踏切
カンカンカンカンカンカンカンカンカンッ!
大学生の夏、友人が住むアパートへ泊まった時の出来事。
「うるせぇなぁ…」
友人が住む部屋はアパートの2階。俺たちは深夜遅くまで酒を飲みながら、ゼミの愚痴や就職活動の話題で盛り上がっていた。
時間は深夜3時過ぎ。気がつくと俺は、床に寝転がったままの状態で眠っていた。外から踏切の警報音が聞こえてくる。
カンカンカンカンカンカンカンカンカンッ!
「はぁ…今何時だよ…」
こんな時間に走る電車が存在するのだろうか。たぶん回送電車か踏切の点検を…
カンカンカンカンカンカンカンカンカンッ!
静かな夜に、大きな警告音が鳴り響く。
「あぁ…またか…」
近くで眠っていた友人が目を覚ました。友人は立ち上がると、窓の方へ向かってゆっくりと歩きだした。
「おい、どうしたんだよ」
「いや…気にしないでくれ…よくあるんだ…」
友人が窓の鍵を外した。そしてそのまま勢いよく窓を開いた。
カンカンカンカンカッ…
踏切の警告音が止まった。俺は窓に近寄ると、外の様子を確認した。
「あれ?電車…」
アパートの近くに、小さな駅と踏切があった。駅の電灯は消え、線路は伸びきった草で荒れ果てている。
「ここ、廃線なんだって。でも来るんだよ、電車…」
友人はそう呟くと、何事もなかったかのように窓を閉めた。