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状態異常無効になりまして

作者: 並中半平

異世界に転生した。

細かい描写は省くが、1つだけ特典をもらって剣と魔法のファンタジー異世界に転生した。


僕が選んだ特典は、状態異常無効(デバフ無効付き)だ。

効果については、読んで字の如くである。

麻痺や猛毒などの状態異常無効と、ステータスを下げるスキルやアイテム効果の無効化する。

ゲームの裏ボスが持っているような、チート級の能力だ。


いや、はずだった。


よくある中世風の異世界で、衛生管理や冷暖房もきちんとしてない時代で———21世紀においてもきちんとしているかは別として———免疫力の低い子供の僕は風邪を引いた。


頭が割れるように痛くて、咽喉が腫れて声が出なくなって、頭がボーっとする高熱に数週間

魘された。

勿論、鎮痛剤も解熱剤も、抗ヒスタミン剤もない。

普段は、いつも忙しそうにして、僕の面倒をあまり見ていない両親が甲斐甲斐しく世話を焼く姿は、ミュンヒハウゼン症候群を患ってしまいそうになるほどだった。

もし、そんな下らないことに労力を割けるだけの体力が残っていたらの話であるが。


ともかく、風邪を引いたのだ。

異常状態にならないはずの僕が、である。

疑問には思ったが、当時の僕はあまり深く考えず、体調が回復した喜びだけを感じていた。


それからしばらくは、大病もなく、流行病にも罹らず、成人を迎えた。

先述のとおりのファンタジー世界であるが、せっかくの異世界ファンタジー世界ではあるが、僕は冒険者にはならなかった。

金が無かったのだ。

金がないのなら、冒険者で一攫千金の夢を、と思わないでも無かったが、そもそも冒険者になるためだけのお金がない。

街まで行く乗り合いの馬車にも乗れないし、剣も防具も買えない。


そもそも、貨幣制度が僕の住む村にはなかったように思える。

娯楽があるわけでもないので、お金の使い所なんてものもなかったわけであるが。

まあそんなわけで、僕は生まれた町で畑を耕して暮らすことにした。

そして、村娘の1人と結婚して子どもも作った。




そんなある日のこと、うっかりしていたのだと思う。

気が付いたら、足元に蛇がいた。

1匹の毒蛇がいた。

村の住人であれば、まず近寄らないし、そいつがいないかを入念に確認する。

僕も異常状態無効を持っていたとしても、噛まれれば痛いだろうし、避けていたのだが、その日ばかりはうっかりしていたとしか言いようがない。


あっ


声を上げる間も無く、毒蛇は僕のふくらはぎに噛み付いた。


痛い。いや、痛くはない。


全く、僕に何の恨みがあるのだろうか。

最初はそんなことを思うくらいには、余裕があったが、すぐに痺れがやってきた。


麻痺は無効のはずなのに。


暑くもないのに汗がが止まらなくなってきた。

悪寒がするし、ついでに吐き気もする。

朝に食べた固くて黒いパンが胃から飛び出そうだ。


やばい。


そう思った時には既に手遅れだった。

僕は地面に倒れていた。

身体が痺れて動かない。

息も苦しくなってきた。


そして、僕は死んだ。








風邪をひくことは異常か


毒蛇に噛まれて毒に冒されるのは異常か


————死ぬことは異常か

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