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異世界インスタ  作者: 五寸
第3章 精霊と混沌
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18話

 ゴンドラに乗り込み、風神の社へ向かってからしばらく。

 ひたすらに続く谷間の道は進むごとにその高低差を増していき、気付いた頃にはほとんど空を飛んでいるのと同じ状態になっていた。地面もいつの間にか見えなくなり、薄い霧が谷底を隠すせいで余計に恐怖を掻き立てられる。


 乗り込んだ時とは別の緊張感に顔を青くしている間に、ようやく風神の社側に建てられたゲートへとたどり着いた。

 ゴンドラから降りて一歩踏み出した瞬間、ひと際強い風があーしたちに向かって吹きつける。

 反射的に腕で顔を覆った後、恐る恐る腕をどかしながら目を開いた。


「ここが、風神の社・・・!」


 目を開いて一番最初に飛び込んできたのは、だだっ広い荒れ地のド真ん中に建てられた大きな祭壇と、それに太い根を張ってそびえ立つ巨大な樹。

 空をほとんど覆い隠してしまうほどに広がった枝葉は、常に吹きつける風に揺られて規模にふさわしい大音量のさざめきで鼓膜を揺らす。

 その手前には祭壇への道を示すように大きな柱や像が並び立っていて、所々苔むしたりツタが絡まっていたりと、一見すると長い間放置された遺跡のようにも見えた。


 海神の社とはまた違った、自然と調和した美しい景色。


 そんな穏やかな雰囲気をぶち壊すように、社の周辺には血を流した兵士や祈祷師たちが倒れていた。


「ゼッ、ゼル!」

「もう死んでる。今は置いとけ」


 あーしは自分の体温が一気に下がったのを感じながら、先へ進むみんなに続いて社へと歩を進める。柱と像に示された道を進むたびに祭壇のディティールもはっきりと見え始め、さらにその奥に立っている二人の後ろ姿を捉えた。


 あーしたちの足音が届いたのか、精霊槍を握った一人がゆっくりと振り返ってくる。


「やぁ、遅かったね」

「それがゴンドラの醍醐味だろ。風情のねえヤツだな」

「ハハハ、そうだね。確かにもったいない事をしたかもしれないな」


 顔を合わせて早々、他愛もない会話を交わすゼルとエギル。それに何だかイラっとしてしまったあーしは、流れを無視して本題を切り出した。


「エイミス様を連れて、何が目的!?」

「デート、と言えば伝わるかな?」

「は!?」

「王女様は常々言っていたそうじゃないか、外の世界を見て回りたいと。だからこうして一緒に世界を回っている、というのはどうだろう。魔王の息子と王女がデート、中々ロマンチックな話だと思わないかな?」

「ふざけてんの・・・!?」


 あーしはエイミス様とのお茶会を思い出し、お腹から頭に向かってどんどん体が熱くなっていく。その熱をそのまま吐き出す様に、あーしはエギルに言葉をぶつける。


「エイミス様はこんなの望んでない! あーしの方がエイミス様を笑顔に出来る、それに約束だって!」


 あーしは未だパレードの写真が眠ったままのスマホを強く握りしめ、エギルにケンカを吹っ掛けた。


「だからっ、エイミス様は返してもらうから!!」

「フッ、王都では震えて何も出来なかった君が、ずいぶん大きく出るものだね」

「卑屈に縮こまってるよか百倍マシだろ。それに、俺はそういうとこ嫌いじゃないぜ」

「右に同じ」

「まぁ、そういう事にしておいてあげるわぁ」


 勢い余って前に出てしまっていたあーしを庇うように、ゼル、ルビーちゃん、ネクが前に立ってくれる。

 ありがと、みんな。


「そういうことなら、君がこちらに来ればいい」

「は?」

「『クリスタルウォール』」

「「「「っ!?」」」」


 今の今まで黙っていたエイミス様が突然魔法を唱え、あーしたちは反射的に体を強張らせた。しかし魔法はあーしたちに向けられた訳ではなかったらしく、背後から凄まじい轟音と冷気が届いただけだった。


「! ゴンドラが!?」

「ゴンドラどころじゃないわよぉ・・・道そのものが埋められちゃってるじゃなぁい」


 確認のために振り向いた先では、谷底から突き出すように現れた分厚い氷の壁がゴンドラの道を完全に遮断していた。それどころかケーブルすらもぶった切られ、応援すらも絶望的な状況に。


