8.【勇者SIDE】勇者、聖剣が使えず仲間を見捨てて逃げようとする
本日、三度目の更新です
「アラン、前方からリザードマンが3体来るッス」
魔導剣士の少女・ミーティアが、索敵スキルを駆使してモンスターの来訪を知らせる。
いつも通りの風景だ。
「任せておけ。一撃でエクスカリバーの錆にしてくれる!」
俺は不敵に笑い、腰に手を当てた。
『聖剣よ、我が求めに従って顕現せよ!』
普段のように祝詞を呟く。
それだけでユニークスキル『聖剣』が発動して、敵を殲滅するはずだったが――
「……あれえ?」
不調は突然おとずれた。
聖剣は呼びかけに答えず――
急激にやってくる全身の倦怠感。
万力で締め付けられているような激しい頭痛。
「ぐああああ……」
目の前にモンスターがいるにも関わらず、俺は思わず膝をつく。
「アラン! ――だから言ったッス!」
ミーティアが、俺を庇うように前衛に立つ。
「魔力切れッスよ。そんなに大技を連発してたら、最後まで魔力が持つ筈が無いッス!」
「馬鹿を言うな! こんなにレベルが上がったのに、魔力切れなど起こる筈がないだろう!?」
リザードマンと戦う彼女が構えるのは、何の変哲もない短剣。
ミーティアの得意戦術は、魔剣による魔法と剣術の組み合わせである。
魔力の籠らない短剣は、彼女に相応しくない武器だった。
「おい、貴様! 魔剣はどうした?」
「あんなもの普段使いできる筈が――キャッ!」
相手は狂暴なAランクのモンスターだ。
会話している隙を見逃さず、リザードマンが剣で斬りかかった。
パワー負けして、あっさり吹き飛ばされるミーティア。
「おい、たるんでるぞ! さっきまでは楽勝だったではないか」
「魔力さえあれば、こんな奴ら遅れは取らないッスよ。だからイシュア様抜きで攻略なんて無謀だって言ったッス!」
俺の方をじーっと覗き込むリザードマン。
もはやこちらを大した脅威として見ていない。
目の前の獲物を淡々と狩る目だった。
「うわあああああああ」
生まれて初めての挫折だった。
俺は一目散に逃げ出した。
パーティメンバーを置き去りにして。
「リディル、付いて来い! 俺を守れ!!」
「ええ!? ま、待って! ミーティアがまだ戦ってる!」
「このままだと全滅だ。勇者の生存が何よりも大切だろう!!」
賢者や魔導剣士では代わりにならない。
必死に言い募るが、リディルはその場を動かない。
「戦ってる仲間を見捨てられる筈がない! そんな判断をするあなたに勇者を名乗る資格はない!」
いつもは眠たそうに、感情を表に出さないリディル。
しかし今は普段とは打って変わって、燃えるような目でこちらを睨みつけてきた。
「私は最後まで諦めない。皆で、帰る!」
「おい、ふざけるな! 戻ってこい! 無防備な勇者がここにいるんだぞ――!」
恐怖から必死に呼びかける。
リディルはこちらを一顧だにせず、リザードマン相手に押されているミーティアのもとに飛び出していった。