41. 〇「地獄の一丁目」
今だ、と隙をついてルーシーのもとへと、昔お父さんに2人プレイさせられたバイオハザードを思い出しながら走る。
喰われれば即死のワニがウヨウヨいる湿地帯を進むステージをふたりしてビビりながらやったっけと、そんな心境で。
「あっ、あの女め何を!?」
よし、結局気づかれはしたけど見事間に合い無事薬を飲ませられた。
「くっ、ありがとうミカエル――」
飲めば臓器の損傷が、ふりかければ外傷も瞬時に消える。さすが最高級の薬だ、あれだけの傷がたちまち治るなんて。
「チッ、さすがは名うての冒険者か。いいモン持ってやがら」
「ベリィ、アンタは大人しくしてて。脚の傷が深すぎるから」
ひとまずルーシーは完全復活を果たした。対し残る敵ふたり、リリスとマールムの実力は未知数。
でも見るからに武闘派な外見で一番強そうなベリィにあれだけの重傷を負わせたんだから、2対1でも何とかなるかも?
いや、逆にそうでなきゃ終わりだ。これ以上回復はできないんだし。
「次はあたしが相手よ。さあさあっ、また先に撃たせたげる」
リリスがルーシーの周りを静かに拳法みたいな隙のない動きで歩く。そうして間合いを計りながら攻撃を誘う算段か。
“ヒュオオオ”
まただ。対し彼が再び魔法を発現させるも、最初のあのツララみたいな弱々しい短剣が出るのみ。
さっきはベリィの脚を粉砕しかけたり体内から切断寸前までいったのに、あのすごい威力とは目も当てられない差だ。
「やっぱりねぇ。もしも自由自在に撃てるンなら、とっくにあたしも同じ目に遭ってるもんねぇ?」
リリスが笑う。そうだよ、どうしてその力を使わないの??
「大した修行をしなくても、使い方に制約をかければ効力が飛躍的に上がるって言ったわね。確か」
「……」
「アンタの場合なら専ら“反撃”の用途。どう、図星でしょ?」
「くっ」
「すさまじい力を発揮する代わりに“自分から行使すれば”そんな程度。ならこっちが何もしなければまったく怖くない」
続けてリリスは「だから一撃で終わらせれば問題なしよね」と笑い、
「も〜らい♡」
「うっ――!」
狙った獲物をひと呑みにするヘビのように、ルーシーの首に手を回し唇を強引に奪い取ったのだ。
「うむむっ――うっ、ウウウッッ」
「ウフフッ――ごちそうさま♡♡」
「アガガッ――クッ、アアア、ッ」
キス、された彼の様子がおかしい。頭を抱えその場に屈み濁った声でうめく。いっ、一体何が??
「ンでお嬢ちゃん、アンタ馬鹿?」
「えっ」
「言ったはずよ。あたしの【闇魔法】はあらゆる感情や感覚を“覆い隠して”下僕にできるってねぇ」
まさか、それってと考えてる間にルーシーがゆっくりと起き上がる。
「ウヘヘヘヘ」
振り返ったその顔がニタニタ笑い、脚が私の方へとヒタヒタ歩を進める。その様子はさっきのゾンビ集団そのものだ。
「“初めて”をたっぷり可愛がってもらいな。キャハハハッ!」
そっ、そんな。嘘でしょ――っ。
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