「元々君も迎える予定だったんだ。私の代わりにエイミス王女を笑顔にしてくれると助かるよ」

「っ! 絶対お断りだし!!」

「強情だね。ならば説得は王女様に任せるとしよう」


 その言葉を聞くなりエイミス様はエギルと入れ替わるように一歩踏み出し、今度こそあーしたちに向けて魔法を唱えた。


「『ハイドロストリーム』」


 風の谷を破壊した水圧カッターのような魔法が、今度はあーしたちを直に狙って地面を抉りながら向かってきた。


「『シェル』! くっ・・・!?」

「きゃっ!?」


 間一髪で壁の魔法が防いだものの、あまりの水圧に壁の魔法ごと押し退けられてしまうあーしたち。とめどなくぶつけられる強烈な水の魔法はゼルを壁役として固定してしまい、あーしたちの取れる選択肢を極端に狭めてくる。


「どっ、どうしよう!?」

「とにかく王女様を無力化するのが先決ねぇ。ルビー、行くわよぉ」

「了解」


 短く言葉を交わすとルビーちゃんはぬるりと姿を消し、ネクは地面を這わせるように糸をエイミス様へと近づける。魔法を唱えるだけでそこまで周囲を警戒してはいないのか、ルビーちゃんはもちろんネクの糸にも反応する様子は無い。

 そのまま糸がエイミス様の両腕を絡め取ると、ネクがそれを引っ張ってあーしたちの方へと大きく引き寄せた。すると集中を乱されたせいかようやく魔法が止まり、ゼルが壁役から解放される。

 さらに姿勢を崩して宙に投げ出されたエイミス様の頭上から、手刀の構えを取ったルビーちゃんが染み出すように現れた。


「そこっ!」

「『スプラッシュピラー』」

「!?」


 エイミス様は背後に迫るルビーちゃんを見ることもなく、魔方陣から生み出した水の柱で迎撃した。逆に不意を突かれたルビーちゃんはその魔法をまともに喰らってしまい、重力に逆らって大きく打ち上げられる。


「うぐっ・・・!?」

「ルビーちゃん!?」

「待ってろルビー、今行くぜ!」

「フォローはアタシがしておくから、アナタは王女様を止めなさぁい」

「そうだ、ネクの糸で・・・って何してんの!?」


 二人のやりとりを聞いて振り向いた先では、糸を巨大な弓の弦に見立ててしならせるネクと、弦の真ん中で今まさに撃ち出されようとしているゼルの姿が。いやほんとに何してんの!?


「行くぜ必殺! 妖精砲弾!!」


 変な技名を叫んで撃ち出されたゼルは、丸まった体をものすごい勢いで縦回転させながらエイミス様目掛けて飛んでいく。

 しかしそれも感付かれてしまったのか、エイミス様はまたも見ることもなく魔法で迎撃する。


「『クリスタルランス』」

「甘ェ!!」


 エイミス様の手のひらに浮かんだ青い魔方陣から、極太の氷の槍が勢いよく突き出された。それをゼルは縦回転したまま大きく右に移動してかわし、かと思えば反動を利用するようにエイミス様の横腹へ向けて再度突撃していく。


「何あれ、どうなってんの?」

「こういうことよぉ、そぉーれっ!」

「!」


 ネクが大きくスイングすると、その動きに合わせて丸まったゼルがエイミス様の横腹へと吸い込まれていく。どうやら撃ち出したゼルの体に糸をくっつけていたようで、それで軌道を操っていたらしい。

 これにはエイミス様も反応できなかったらしく、ゼルの直撃を喰らって大きく横に吹っ飛ばされる。


「ルビー!」

「了解」


 ネクが指示を飛ばすと、地面を転がるエイミス様へ向かってルビーちゃんが落下してきた。

 しかもいつの間にか下半身だけを強靭な鳥の足に変身させていたようで、その足でもってエイミス様を握るように押さえつける。


「捕まえた、ネクさん!」

「分かってるわよぉ!」


 間髪入れずにネクから大量の糸が発射され、蛇のように絡みつきながらエイミス様を簀巻きにしていく。さらに周囲の柱や像にも糸を括り付け、最終的には巨大な繭のような状態にして動きを封じた。


「後はこのまま魔力を吸い取って無力化する。我ながら上出来ねぇ」

「すごいじゃんネク! こんなのいつ思い付いたの?」

「幹部時代に対エレメントロード用に考えてたのよぉ。こんな形で使うことになるとは思わなかったけどねぇ」

「お、おぉう・・・そっか」


 複雑な表情で思い返すネクを見て、あーしもなんか微妙な反応しか出なくなる。ほんと人生何が起きるか分かんないよね。


 なんて一瞬でも気を抜いたのが間違いだった。


「ネクさん! 繭が!」

「っ!? 嘘でしょう!?」


 ルビーちゃんの声を聞いてもう一度視線を向ければ、エイミス様を包む繭がどんどんと凍りつき始めているのが見えた。繭を固定する節々まで完全に凍りつくと、一気にヒビが広がって粉々に砕け散り、解放された無傷のエイミス様がゆっくりと地面に降り立つ。


