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異世界インスタ  作者: 五寸
第4章 狂宴のモンテローエ
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エピローグ

「すぅー・・・はぐっ!? いったぁ~・・・」


 突然脳天に衝撃が走り、続いてじんわりと広がってきた鈍い痛みで目が覚める。もぉ~何なの・・・?

 若干イライラしながら寝ぼけ眼で周囲をまさぐってみると、固く冷たい床がぺたぺたと手のひらに当たる。どうも寝ぼけてベッドから落ちたっぽい。朝からツイてないなぁもう。


「あぁ~、ネクの太ももが欲しい・・・」

「寒気がするようなこと言わないでくれるかしらぁ」


 固い床に頬ずりしながら独り言をつぶやくと、隣のベッドからちょっと上ずった返事が聞こえてくる。

 どうやらあーしが床に落ちた音で目が覚めたらしく、寝ぐせ満開のネクがシーツで体を隠すようにしてあーしを見つめていた。そこまで引く?


「あー、おはようネク。ルビーちゃんは?」

「おはようアカネちゃん。あの子は一足先に起きてたみたいねぇ。まぁ大方お腹を空かせて起きたんでしょうけど」

「そういや昨日の朝以来食べてないもんねー。あーしたちも準備したら食べに行こっか」

「そうしましょうかぁ」


 とりあえず朝ご飯の予定を決めて、あーしたちはだるい体をゆっくりと動かしながら身支度を始める。髪のセットはネクに譲っとこうかな。

 ふらふらと洗面台に向かったネクを見送ってから部屋のカーテンを勢いよく開くと、既に活気づいたモンテローエの街並みが朝日と共に飛び込んで来る。


 昨日、あーしたちは風神様と協力して、この街を守った。

 今は街全体を覆うような湯けむりも見当たらず、温泉の温度はもちろん火山の状態も全部元通りになっている。


 あの戦いの後、風神様はあーしたちを地上に届けるなり姿を消してしまい、あーしたちもアドレナリンで誤魔化していた疲れが爆発し、寝そべったまま動けなくなってしまった。

 そこからは駆けつけてきた騎士団に助けられ、後の処理は引き受けるからと温泉に運ばれた後に宿へ戻って爆睡。そして今に至る。


 朝ご飯を食べ終わったら、あの後どうなったかギルドに聞きに行こうかな。


「アカネちゃーん、こっち空いたわよぉー」

「はーい」






「あっ、こんな所にいた」

「ん? おうお前ら、遅かったな」


 朝ご飯を終えてギルドまでやって来ると、入口付近の足湯でくつろいでいたゼルと合流する。相変わらずお湯に足届いてないけど。


「先行くなら言っといてよ」

「書置き残しといたろ」

「部屋違うから!」


 あーしのツッコミに悪びれる様子も無く謝ってくるゼル。まぁどうせここだろうと思ってたけども。


「どうせルビーの朝メシで時間食ってたんだろ? その辺を見越して先に職員から話を聞いとこうと思ったんだよ」

「へぇ、気が利くじゃなぁい。実際その通りよぉ」

「・・・ごめんなさい」

「いや謝ることないでしょ」


 ゼルの推測ピッタリに動いたのが恥ずかしかったのか、耳まで真っ赤に染めながら俯くルビーちゃん。前から思ってたけど、大食いキャラみたいに扱われるのイヤなの?

 ちなみにあーしたちが宿の食堂に入った頃にはすでに食べ始めていて、長テーブル一つ占領する量の多さに軽いギャラリーが出来上がっていた。昨日の朝以来だもん、しょうがないよ。


「っ・・・それで、話の方は?」

「まぁ慌てんなよ、団子でも食って落ち着けや。ホレ」

「分かった」

「まだ食べるのねぇ・・・」


 さっさと話題を切り替えようと強引に話を振ったルビーちゃんを、ゼルがお団子一本で手懐ける。ていうかルビーちゃんはともかく、あーしたち朝ご飯食べたばっかなんだけど。

 とは言いつつもあーしネク共々しっかりとお団子を受け取り、足湯に浸かってリラックス状態に入る。なんかこうやってゆっくりするのも久しぶりに感じるなぁ・・・。


「まず最初に、炎神サマと風神サマが両方眠りについたらしい」

「ンッフ!? ンン~ッ!?」

「ちょっ、大丈夫アカネちゃん!?」

「落ち着いて、ゆっくりお茶を飲んで」


 リラックスから一転、ゼルから知らされた衝撃の情報にお団子をのどに詰まらせ、涙目になりながら胸元を叩く。

 ルビーちゃんから差し出されたお茶でゆっくりと飲み下した後、乱れる呼吸を整えながら確かめるように問いかけた。


「ケホッ・・・炎神様は分かるけど、風神様も眠っちゃったの!?」

「そもそも最後の攻撃の時点で無理してたろうしな。たぶん俺らを送り届けて力尽きたんだろうよ」

「っ・・・」


 そっか・・・だからあの後すぐにいなくなっちゃったんだ。

 ていうかちょっと待って、それってつまり・・・!?


「残った大精霊は、地の大精霊だけってこと・・・?」

「そうなるな」

「考えられる中でも、かなり悪いケースだと思う」

「まさか大精霊同士がぶつかるまでは計算してはいないと思うけどぉ・・・」


 それぞれが神妙な面持ちでお団子を頬張る。いやちょっと待ってよ、ここで呑気にお団子食べてる場合じゃないんじゃないの?

