真実
信じられない。
私の妻が、殺人容疑で逮捕された。
同級生の女性の夫と不倫の末の凶行。
相手は遊びだったのだが、妻は本気で、それが殺害の動機。
しかし、妻は否認した。
私は殺していないと。
私も妻を信じたかった。
だが、どうしても今までの彼女の素行が信じる思いを打ち砕く。
結婚して5年。
彼女は何度浮気をしたか。
それも決まって同級生の夫なのだ。
昔から他人のものが欲しくなってしまうタチだったようだが、これだけはまずい。
私は高名な弁護士を雇い、妻の無実を証明してもらおうとした。
しかし、彼女にははっきりとしたアリバイがない。
当日の事を良く覚えていないのだ。
弁護士も悲痛な顔で、
「奥さんの指紋、頭髪、ピアスが現場に残されています。無罪は難しいですよ」
彼は情状酌量を訴える戦術を提案した。
私はそれを拒んだ。
「私は完全無罪以外考えていません」
「そうですか」
弁護士は犯行当日の妻の足取りを調査すると言って帰った。
数日後、妻の裁判が開かれた。
証人席には、男がいた。妻のアリバイを証明するというのだ。
私はその証言に賭けていた。
「犯行当日、被告人は確かに貴方と一緒だったのですね?」
弁護士が落ち着いた声で尋ねた。男は弁護士を見て、
「はい。彼女は私と一緒に同じベッドに眠っていました」
私は驚愕した。こいつも不倫相手なのか?
「では被告人に犯行は無理なのですね?」
「もちろん。それに彼女は被害者を殺害するつもりなんてありませんでした」
男は得意そうに言った。弁護士は思ってもいないことを言われたらしく、動揺していた。
「それはどういう意味ですか?」
男は傍聴席にいる私を見て、
「彼女が殺したいのはあの男ですから」
妻の無実はこうして証明された。