「・・・今のアタシの糸じゃ力不足だったみたいねぇ」

「まぁ、エレメントロード相手に無力化しようってのが、甘い考えだったかもな」

「そう、かなぁ・・・?」

「? どうしたのアカネさん?」


 どこかエイミス様に対して違和感を覚えていたあーしは、ルビーちゃんに促されるままに自分の考えを口に出す。


「なんていうか、エイミス様手加減してない?」

「手加減?」

「いや、威力自体はすごいんだけど、王都で見た時はもっと規模も威力もすごかったし、バリエーションも多かったから」

「そういえば、水属性の魔法しか使ってねぇな」


 ゼルの言う通り、風の谷から今までずっと、エレメントロードであるエイミス様は水か氷の魔法しか使っていない。

 威力自体は集落を破壊するくらいには強いけど、言ってしまえばそれだけ。仮にも大精霊の力を借りるクラスがその程度とは、アルフィノエや王都での一件を経験しているあーしとしては、どうにも腑に落ちなかった。

 その疑問はみんなにも伝わったようで。


「言われてみれば確かに」

「第一、エレメントロードの魔法をこの羽虫が防ぎきれること自体が異常だったのよねぇ」

「よっしゃ。テメェだけ外出てろオラ」

「水属性だけ使うエレメントロード・・・水の大精霊に何か関係がある・・・?」


 二人は無視して真面目に推理するルビーちゃんに続き、あーしも頭を巡らせる。

 エレメントロードは四大精霊の力を借りるクラス。それがエギルに操られている今、水属性の魔法だけを使っている。その水の大精霊はアルフィノエの件で眠りについたまま。

 ・・・もしかして。


「もしかしてアイツ、四大精霊全員眠らせて、光の魔法を使おうとしてる・・・?」

「「「!?」」」


 何の根拠もないあーしの呟きに、メンバー全員の視線が集まる。

 慌てて若干まごついてしまったあーしの代わりに補足したのは、今まさに疑惑の対象に上がった男。


「ようやくその答えに辿り着いたか。思ったより頭が回るねアカネ君」

「エギル・・・!」

「テメェが乗っかって来るって事は、アカネの予想は当たってるって事か」

「そうだね、半分正解とだけ言っておこう」


 自分の計画を暴かれたというのに何故か嬉しそうな笑みを浮かべているエギルは、わざわざ事細かい内容を説明しながら、止まっているエイミス様の下へと歩み寄っていく。


「元々は大精霊自体を支配下に置くつもりだったんだ。まぁ失敗してしまったんだがね」

「それが、海神の社にいた理由」

「その通り。だから次善策に移る事にしたんだ。それが」

「エレメントロード、エイミス王女の拉致ってことねぇ」


 答え合わせを楽しむ教師のように、エギルは笑顔を浮かべながらエイミス様の肩から顎へと手を回す。


「だが残念なことに、エレメントロードの力の主導権は大精霊にある。故に光の魔法はおろか、眠りについた海神以外の力は使うことが出来ない。だからこうして社まで足を運んだという訳さ」

「後は暴走させて、俺ら人類側に対処させて眠らせるってか。いい性格してんなぁオイ」

「魔王の息子だからね、全てを思うままに動かしてこそ魔王たり得る。だが・・・」


 そこまで言うとエギルの笑顔は急に鳴りを潜め、いつか見たどこまでも冷淡な無表情が浮かび上がった。

 さらにエイミス様の顎を掴む手にも力が籠められ、そこから漏れ出した黒い霧が顎から頭へと広がっていき、初めてエイミス様が魔法以外の声を出した。


「うああああああああああああ!!?」

「エイミス様!?」

「テメェ! まだ足りねえってのか!!」

「どうやら彼女はまだ抵抗していたみたいでね。アカネ君の言う通り、君たちや仲間を相手に手加減をしていたようだ」

「っ!? それって・・・!?」


 その言葉の意味を確かめる間もなく、エギルはあーしたちに魔法を撃ちこむようエイミス様に命令を下す。


「エレメントロードの真の力、とくと味わうと良い!!」

「・・・『グランブルストリーム』」


 魔法を唱えたエイミス様の頭上に浮かび上がったのは、今までの物と比べ十倍以上は巨大化した、青く輝く魔法陣。

 王都でエギルに向けられたものと同じ、死刑宣告のように輝きを増していく魔法陣から、威力も規模も桁違いに増した水の激流があーしたちに襲い掛かる。


「『シェル』ッ!! ぐっ・・・クソッ!?」

「きゃあああああああ!?」

「アカネさっ・・・ゴボッ!!」

「いやあああああああ!?」


 さっきと同じように間一髪で防いだように見えたゼルの壁の魔法は、薄いガラスを突き破られたように呆気なく砕け散り、殴りつけるような水の流れに攫われるまま、あーしの意識は遠退いていった。