 しかしそんな考えを先読みしてか、あーしが何か言う前にゼルが話の続きを切り出す。


「確かに状況は最悪だが、残った地神の社は王城の地下にある。そう簡単に破られやしねぇよ」

「いやでも、そんな気楽に構えてていいの?」

「気楽に構えてる訳じゃねえよ。騎士団の連中も動いてない訳じゃねえからな」


 そう言ってゼルは丸められたクエストの依頼書を取り出し、あーしの手元へと投げ渡してくる。

 このタイミングでクエスト? と思いながらもそれを広げて見てみると、中には王族の刻印と共に緊急クエストとの内容が記されていた。


「! これって!?」

「前に騎士団長が言ってたやつだろうな。内容はちょっと変わってるが」


 隣から覗き込んで来るルビーちゃんとネクの三人で依頼書を読み進めていくと、魔王軍の襲撃に備えて王都もしくは砦の警備への参加と書かれていた。その下にはバカみたいにゼロが並べられた報酬額が載っていて、依頼の本気度合いが嫌でも伝わって来る。


「これ、内容的に魔王軍が攻めて来るってこと?」

「残る大精霊はあと一柱だものぉ。一気に仕掛けてきてもおかしくないわぁ」

「その分、防衛戦力を集中できるとも言える。かなり大きな戦いになると思う」

「ちょっ、ちょっと待ってよ! あーしたちの仕事はエイミス様を助け出す事じゃ無いの?」

「それも別口で名指しの招集がかかってる。もうすぐにでも奪還作戦が始まるはずだ」

「っ・・・!」


 一日寝ている間に起こっていた急展開に思わず息を飲むあーし。お団子食べてたらまた詰まらせてたなコレ。


「ずいぶん予定が変わったように見えるけど、大丈夫なのかしらぁ」

「陽動が総力戦に変わるだけだ。たいして変わってねえよ」

「いやめちゃくちゃ変わってるでしょそれ」

「どっちにしても、戦いの間に王女様を救出する事は変わってない。大丈夫」

「面倒さは増したと思うけどぉ、まぁしょうがないわねぇ」


 気になる部分はありつつも、それぞれなりにお団子と一緒に飲み込むあーしたち。まぁ詳しいことはルークさんとか騎士団の人に聞けばいいし、大丈夫かな。


「よし、んじゃあーしたちも行こっか!」

「いや、俺たちはここで待機だ」


 勢いよく立ち上がったところで思いっきり出鼻をくじかれ、そのまま足湯に突っ込みかけるあーし。いやちょっとおかしいでしょ。今の完全に行く流れだったでしょ。何でよ。

 視線だけでそう訴えると、ゼルは追加でお団子を頬張りながら答える。


「職員のねーちゃんにここで待っとけって言われたんだよ。理由は知らんが」

「そこはちゃんと聞いとこうよ・・・あーし聞いてこようか?」

「ちょっと待って、あれ」

「ん?」


 あーしを呼び止めたルビーちゃんの指さす方を見ると、えらく仰々しい馬車がこっちに向かってきていた。あれ何か見覚えあるな・・・。

 記憶の隅に引っかかるその馬車をじーっと眺めていると、ちょうどあーしたちの浸かる足湯の前で止まり、中からこれまた見覚えのある人が降りてきた。


「おはようございます、皆さま」

「あっ、セシリーさん!」


 優雅かつスマートな動きで馬車の中から降りてきたのは、相変わらず出来る女オーラを漂わせているセシリーさん。片っぽメガネの奥から見える鋭い目つきも健在で、正直今でもちょっと委縮してしまう。


「お久しぶりです赤羽アカネさん。本日はあなた方をお迎えに上がりました」

「迎え?」

「はい。エイミス様奪還作戦の為にお迎えに上がるようにと」

「何だよ、えらいVIP待遇だなオイ」

「あなた方の活躍を考えれば不思議ではないでしょう」

「ほう、分かってるじゃねえか」

「確かにその通りだものねぇ」


 王族関係者のセシリーさんに言われたせいか、これでもかと鼻を伸ばしまくるゼルとネク。恥ずかしいから止めて。


「これからすぐにでも王都へお連れしたいと思いますが、何かお忘れ物はございませんか?」

「俺はねえな。お前らはどうだ?」

「アタシも大丈夫よぉ」

「食べ物は?」

「お出しします」


 割と真剣なルビーちゃんの質問に、セシリーさんがクスリと笑って答える。一番最初に会った頃が嘘みたいだなぁ。


「アカネは?」

「あーしはまぁスマホがあれば・・・ってそういえばアイシアはどうなったの? 何か途中からいなくなってたけど」

「たぶん風の大精霊に連れられたあたりでしょうねぇ」

「その辺も心配ねぇよ。簀巻きの雪女が風に運ばれてきたって兵士から聞いたからな」

「魔王軍幹部アイシアは、昨日の時点で王都へと連行され投獄されています。処遇については先延ばしになってしまっていますが」

「そ、そうですか・・・」


 アフターフォローほんとすごいな風神様。これもう今度お供え物の一つでも持ってった方がいいな。


「うん、じゃああーしも問題ないかな」

「それでは皆様、馬車へお入りください」


 最後のあーしの確認が取れ次第、仰々しい馬車の中へと案内するセシリーさん。いつかエイミス様にお誘いされた時とは違って、今回はあーしも特に緊張することも無く乗り込んでいく。

 全員が席に着くと最後に御者さんが扉を閉め、しばらくすると窓の外に映る温泉街の景色がゆっくりと動き始めた。


 いよいよエイミス様の奪還作戦が始まる。

 今度こそエイミス様を助け出して、あの時の約束を果たそう。

今回で第4章が終了となります。

第4章までお付き合い頂いた皆さま、本当にありがとうございます。皆さまに読んで頂けているという事がとても励みになります。


次回は第5章、ついに物語もクライマックスに突入します。最後までお付き合い頂ければ、嬉しい限りでございます。


よろしければ下部から、作品への評価や感想が頂ければ幸いです。

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