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16. マナポーター、チンピラ冒険者に絡まれ返り討ちにする

本日、二回目の更新です!

「おい! ちょっと待てよ!」


 冒険者登録を終えた僕たちに、ちょっと待ったと声がかけられる。

 視線を向けると目つきの悪い筋骨隆々のおっさんが、底意地の悪い笑みでこちらを見ていた。



「うわあ。ダミアンさんだ」


 受付嬢が、思いっきり嫌そうな顔で呟いた。


「……冒険者ですよね?」

「はい、Cランクの斧使いです。腕はたしかなんですけど、素行が悪くて……。クエストでトラブルを起こすことも多くて、困ってるんです」


 受付嬢がひそひそと僕に話しかける。

 ダミアンは手にした武器を脅すように見せびらかしながら、言葉を続けた。



「マナポーターごときが、俺様とおなじCランクだと? いつからこのギルドは、冒険者ランクが機能しなくなったんだ!?」

「な!? 何も知らずに、先輩のことを悪く言わないで下さい!」


 アリアが果敢にも言い返すが、ダミアンはまるで堪えた様子もない。


「聖女の嬢ちゃんも可愛そうに。こんな弱っちい奴と一緒じゃ、いつまで経っても昇格は望めないぜ?」


 ゲスな笑みを浮かべるダミアンたち。

 アリアは気丈にもにらみ返したが、その手は小さく震えていた。

 無理もない。


(飛んできた火の粉ぐらいは払わないとね)



「ダミアンさん。要するに僕が実力を示せば良いんですよね?」

「ああ、そうだが……俺は戦いもしないマナポーターてジョブが大嫌いでね。やっぱり男なら、腕っぷしで力を示して貰わないとなあ?」


 出来ないだろうと、言わんばかりのダミアン。

 マナポーターの役割は魔力ジョブへのマナ支援である。

 腕っぷしは何も関係なく、言いがかりに等しいのだが、



「良いでしょう。決闘でもしますか?」

「ガキが! 舐めてんのか!」


 冒険者同士では、それが手っ取り早い。


「イシュアさん、ダミアンはあんなんでも腕は一流です。無謀ですよ!」

「受付嬢の言うとおりだ。Cランク冒険者をあまり舐めないことだ。泣いて謝るなら、今なら許してやるぜ?」


「大丈夫です。見れば相手の実力はだいたいわかりますから」

「何だと……!」


 僕は少しだけ好戦的になっていた。

 可愛い後輩のアリアを怯えさせたこと――その報いはしっかり受けて貰おう。




◆◇◆◇◆


 冒険者ギルドの裏にある闘技場で、僕とダミアンは睨み合っていた。

 決闘騒ぎを聞きつけて、冒険者たちもこぞって観戦に来ている。


「超期待の新人なんだって。でもマナポーターなんだろう?」

「なんだって決闘騒ぎに? ダミアンの裏方嫌いは有名だけど、あまりにこれは……」


 ひそひそと交わされる会話。

 こちらを気の毒そうに見る視線も多い。



「武器は何をお使いになりますか?」

「いらないです。僕の武器は――この魔力ですから」


「てめえ! 舐めんのも大概にしろよ!」


 バカにされたと思い激昂するダミアン。


(別に舐めてる訳じゃないんだけどね)

(付け焼き刃で武器を振るっても、勝てるはずがないし)


 そうして戦いが始まった。



「一瞬で終わらせてやるよ!」


 自信満々に言ってただけあって、ダミアンは巨大な斧を抱えたままかなりのスピードで突進してくる。



(だけど……遅い!)


 僕は体内の魔力を解き放った。


「な、なんだあれ……!?」

「濃すぎる魔力が――可視化されてるのか!?」


 解き放った魔力をコントロールして、一定の密度となるよう周囲に展開。

 僕の周りに半径20メートルほどの薄青い空間が生み出される。



「てめえ! なにしやがった!」

「マナリンク・フィールド。高濃度のマナを展開して、魔力回復力を高める技なんだけど……慣れないとキツイよね?」


 アリアですら、慣れるまでは吐き気に襲われると言っていた。

 物理特化ジョブのダミアンにとっては、その比ではないだろう。



「汚えぞ、こんな真似!」

「これが僕なりの戦い方です」


 ダミアンは、苦しそうに頭を抑えて座り込んでしまった。


 慣れていない者が高濃度のマナを浴びると、激しい魔力酔いを引き起こす。

 頭がぐわんぐわんと揺れ、地獄のような苦しみに襲われていることだろう。



「どうする? まだ続ける?」

「舐めんな!」


 どうにか気合で起き上がり、よろよろと武器を構えるダミアン。


(意識を奪わないとだめか)

(それなら――!)



「マナ・オーバーフロー!」


 僕はダミアンに勢いよくマナを注ぎ込む。

 マナの過剰供給により、さらに強烈な魔力酔いを引き起こし、一気に意識を刈り取るのだ。



 バタリ


 すでに高濃度のマナフィールドで消耗していたダミアンは、耐えきれずアッサリと倒れ込んだ。



「し、勝者イシュア!」


 呆然とした様子の審判の声。

 おそるおそると言った様子で、勝者を宣告した。



「すげえ! あのダミアンが手も足も出ずに倒されたぞ!!」

「周囲の魔力濃度を高めて攻撃って、あり得ないだろう!」

「あんな戦い方見たことねえぞ!?」


 やがて静まり返っていたのが嘘のように、一瞬遅れて大歓声が響き渡るのだった。

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