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異世界インスタ  作者: 五寸
第4章 狂宴のモンテローエ
83/117

10話

 地上へと誘き出したボルケーノワームが状況を理解する前に、先手必勝で冒険者たちの一斉攻撃が仕掛けられる。

 まずはネクの糸にプラスして錬金術師たちの作り出した強力なチェーンが、地中から半分だけ現したその赤黒い体をガッチリと拘束する。


「止めたわよぉ! 続きなさい!」

「「「『ハイドロストリーム』!!」」」

「「「『フリーズ』!!」」」

 

 ネクの合図から間髪入れず、ワームを取り囲んでいたソーサラーたちから強烈な水の魔法が発射された。更に冷気の波で濡れた体に追い打ちをかけ、ボルケーノワームから体力と体の自由を奪っていく。


 コボルトの情報と名前からして、水や氷に弱いと推測されていたボルケーノワームには予想通り効果抜群で、さっきまで猛烈な勢いでルビーちゃんを追いかけていたのが嘘のように、ワームは苦しそうなうめき声を上げながら体を震わせる。

 残念ながら氷漬けとまではいかなかったものの、霜が降りたその体は十分に動きが鈍くなっていた。


「一気に畳みかけるぞお前らァアアアアアアアア!!」

「「「オオオオオオオオオオオオオオオ!!!」」」


 どこからともなく挙がった冒険者の大声を合図に、今まで待機していた戦士クラスの冒険者たちが武器をその手にボルケーノワームへと向かって行く。そのまま戦士たちは地上に近い胴体にありったけの攻撃を叩き込み、攻撃の届かない頭には遠距離組の射撃や魔法がお見舞いされた。

 鈍い体をさらに拘束されているワームはなすすべもなく、霜の降りた身体中にどんどん傷をつけられていく。


「すっご・・・! めっちゃ堅そうなのに剣も矢も普通に効いてる」

「実力もあるけど、何よりここで作られた武器なのが大きい」

「言ったろ? モンテローエは王都へ向かう下準備をする街だ。生半可なモン作ってねえんだよ」


 俺様には敵わねえがな、と付け足された声の方へと振り向けば、岩の拳を壁の魔法で包み込んだゼルの姿が。


「真打ち登場だ! その体ブチ抜いやるぜ!!」


 気合十分に飛び出したゼルは、戦士たちが集まる胴体には向かわずにワームの下あごを目掛けてその拳を振るう。体じゃないんかい。

 なんて心の中でツッコミつつ、ゼルの勇姿を収めようとカメラを向けたその瞬間、フレームに映るゼルの体がなぜかいきなり吹っ飛ばされた。それを慌てて受けとめると、遅れてジリジリとした熱風があーしの体に吹きつけられる。


 当然というかその熱風はワームが生み出していたようで、ゼルどころか自身の周囲に群がっていた戦士たちをことごとく吹き飛ばし、更にその体の節々からは炎が漏れ出し始めていた。


「あっつ・・・! なんなのアレ!?」

「野郎・・・絶妙なタイミングで潰してきやがって! いや、俺様に恐れをなしたと考えるならむしろ自然か」

「バカ言ってる場合じゃ・・・ってウソでしょう!?」


 絶え間なく炎と熱風を生み出し続けていたワームは、体中の霜を溶かすどころか、ネクの糸やチェーンすらも燃やし尽くしてしまった。そうしてようやく自由を取り戻したワームはその鬱憤を晴らすかのように、燃え上がる岩石と化した体で盛大に暴れ始める。


「ぐあああああ!?」

「ぐふぅッ!?」

「ッ・・・クソッ!」


 ワームはその巨体を活かして周囲を思いきり薙ぎ払い、熱風に吹き飛ばされてなお自身を取り囲んでいた戦士たちをガラクタのように蹴散らした。更に地面をその体で叩きつけると、飛び散った岩の破片が燃える弾丸となって襲い掛かる。


「「「『シェル』!!」」」

「「「『ワイドガード』!!」」」


 ゼルを始めとした魔法使いと盾を持つ戦士たちが、各々壁となる魔法やスキルで迫る火炎弾を受け止める。しかし思っていた以上に威力があったようで、ゼル以外の魔法やスキルは所々でヒビが入ったり打ち破られてしまった。

