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2.【勇者SIDE】皆から好かれるイシュアに嫉妬して追放した勇者は、これからは自分の時代だと満足感に浸る

「ふっはっは、俺様の天下だ!」


 俺――アランは、ようやく目障りな邪魔者を追放した満足感に浸っていた。



 魔力回復アイテムは、非常に高価である。

 魔力切れ対策のためにアイテムを購入するぐらいなら、前衛でも働けるマナポーターを1人雇った方が、全体コストを抑えられる程度には高級品なのだ。

 だからこそ「マナポーター」というジョブは、魔法の才の無い者でも成れる魔法系ジョブとして成り立っている。


(落ちこぼれを助けるための、落ちこぼれによるジョブか。くだらんな)


 たった1日の活動で魔力切れするなど、そもそもが軟弱すぎるのだ。

 魔力供給が必要な雑魚に、そもそも魔力ジョブたる資格はない。



「今の俺たちはレベル39。ここまで魔力量が増えたのだ。あんな奴を必要とする日など、来るはずが無いではないか!」


 「勇者」というジョブを手にして、国から正式な勇者として認められたとき。

 天にも昇る気持ちだった。

 魔王を倒して世界を救った英雄として、全大陸の英雄になるのだと。

 輝かしい未来を疑いもしなかった。


 栄えある勇者パーティ。

 聖女・大賢者・魔導剣士という俺好みの可愛い少女たちだった。

 両手には収まらない華ある旅路、勇者の俺様にはピッタリだと思った。


 しかし国王はそれに加えて、マナポーターを連れていけと命令した。

 俺のことよりも、マナポーターごときを信用している国王の発言。



(ふざけやがって、俺の魔力量はピカイチだ!)

(魔力切れなど、これまで一度も起こしたことは無い!)


 魔力切れ対策という名目で参加したマナポーターのイシュア。

 最低限壁役ぐらいこなすかと思えば、彼は戦いを手助けすることさえ無かった。 問いただせば「普段から魔力を供給している」と大ボラを吹きながら。


 おまけに――



「イシュア様のおかげで、今日も極大魔法が使い放題のお祭りでしたッス! マジでぱねえッス! イシュア様はウチにとっての救世主ッス!」

「大げさです。とても素直な術式で、こちらこそ助かっています」


(な~にが救世主だ! この詐欺師が!!)


 俺たちは、魔力ジョブの中でもエリートの集まりだ。

 落ちこぼれのイシュアに、供給できる魔力量ではないのだ。

 魔導剣士と和やかに話し合うイシュアを、俺は歯ぎしりしながら睨みつけた。


 さらには――



「ねえねえ、イシュア先輩! 私は私は? ちゃんとパーティの役に立ててましたか?」

「とっさに張った魔バリアが良かったよ。あれで魔力を注ぐだけでブレスを防ぐ盾を生み出せた――ナイス判断だったよ」

「もう。それって先輩の判断が、バケモノみたいに早かっただけじゃないですか……」


 聖女とイシュアは、同学院の先輩・後輩だったと言う。

 あんな落ちこぼれを先輩に持って大変だったな、と言ったら「あなたに先輩の何が分かるんですか!」と、凍りつくような眼差しで睨みつけられた。


(……あれは怖かった)


 ぶるぶる震える。

 何故かイシュアの周りには、パーティメンバーが集まっていた。

 みんな俺好みの可愛らしい美少女だったのに。



(聖剣・エクスカリバーだぞ!)

(世界にたった1つのユニークスキルだぞ!!)


 ……だから追放した。

 このパーティは俺のものだ。

 存在が目障りだったのだ。



(あの男はもう居ない!)

(これで誰もが、俺の言うことを褒め称えてくれるはずだ!!)


 翌日の朝。

 俺は輝かしい未来を疑いもせず。 


「アリア、喜べ! 明日からはいよいよAランクのダンジョンの攻略に向かうぞ!」


 ――よりにもよってイシュアを「先輩」と呼んで慕う聖女に声をかけてしまったのだった。

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