表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/87

5.マナポーター、行商人を襲っているAランクモンスタ―を一瞬で浄化する

 しばらく街道に沿って歩いていると、


「助けてくれぇぇぇぇ!」


 と悲鳴が聞こえてきた。


「イシュア先輩!」

「うん、ただごとじゃないね」


 僕たちは声の聞こえてきた方に向かって走る。

 すると大量の商品を積んだ行商人を乗せた馬車が、巨大な獣型のモンスターに襲われていた。


「雇った護衛がやられてるみたいだね。すぐに助けよう」

「先輩はお人よしですね。分かりました!」


 アリアは杖を取り出し、狼型のモンスターに向けた。

 獰猛な牙と並外れたパワーが特徴的なAランクの難敵――多くの初心者冒険者を葬ってきた凶悪なモンスターである。

 しかし隣にいる少女の敵ではなかった。



「魔力は僕が注ぐ、ぶちかましてやれ!」

「共同詠唱ですか!? 分かりました。日頃の鍛錬の成果、お見せします!」


 やけに気合を入れたアリア。

 彼女は詠唱もせずに、いきなり空中に魔法陣を描き出した。


(これは――最上位魔法? なんで当たり前のように詠唱破棄して、涼しい顔で多重詠唱のエンチャントまで付与してるの!!)

(は、張り切りすぎだよ。アリア~!?)

 

 アリアは目を閉じて集中していた。

 たかだかAランクモンスターを相手にするには、オーバーキルにも程がある大魔法である。


(これ……正しく発動するとヤバイ奴だよね?)


 僕は体内に蓄えられた魔力を解放する。

 マナポーターとしては天性とも言える体内から湧き出してくる無限の魔力。

 それを注ぎこむのは、アリアの生成した魔力術式の中だ。


(魔力を調整して威力を抑えないと……)


 あえて魔法陣と反発する属性の魔力を流し込んだ。

 出来るだけ威力を抑える方向に。

 ここの調整により、発動する魔法の威力に大きな違いが生まれるのだ。



「オッケー、アリア! 完璧だ!」

「はい! 二重詠唱デュアルスペル、イノセント・シャイン!」


 凛とした声が響き渡る。

 数十メートルにも及ぶ光の十字架が現れ、周囲の悪しきモンスターを浄化していった。

 聖なる極光にあてられ、周辺のアンデッド型モンスターもついでに成仏させられていった。


「先輩先輩! どうですか、私の新魔法は!」

「やり過ぎに決まってるよね!? ここら一帯を天国にする気かと思ったよ!」


 あたりを見渡すと、なんかキラキラ光り輝いていた。

 これが聖女の奇跡か――旅してるだけで聖地が増えていきそうな勢いだ。



「えへへ、久々の先輩との共同詠唱だと思うと張り切っちゃって!」


 てへっとアリアは笑った。


(信頼されてるのは嬉しいんだけど。無茶振りするよ……)


 魔法の威力調整も、広義ではマナポーターの役割であると僕は考えていた。

 発動者が最大限のパフォーマンスを発揮できるようお膳立てするのが、マナポーターにとって最も大切なことなのだ。


「アリア、また腕を上げた? あの規模の魔法でデュアルスペルなんて、見たことないよ」

「どんな術式を用意したところで、私には魔力不足で発動できません。先輩がいてこそです!」


 アリアの目はキラキラと輝いていた。


「とっておきの術式だったのに。一瞬で理解して、ついでのように威力調整と最適化かけるとか、先輩はどんな超人なんですか!」


「アリアはいつも大げさです。それがマナポーターの役割ですから」

「そんな芸当が可能なのは先輩だけです! ……むう。先輩はいつだって簡単に先に行っちゃいます――ずるいです」


 むう、とむくれるアリア。

 勇者パーティでは一度も見せてこなかった子供っぽい仕草を見て、僕は少しドキリとした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