高そうな【肉体向上】だけは自由自在に、扱えるように慣れておきたい。
それと、これまであまり重視していなかった体力の強化も必須になってきそうだ。
【外皮強化】と【要塞】も、グリースと戦って分かっているが、強いスキルであることは間違いないからな。
……ひとまずは魔物を探して平原を歩き、程よい魔物相手にスキルを戦闘に組み込んで試してみるか。
そう決めた俺は、ゴブリンやコボルト相手にスキルの試し打ちを行うことにしたのだった。





