12.【勇者SIDE】ギスギス勇者パーティ、無茶を咎められて仕方なくアクシスの村に向かう
Aランクダンジョン攻略に失敗した俺は、ダンジョンから出るなり反省会を開いた。
(道中の敵は、ほとんど俺が倒した)
(となればレベルは間違いなく足りている――原因はパーティメンバーだ!)
「今日のダンジョン攻略の失敗は貴様たちのせいだ。これ以上、足を引っ張ることは許さんぞ!」
「はあ!? 戦う必要もない敵に突っ込んで行って、真っ先に魔力切れで倒れたのはアランじゃないッスか!」
生意気にも言い返してくる魔導剣士のミーティア。
「黙れ! ……あれは、魔力切れではない。ちょっとタイミング悪く頭痛に襲われただけだ!」
あれはちょっとした偶然だ。
あの落ちこぼれの言うことが、真実であるはずがない。
「パーティを全滅させかけて、まだ分からないッスか!?」
「やめよ、ミーティア。こんな奴、相手にするだけ無駄」
「待て! 貴様らには、言いたいことが山ほど――!」
「……後にして。わたしもミーティアも疲れてる」
リディルは、ミーティアを連れてテントに向かう。
俺のことなど眼中にないと言わんばかり。
(クソッ。なんだって言うんだよ)
(優秀な仲間が加入したら、真っ先にクビにしてやるからな!)
こんなところで足踏みしていられない。
明日には必ずAランクダンジョンを攻略してみせる――そんな決意とともに、俺も遅れて眠りにつくのだった。
◆◇◆◇◆
「今日こそダンジョン攻略を成功させるぞ!」
「自殺志願者なの? 2日連続でダンジョンとか、さすがに無理」
翌日の朝。
勢いよく宣言した俺に冷や水を浴びせたのは、昨日から機嫌が悪いリディルだった。
「黙れ! 勇者パーティの立場を失いたいのか?」
カッとなって叫んでしまい、凍り付いた空気に気付く。
眠そうなリディルは、みるみるうちに無表情になった。
「まだ言う? わたし、イシュア様の居ないこのパーティに未練ないよ」
「――なんだと!?」
「命がけで助けたミーティアにお礼の1つも無し。何様のつもりなの?」
溜まっていた不満が噴出したのだろう。
ミーティアの怒りが炎だとすれば、この少女の怒りは冷たい氷。
「ふん。杖を振り回す賢者など、こっちから願い下げだ! そんなに言うなら――」
「あなたに付いていったら、いずれは命を落とす。あなたは勇者に相応しくない」
リディルの目は、本気も本気。
あからさまなパーティ崩壊の始まりであった。
(いずれ切り捨てるつもりだったが……今はまずい。まずいぞ!)
もともとは5人も居た勇者パーティだ。
ここでリディルが抜けてしまえば残りは2人。
まるで大きなトラブルがあったようではないか。
「はいはい! どっちも冷静になるッス。ウチもしっかり休んで体制を整えるのに賛成ッスね」
「……まったく。ミーティアは優し過ぎる」
幸いにしてミーティアが間に入ることで事なきを得た。
しかしダンジョンに再挑戦はせず、近くの村で休憩を取る方向に話が進んでいる。
その判断を覆すだけの信頼を、俺は勝ち取っていないのだ。
「仕方ない。ここから近くの村と言えば――アクシスの村か」
「ヒューガ・ナッツが特産品らしいッスね。楽しみッス!」
「ふむ、勇者パーティが立ち寄るとなれば、きっと様々なものが献上される。ど田舎であまり期待できんがな」
「……はあ。そうッスね」
やる気のない相槌。
リディルは、興味なさそうにぽけーっと雲を眺めていた。