 そうして崩れてしまった態勢を整える間に、ボルケーノワームは地中へと潜りあーしたちの視界から消えてしまう。


「にっ、逃げた・・・?」

「いや、まだ振動を感じる。不意打ちに注意して」

「注意してって・・・ッ!?」


 ルビーちゃんからそう言われた矢先、あーしの体が跳ね上げられるのと同時に、すぐ後ろから地面が砕き割れたような轟音が届く。

 振り返るまでもなく半泣きになったあーしをルビーちゃんが抱え上げ、一足飛びにその場から脱出すると、一瞬遅れて燃え上がるワームの尻尾が勢いよく振り下ろされたのが見えた。

 離れた場所に降ろしてもらってから改めて確認すると、吸い込まれるように穴の中へと消えるワームの尻尾と、燃えるクレーターと化した地面が目に入る。・・・ルビーちゃんいなかったら死んでたなマジで。


「気をつけろ! どっから出てくるか分からんぞ!」

「壁役から離れるな! 無理に攻めずにカウンターを狙え!」


 冒険者たちもさすがに場数を踏んでいるからか、態勢を整えるなり慌てる事なく冷静に対処方を組み立てていく。前は戦士が、後ろはプリーストが受け持ち、襲いかかるワームの攻撃をうまく受け流しつつ反撃の隙を作ると、自分たちが守っていた攻撃役にその次を託す。


 しかしカウンターではワームの堅い体にダメージを与えきれず、さらに立て続けに襲ってくる不意打ちに気を張っていることもあり、冒険者たちは体力以上にその精神をすり減らされていった。

 

「どうするのぉこの状況?」

「戦士たちの消耗が激しい。このままじゃジリ貧で押し込まれる」

「どうにかしてとっ捕まえるしかねえな。頼んだぜクモ女」

「サラッと無茶振りしないでくれるかしらぁ!?」

「ちょっと待って! なんか、ワームが出てこないんだけど」

「「「っ!」」」 


 二人の漫才を聞いているうちに違和感に気づく。さっきまで休む間も無く襲いかかってきていたワームが、唐突に攻撃を止めて漫才が出来るほどの余裕を与えていた。

 さすがに鈍いあーしでも違和感に気づき、その場の全員が最大限警戒しながらワームの居所を探る。


「いたぞ! 山の斜面だ!!」


 冒険者の誰かが叫んだ方向に体ごと振り向くと、いつの間にか遙か高い山の斜面へと移動していたワームがこちらを見下ろしていた。

 何をする気なのかと警戒しつつ、レンジャーやソーサラーが攻撃の準備をしていると、閉じられたワームの口から漏れ出るように炎が溢れ始める。

 その炎が激しさを増すごとにワームの口の中が赤く発光し始めたかと思えば、その光を吐き出すようにあーしたちに向けて大口を開いた。


「『三重シェル』!!!」


 次の瞬間、バカでかいワームとほぼ同じ大きさの熱線があーしたちへと襲いかかり、それをゼルの壁の魔法が間一髪で防いでいた。

 怪獣映画でも見ているかのようなボルケーノワームの熱線は、直接触れているわけでもない地面すら赤く焼き焦がし、触れた部分に至ってはドロドロに溶かしてしまっている。


 あまりにも一瞬すぎる出来事にあーしは反応すら出来ずに固まっていると、目の前で熱線を防ぎ続けているゼルの大声が轟音に紛れて届いた。


「今がチャンスだ!! 行けェエエエエ!!」


 ゼルの発破でようやく現実に戻ってくると、同じように固まっていたらしい冒険者たちが一様に動き出したのが尻目に見えた。

 ゼルが叫んだ通りどうやらワームは熱線を吐き続けることに集中しているようで、他の事にまで手が回らない状態になっている様子。

 そのチャンスを最大限に活かすべく、守りは全てゼルに託したかのように、あーしたちの周囲に青色の魔法陣が次々に浮かび上がってくる。


「「「『ハイドロストリーム』!!!」」」

「「「『クリスタルスピア』!!!」」」


 ソーサラーたちの唱えた水や氷の魔法が、ワームの吐いた熱線とすれ違いながら本体へと衝突する。

 まさに魔法の嵐とでも言うべきその攻撃に、水しぶきや氷の破片を撒き散らしながらワームは体を大きく仰け反らせ、その動きに合わせて大空へと行き先を変えた熱線は先細りながら消えていった。

