第101話 スノーと共に……
フォレストドールの討伐及び、植物採取を行った日から一週間が経過した。
とりあえずこの期間はグリースに絡まれることなく、何事もない平和な日々を過ごせている。
そして何より……フォレストドールの依頼が大当たりだった。
初日は討伐数が一体だけで留まってしまったが、その後六日間連続で同じ依頼を受け続け、順調に毎日二体のフォレストドールの討伐に成功。
更に、オール草による副業も順調で、プラス銀貨五枚ほどの稼ぎを出している。
有毒植物の採取はそれほどできていないが、それでもリザーフの実を毎度一日分ほどは採取できているし、非常に効率の良い依頼と言えた。
一つ問題なのは、この一週間でフォレストドールを狩りつくしてしまったことから、フォレストドールの討伐依頼が出されなくなってしまったこと。
こればかりは、はぐれ牛鳥と違って需要のある魔物ではないから仕方ないんだけどな。
「ほれっ! スノー、取ってこい!」
「ちゃんと走る姿が形になってきましたね」
そんなことを考えながらリビングのテーブルに座り、スノーと遊んでいる二人をぼーっと眺める。
スノーは歯が生えそろってきたことで、ヘスター手製の人形でのキャッチボールができるようになった。
パンサーだし猫に近い魔物のはずなんだが、どこか犬っぽいんだよな。
動きもそうだし、性格も犬に近い。
それと、お手とか伏せとかもできるようになったし、スノーは頭がかなり良いと思う。
「二人とも、そろそろ時間だろ」
「んだよ、もう時間かよ! ……スノー、それじゃ向こうでも元気で暮らすんだぞ」
「私たちのことを忘れないでくださいね!」
二人は尻尾をブンブンと振り回し、楽しそうにハァーハァー言っているスノーに、今生の別れのような言葉を投げかけた。
……ったく、本当に大げさだな。
「一週間、離れて暮らすだけだろ。それに様子がおかしくなったらすぐに連れて帰ってくる」
「だとしてもよ……。寂しいものは寂しいんだよ! くそっ、クリスばっかり本当にずりぃわ!」
「う、うぅ……。私も一緒に行きたいです」
この二人が何を言っているかというと……。
俺は今日から、カーライルの森に一週間の採取に向かう予定となっているのだ。
その植物採取にスノーを連れて行くことになったため、こんな過剰な反応を示しているというわけである。
「ヘスターがついてきてもどうしようもないだろ。ちゃんと面倒を見るから安心しろ」
「まだ家に居ていいと思うんだけどな。だってほら、赤ちゃんだし狩りをするには早いだろ……」
「その話はこの一週間で散々しただろうが。甘やかしすぎて自立できなくなったら、スノーのためにならないってな。だから、俺が森に籠る間は一緒に連れて行き、狩りの仕方を教えるんだよ」
「それは分かってるんですけどね……」
「ほら、早く行ってこい。また一週間後に会えるから」
ぐずる二人を無理やり外へと出し、まだ何も理解していなさそうなスノーを連れて、俺はカーライルの森へと向かうことにした。
準備は昨日の内に整えてあるため、森へ向かうだけとなっている。
カーライルの森へ行く今回の目的はというと、自家栽培のための苗ごとの採取と基礎能力を上昇させる五種類の植物の採取。
一番狙っていきたいのはジンピーの葉で、今回は新種の植物に手をつけるつもりはない。
それからスノーに狩りの仕方を教えることと……何と言っても、オークジェネラルがどうなったのかを確認すること。
目論見通り、オークジェネラルからオンガニールが生えてくれていればいいのだが――本気でワクワクするな。
ゴブリンの実で敏捷+2ということは、オークジェネラルなら相当な上昇幅が期待できる。
更には……。スキルも、もしかしたら付与されるかもしれないのだ。
【繁殖能力上昇】が何に影響されて付与されたスキルか分からないが、ゴブリンから吸収し付与されたスキルだとしたら、オークジェネラルからもスキルを吸収し付与されることとなる。
俺との戦いで見せたあの赤いオーラは、何かしらのスキルであることは間違いなさそうだし、戦った限りでは身体能力を向上させる能力である可能性も高い。
未知の有用なスキルに恋焦がれながら、俺は頬を一つ叩いて気合いを入れる
そして、俺の背負っている鞄から顔を出して楽しそうにしているスノーを連れ、カーライルの森へ向けて出発したのだった。