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反逆のMYTH【シーズン3】~表舞台じゃ誰も敵わない最強の力を妬まれるだけなので、死を偽装した懸賞金を元手に新天地で闇金や夜の店の経営者としてアウトローの道を極めます~  作者: 公月奏
覚醒! 光もたらす者・神に似たる者~異世界パート

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46. 〇「逃走か、闘争か」

 ――頭がボーッとする。全身至るところがすごく痛いし特にある部分の、じんじんとした熱との相乗効果でさらにうずいて仕方ない。

 天井をただじっと見上げ始めてからまだそんなに経ってないだろうけど、何時間もこうやって寝そべってるような感じも同時にする。


「あっ――」


 その時洞窟の中の気流が動いた。湿った唇と胸に太ももを空気が撫でる度にスースーして、心地よさまで覚える何とも不思議な気分。

 例えるなら地割れから噴出したマグマが降り注いで焦土と化した大地に涼風の吹くような、そんな矛盾した世界に大の字になってる。

 さっきの……ヤバかったなぁ。まるで天使に上を悪魔に下をと胴体を分断されて、それぞれ天国と地獄に連れてかれたみたいだった。


「――」


 フフッと口元が自然に綻ぶのを感じ、そしてググッと歯に力を込める。まさか私が、敵の見てる前であんなことされちゃったなんて。

 やがて生臭い鉄の味とともに赤い河が口内で氾濫をし始める。だけどためらいはない。これに耐えさえすればすべて忘れられるから。


(アンタさァ。“どうして何もしてない自分がこんな目に”だなンて思ってない? それは違う。“何もしない、できない”から悪いのよ)

(“考えを放棄して”すべてを他人頼み。テメェの無力と怠惰が招いたツケなの)


 不意にリリスの言葉が脳裏をよぎる。そうだよね、私なんて猫の手よりも無力な存在なんだもん。


(無能な小娘のまま“自分を変えられなかった”。因果応報、自業自得って話よ)


 そう、さっさと逃げればよかったな。余計なことさえしなければ、こんな目にも遭わずに済んだ。


 ……


 いや、本当にそうなのかな。こうなるべきだったのかな。


「何もしない、できないのが悪い――? ううん、でも私ちゃんと“した”し“できた”じゃない――」


 怖くてたまらなかったのに行動した。そう、ルーシーを助けるために。なぜそれが悪いことなの。

 違うよね。悪いのはいつだって他者を一方的に傷つける方。因果応報、自業自得というのなら、裁かれるべきはあいつらじゃないの。


(“因果応報”。他者に牙むけば刃を向けられ、業としてどこまでもつきまとう)


 その時頭に声が響いた。さっき夢で聞いた“私”のものだ。


(それが我が力【天運】。あなた方の攻撃が、私を傷つけることは決してない)


 あの時私はふたりの女性と対峙してて、なんかとてもズルイ技で圧倒してたのも微妙に覚えてる。

 言われた言葉もおぼろげながらも内容自体はわかったし、かくいう私も今まで思いは同じだった。


(イカサマやペテンによる一方的蹂躙、それでいて己の傷つくは御免蒙るか。さて悪とはどちらか)

(あたくしに言わせればそんな性根通りの手前勝手なる力。幼子の弱いもの苛めと大差はなしです)


 何の苦労もなく得た能力で最強無双のやりたい放題、自分を虐げてきた陽キャに復讐してざまぁ♪ その後はのんびりスローライフ!

 なんてのは所詮ただの逃避、私たちは現実に生きる人間でしかないから。けどそんなのきっと皆わかった上で空想に救いを求めてる。

 この世はこんなつらい現実を前向きに生きられるほど強い人ばかりじゃない。異世界(もうそう)でぐらい好きな思いをしたっていいはずだよね。


「そもそも――私は、このゲームで何がしたかった――?」


 そう、気心の知れた仲間たちと一緒にいられればそれでよかったんだ。NPCだとしても友達と呼べる存在ができてすごく嬉しかった。

 ああ、何だか急にムカッ腹が立ってきたな。どうしてやられっぱなしで我慢しなきゃ、なんで舌なんて噛まなきゃならないんだろう。


「そうだよ――違う、このままでいいわけがないよ――!」


 だから、ごめんなさい、私のこんな考えが間違っていました《力を下さい》。

 夢に出てきた私みたく、今すぐあの最強な存在にして下さい《あれが私の未来の姿なのならば》。

 あいつらは皆を奪った、絶対に絶対に許せない《このままでいいわけない》。

 ようやくわかったんだ、弱くちゃいつまでも虐げられるだけだって。なら強い方がいいに決まってるよね《その力でやり返すんだ》。

 これで覚悟は決めたよ、だからお願い《チートスキルで無双なんかただの弱いものいじめだなんてもう、絶対思わないから!!》!!


「あっ!?」


 心でそう吐き出した瞬間突然身体がふわり浮く。手足にくさびを打たれたようだったのが腹筋マシンみたく簡単に立ち上がれたのだ。

 こっ、これは。ふと目をやった右親指から光り輝く粒子、みたいなモノが次々漏れ出て、くる??


『敗北、理不尽、辱め。忌まわしきはすべて“無の彼方”に』


 それを浴びる度裂かれた服や下着の切り口と、舌の傷までもが瞬く間にふさがり心まで軽くなる。


「わっ!?」


 さらに残る指がカッ! と強烈に閃いた。光線がそれぞれ4方向へと放たれて、命中した先から、


「うう……私は、一体?」

「アレ……無事、なの?」

「……!? ∑( ゜д゜ )」

「傷が……治っている?」


 ウソ。岩壁に沈んだアンジュとパフィが、首を折られたステラが、お腹を刺されたエブリンが皆――何事もなく起き上がってきた!?


『再びの正解です。“逃走(じけつ)”よりも“闘争(たいけつ)”を選び取ることで得た【忘却の光】。すべてを元へ戻す力』

『今こそ逆転の刻。そしてこのあとに訪れる最後の選択も、期待していますよ』

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