 そうしてようやく自由になったゼルと戦士たちはほぼ同時にワームに向けて走り出し、反撃を警戒してか切り抜けるように霜が降り始めたワームの体へと攻撃を仕掛ける。


 物理と魔法の同時攻撃を受け続け、完全に目の前の冒険者へと気を取られたボルケーノワーム。それを見計らっていたかのようにワームの頭上から現れたのは、今まで体力を回復していた黒髪のアサシン。


「っ!」


 大きく体を捻りながらワームの頭上へと飛び上がっていたルビーちゃんは、足だけをサイクロプスへと変身させ、回転を加えた強烈なかかと落としをその脳天に叩き込む。

 そのあまりの衝撃にさすがのワームも崩れ落ち、山の斜面にその顔面をひれ伏した。


「クモ女ァ!!」

「分かってるわよぉ!!」


 間髪入れずにネクの糸がひれ伏したワームの体に絡みつき、続いて伸びてきた錬金術師たちのチェーンも追加してもう一度その体を拘束する。さらに前回を踏まえてプリーストたちが糸とチェーンを強化しており、未だ頭部を踏みつけているルビーちゃんも相まって、身動き一つ許さない状態を作り出した。


「今度こそトドメだ!! 行けェエエエエエエエ!!」

「「「オオオオオオオオオオ!!!」」」


 一気にケリをつけるべく、ワームの顔面に向かって雪崩れ込む冒険者たちの攻撃。

 ボルケーノワームも最後の足掻きとばかりに鼓膜を引き裂くような叫び声をあげたものの、押さえつけられたその体はビクともしなかった。



 なぜなら、動かそうとしたのは自分の体ではなかったから。


 そのけたたましい叫び声はあーしたちの鼓膜を揺さぶるだけに留まらず、なんとこのモンテローエ火山すらも激しく揺さぶってみせた。

 動かない体の代わりに火山を動かしたとでも言うのだろうか、ボルケーノワームの怒りを代弁するかのようにモンテローエ火山の山頂部が爆発し、そうして噴き上げられた火だるまの岩石があーしたちの頭上から降り注いできた。

 

「マズイ! 噴石が!」

「伏せろォオオオ!!」

「「「『シェル』!!!」」」

「「「『ワイドガード』!!!」」」


 冒険者たちはとっさに攻撃を中断し、燃え盛る岩の雨からその身と仲間たちを守る。

 まるで空爆にでもあっているかのようなその状況は、問答無用で冒険者たちの動きを封じ、当然ワームを押さえつけていたルビーちゃんも離れざるを得なくなった。


 大自然の猛威を前に自身を縛る糸やチェーンはなすすべなく破壊される中、ボルケーノワームはそれらを一切意に介することなく体を起こすと、内に湧き上がる怒りを吐き出すような叫び声を上げ、その全身をもう一度燃え上がらせる。


「ちょっとちょっと!? 火山を操れるなんて聞いてないんだけど!?」

「・・・もしかして、温泉が急に熱くなる原因もあの子だったんじゃないかしらぁ」

「マジで!?」

「同じ火山の異変だったわけだし、考慮しておくべきだったわねぇ・・・!」

「いやいや、そんなん分かるわけ・・・って何あれ!?」


 今も叫び続けていたワームは全身を包む炎の火力をさらに上げていき、ついには身体中が赤く発光するほどの高温になっていた。あまりの熱さに視界がうっすらと歪むほど気温も上がり、魔法で対策しないとまともに近づけないレベル。

 その状態でワームはあえて地面に潜らず地上を這い回り、その長い胴体をフルに活かして冒険者たちに体当たりやなぎ払いを繰り出してきた。しかも体が熱くなり過ぎたせいなのか、ワームが移動すると炎の痕跡が残るようになり、攻撃以外でも冒険者たちを苦しめてくる。


