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きみとぼくの逆転性理論  作者: 咲稚涼
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休日はおでかけ!

登場人物の紹介


唄蘭(うら) 普段の姿

あだ名 うららん

癒蘭(ゆら) 女装の姿

あだ名 ゆららん

〔side 尋杜〕



「んー・・・・今日はいい天気だなぁ。っと早く準備 しなくちゃ!」


朝一番に部屋のカーテンを開けるとまぶしい太陽に光が差し込んできた。今日は土曜日。本当はのんびりと陽の光の当たるベッドで日向ぼっこをしていたいのだが、友達の唄蘭(うら)と買い物に出かける約束をしているのでそんなことをしている暇はない。とりあえず朝食を食べ、お出かけ用の服に着替える。せっかくの休日だし、可愛い恰好をしていこう。

待ち合わせていた駅に着くとまだ唄蘭は到着していないようなので、そのまま待っていることにした。


「ひろごめーん! まった、かな?」


ひょこりと顔を覗かれて驚きに一瞬固まってしまった。目の前にいたのは女の子だったのだ。


「え、う、うららん・・・・だよね?」

「あーもう! そろそろ私にも慣れてよね。ゆららんだってば!」


ぷんぷんと怒ったようなしぐさをするのは唄蘭の双子の姉。・・・・ではなく、唄蘭が女装をしただけだ。 以前、割と仲のいい友達である晁葵に、この癒蘭の姿を見られてしまったときにとっさについた嘘を、 今も守り通しているのだ。実際そうでもしないと多方面に女装をしていることがバレてしまうので、嘘をつき続けるしかない。


「ごめんね、ゆららん。昨日までうららんはそんな こと言ってなかったからびっくりしちゃった」

「あ、そうだったっけ。今度からひろと遊ぶ時は毎回この格好で来るから! よろしくね」


にっこりとしながらなかなか驚くようなことを言っている、が普段から女の子の格好をしている自分も同じようなものだし、それについて特にいう権利はない。


「うんわかった。じゃあいこっか」


こうして見た目は可愛らしい女の子二人の、中身は男の子二人の、ちょっと変わったショッピングが始まった。




それから約2時間後。数着の洋服を購入した二人は、お腹が空いたということでフードコートに来ていた。


「んん~やっぱりドーナツは美味しいなぁ!」


目の前の癒蘭は美味しそうに口いっぱいにドーナツを頬張っている。ラッキーなことにセールをやっていて、一緒に行った尋杜もウキウキしながら3つも買ってしまった。


「あ、そういえば聞きたかったんだけど・・・・なんで僕と遊ぶ時はうららんで来るの?」


別に唄蘭でも問題はないと思うのだが、いままでもほぼ、今度からは確実に毎回と言っていたが、それがずっと気になっていたのだ。


「えっと・・・・なんていうかひろがいつも可愛いから、うららんだと恋人同士だと思われるじゃん?

そうしたらひろの迷惑になっちゃうし。

それに! 私のことちゃんと知ってるのもひろだけだから気兼ねなく可愛いお洋服着て可愛いお店に行けるもん!

こんな素敵な事ってないよね!」


その時の癒蘭の笑顔はとてもキラキラと輝いていて、なんとも幸せそうだった。


「別に迷惑じゃない、けど・・・・

うら、じゃなくてゆららんが僕と遊んで楽しいなら僕も嬉しいな」


えへへ、とはにかむように笑いかけた。そんなことを話していたらなんだか気恥ずかしくなってきて二人して照れたようにしながら残りのドーナツを食べた。心なしかドーナツがいつもより甘い気がした。


「あれ・・・・尋杜?」


不意に後ろから聞き覚えがある声で名前を呼ばれ、どきりと心臓が跳ね上がった。


「美華ちゃん? ぐ、偶然だね。あ、お買い物かな?」


思わぬ人物の登場に驚きを隠せず、どもってしまった。普段美華は稽古をしていることが多いのでこんなところで会うとは思っていなかったのだ。


「うん、少し買わないといけないものがあってね。 ところでその子は・・・・?」


美華が目を向けたのは癒蘭だ。これは何というか全力で癒蘭の事を守らなくてはいけない。恐らく美華は人に言いふらしたりはしないだろうが、唄蘭は知られたくないと思っているはず。それなら友達として守ってあげるべき、だ。


「えっと、ね、この子は唄蘭の双子のお姉さんで、 癒蘭っていうんだ。今日は一緒に買い物に来たの」


「は、初めまして、かな? 美華さん、癒蘭です〜!ゆららんって呼んでね!」


少し高めの声で返事をする癒蘭はどこか緊張した面持ちだ。それもそうだろう。それなりに親しいし、 下手したらバレてしまう。


「え? あのうららんのお姉さん? 初耳だ・・・・よろしく。」


美華は手をすっと差し出して癒蘭に笑いかけた。美華のこの社交性の高さに感動していると美華と目が合った。


「じゃあ尋杜、私は先に行くね。急に話しかけて悪かった。楽しんでね、癒蘭さんも」

「あ、うん、また明後日学校でね!」


さっと踵を返してどこかへ歩いて行く美華の背中に声を投げかけた。なんだか美華の様子がおかしかった気がするのは気のせいだろうか・・・・


「・・・・はぁ~。ひろありがとう! ほんと助かったよ〜!」


安心したのと緊張の糸が切れたらしい癒蘭に、ぎゅうと抱き着かれた。


「わっ・・・・もう、びっくりするってば。それにしてもこんなところで美華ちゃんに会うなんて思わなかったなぁ」

「そうだね。さーて! まだ見たいものもあるし、 そろそろ私たちもいこっか!」


お昼を食べてすっかり元気になったらしい癒蘭は、 また随分とウキウキした様子で席を立った。それに続くように自分も立ち上がる。


「うんそうだね、いこうか」


こうして二人は休日を楽しんだのだった。

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