 そうした怒り狂うワームの猛攻を前に、いよいよ冒険者たちの態勢にもカバーしきれない乱れが生じ始めていた。

 攻撃をかいくぐりながら再集合したあーしたちパーティは、緊急の対策会議を始める。


「どうすんのこれ!? なんかもう辺り火の海になっちゃって討伐どころじゃないと思うんだけど!?」

「正直、撤退した方がいいと思う」

「それじゃあ誰があの子を引きつけるのぉ? 街にまでついてこられたら本末転倒よぉ」

「・・・俺にいい考えがあるんだが、乗るか?」

「「「・・・」」」

「んだよその顔は」


 火の海に周囲を囲まれる中、あーしたち三人は揃って怪訝な表情をゼルへと向ける。いやそりゃそうでしょ。昨日のこともう忘れたの?


「まぁ聞けよ。俺たちには魔王の息子たるあのクサレボンボン野郎を倒した実績がある、そうだな?」

「・・・それってもしかして」

「察しが早くて助かるぜ。さぁどうする、乗るか?」

「どのみち他に選択肢はない」

「あー! しょうがないわねぇ!」


 ほとんどなし崩し的に意見がまとまったあーしたちは、火山すらも味方につけたワームに対抗するべく、いつか風神の社でやったように四人の力を合わせる。

 まずはルビーちゃんが巨大なガイコツに変身し、その体へと這わせるようにネクが足先から頭へと糸を紡いでいく。

 途中で振り下ろされた高熱の尻尾を完成した両腕が受け止め、それを思いきり投げ捨てながら、巨大な白い人体模型は火の海の中で誕生した。


 今回はゼルのリクエストにより、Pマジックで全身をゼルの姿へと変身させると、周囲の冒険者たちから歓声が湧き上がる。


「いいね、盛り上がってきたぜ!」

「ここは私たちが引き受ける。みんなはなるべくここから離れていて」


 巨大なゼルから死ぬほど似合わない人を心配するようなセリフが飛び出すと、それを受け取った冒険者たちはそれぞれお礼のジェスチャーを送ってからゆっくりと撤退を始める。

 しかしワームにはそれがチャンスと映ったのか、目の前の巨大ゼルは一切無視して撤退する冒険者たちへと一目散に動き出した。


「つれねぇ真似するなよ!」


 そう言いながら巨大ゼルは赤く光るワームの尻尾をがっしりと掴み取り、そのまま弧を描くようにぶん回しながら地面へと叩きつけまくる。当然燃えるほど熱いワームを握った巨大ゼルの手もしっかりと燃えたけど、そこはプリーストの魔法で何事もなかったかのように回復させた。すごい力技。


「オラァッ!」


 巨大ゼルは勢いそのままにワームを山の斜面へとぶん投げると、間髪入れず倒れ込んだワームに向けて飛び蹴りをかます。しかしそれを寸での所でかわしたワームは、慌てるように手近な穴の中へと潜り込んだ。


「チッ、逃げ足速えな」

「ちょっと待って、これ中身ルビーちゃんだよね? なんでゼルと動きも何もかもシンクロしてんの?」

「ドッペルゲンガーですから」

「アタシもマリオネットにはこだわりがあるのよねぇ」

「そういうこった」

「どういうことだし・・・」


 呆れながらもあーしはドローンで撮影しつつ周囲を警戒していると、ちょうど背後の穴の中からワームが飛び出してきたのが見えた。


「後ろ!」

「危ねッ!?」


 ドリルのように回転しながら飛び出してきたワームは、そのまま別の穴の中へと潜り込んでいく。どうも真正面からでは分が悪いと踏んだのか、不意打ち作戦に変更したらしい。


「チッ、面倒だな・・・」

「ゼルさん、バトンタッチ」

「あ?」

「ここは私に任せてほしい。アカネさん」

「わ、分かった」


 意図を察してあーしはPマジックを再起動し、イメージをゼルからルビーちゃんへと変えると、連動するように巨大ゼルの姿が巨大ルビーちゃんへと変わった。

 これで何か変わるのかなと思った矢先、またも背後からワームが飛び出してくる。


「また後ろっ!?」

「甘い」

「!?」


 あーしが叫ぶのとほぼ同時に反応していた巨大ルビーちゃんは、体を滑らせるように移動しつつ、宙に飛び出したボルケーノワームを抱き込むように捕まえてみせた。そうして勢いを殺したワームを宙へ投げ捨てると、そこに巨大ルビーちゃんの強烈な回し蹴りがお見舞いされる。

 爆発のような衝撃音を鳴らしたワームはほぼ直線に吹っ飛んでいき、もう一度山の斜面へと叩きつけられた。


「やるじゃねえかルビー。ギャラリーも盛り上がってるぜ」

「離れてって言ったのに」

「もしかして、見た目が変われば動きも反応も変わる感じ?」

「ドッペルゲンガーですから」

「今まで散々見てきたじゃないのぉ」

「・・・そうだね」


 いや、だって前は動かすのもやっとだったし。急成長しすぎでしょ。

 しかしそれでも倒しきる威力にまでは届いていなかったのか、ワームは再びゆっくりと起き上がると、もう一度穴の中へと逃げ込んだ。


「しぶとい野郎だなオイ。どうするよ」

「早く仕留めないと、また最下層まで逃げられる可能性もある」

「そうは言っても、あの堅い体じゃ厳しいわよぉ」

「じゃあ中からやればいいんじゃない? ・・・ってのはテキトーすぎかな」

「それだ」

「それなの!?」


 自分で言っといて自分でツッコむあーし。いやまさか採用されるとは思わないじゃん。

 しかし他の三人はもうそれ前提で事を進めているようで、今度は巨大ネクへと変身させるよう指示してきた。あーしは期待と不安が入り混じりながらも言われた通りPマジックを操作していると、変身が終わる前にワームが飛び出してきたのを尻目に捉える。


「右にっ・・・ヒッ!?」


 今度はあーしが叫んでも一歩遅く、反射的に突き出された巨大ネクの右腕がガッツリと咥え込まれてしまっていた。円形に生えたワームの歯は巨大ネクの腕に沿って痛々しいほどに食い込み、このまま食いちぎってやると言わんばかりにギリギリと更に沈み込んでいく。


「ネッ、ネク! 腕が! 大丈夫!?」

「落ち着きなさいなアカネちゃん。あれはアタシの糸よぉ」

「・・・あぁそっか」

「中身は私の腕なんですけど」

「ちゃんと防いでるからいいでしょう? それに、歯が届く前に彼が決着をつけるから問題ないわぁ」

「あれ、そういえばゼルは?」

「ワームに食べられた右腕の中」

「ええっ!?」


 何でそんな所にと右腕の方へとドローンを動かすと、飲み込まれた右腕の中でゼルが魔法を唱えているのがうっすらと見えた。マジで何してんの!?


「魔物漁ん時と同じだ。外がダメなら中から潰す! 受け取ってくれよ!! レイヤードマジック『ハイドロスマッシュ』!!!」


 ゼルは長ったらしい決めゼリフの末に魔法を叫ぶと、小さく閉じられた両手の中から爆発するように大量の水が解き放たれた。その水は瞬く間にワームの胃の中へと流れ込んでいき、更に口は壁の魔法で閉じられ水風船のようにその体が膨らんでいく。・・・まさか。


「散々燃やしてくれたんだ。いっちょ雨でも降らして消してやろうぜェ!!」


 絶えず水を流し込まれるワームの体はパンパンに膨らんでいき、ついには限界を迎えて大爆発を起こした。


 宣言通り降り注いだ・・・というか飛び散った水とモザイク必須な何かは地表で燃える炎を全て消化し、代わりにどこか生臭いニオイだけがその場に残る。

 これにはさすがの冒険者たちもノリきれなかったようで、汚れた巨大ネクの姿を呆然と眺めていた。


 ・・・何なのコレ。勝ったのに全然嬉しくない。

 ・・・とりあえず、早くお風呂に入りたい。

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