「んぅ・・・さむっ」


 凍えるような風の冷たさを感じて、あーしは目を覚ます。

 どうやらびしょ濡れの地面の上でうつ伏せになっていたようで、体にひっついてくる冷たい泥が鬱陶しい。

 霞みがかかったような頭で記憶を手繰り寄せていると、前の方から暖かい風が流れてきた。

 冷えた体に心地良いその風の方へと視線を向けると。


「・・・ゼル?」

「ハァアアアアアアアアアアアア!!!」


 熱風の正体は、いつものゼルの突撃魔法から発せられていたものだった。

 体中に出来た傷跡からも炎を噴き出しているゼルは、満身創痍の体を無理矢理に立たせ、睨みつける目標へ向かって突撃する。


「オラァアアアアアアアアアアアア!!!」

「『シェル』」


 全身全霊を込めたゼルの一撃を、呟くように唱えたエギルの壁の魔法が阻む。エギル・・・?

 エギルと戦うゼルと、その傍らに佇むエイミス様を見て、ようやくあーしたちが何をしていたのか思い出した。

 そうだ、あーしたちはエギルと戦って・・・!

 

「オオオラアアアアアアアアアア!!!」

「ほう、少しは持つようになっていたか。だが・・・」

 

 エギルもろとも突き破ろうと壁の魔法にぶつかり続けるゼルの顔面に、エギルの強烈な前蹴りが叩き込まれる。


「ブハッ!?」

「ゼル!?」

「芸が無いな」


 渾身の一撃をアッサリと打ち破られたゼルは、ゴミのように泥の上を跳ねながらあーしのいる方へと戻って来る。それでも折れまいとゼルは再び浮かび上がったものの、ついに妖精の羽すら維持できなくなる程に魔力を使い果たしてしまい、もう一度泥の上へと墜落してしまった。


 地に落ちたゼルに慌てて駆け寄ろうとしたあーしは、震える手足でまだ立ち上がろうとするゼルを見て動きを止める。


「まだ、諦めないと?」

「当たり・・・めーだ・・・ハァッ・・・俺様の活躍を広める代わりに・・・こいつの分まで戦う・・・そういう約束だからな」

「っ!」


 震える足で泥を踏みしめながら、それでもゼルは真っ直ぐにエギルを睨みつける。

 そんな小さな反逆者を前に、エギルは心底侮蔑したような目線でもって言葉を吐いた。


「それは、君の高いプリーストの才能に物を言わせた、いわば力技だ。それがもう通用しないという事は、王都で十分に理解したと思っていたんだがね」

「ハァ・・・ハァ・・・テメェの言う通りだ。妖精のクセして、分不相応にソーサラーに憧れた・・・ガキの考えた戦い方だ・・・」


 エギルの言葉にゼルは俯き、荒い息を整えながら途切れ途切れに言葉を紡ぐ。


「けどな」


 ゼルは大きく息を吐くと、もう一度その目にエギルを捉えた。


「それが俺なんだよ。他に代えは効かねぇ、信念ってやつだ。それすら守れねぇヤツが、他に何を守れるってんだ」

「その下らない信念なら、守れるものがあると?」

「保証人がいるんだよ、ウチのパーティにな」

「!」


 ゼルはエギルを見据えたまま、親指だけであーしを示す。

 たぶん今あーしたち、同じことを思い出してると思う。


「それに、応援してくれる奴もいるみたいだからな。そいつらの為にも、俺様は自分の道を諦める訳にはいかねぇんだよ」


 ゼルのセリフと共に思い起こされるのは、お互いの事を語り合った風の谷での夜のこと。

 たとえどんなに貶されようと、ゼルの事を信じ、応援してくれる人はたくさんいる。


 あーしが上げてきたインスタの記事と、それについた「いいね」の数が、その証だ。


「俺は俺の信念を通す。それが、妖精としての俺の守り方だ」

「ならばそれを示してみせろ!! 『バーニングレイ』!!」


 エギルから放たれた極太の熱線が、あーしたちに襲いかかる。

 未だ震える足で立ち続けるゼルの後ろには、気を失ったままの二人とあーしだけ。


 いつもなら恐怖で泣き出していたかもしれない。

 だけど、今だけは不思議と何も怖くなかった。


「『シェル』」


 あーしたちを囲った壁の魔法が、襲い来る熱線を完璧に防ぎきった。

 さすがにこれは予想外だったようで、エギルは初めて驚きの表情を浮かべて声を漏らす。

 

「なに!?」

「ゼル・・・?」


 魔力が無くなっていたはずのゼルの周りには、緩やかな風が渦を巻くように流れていた。

 しかもそれはゼルだけじゃなく、あーしや倒れている二人の周りにも風が渦巻き始める。何これ、なんか力が沸いてくる・・・!


「何が起きた、これは!?」

「俺の目標は変わらねぇ・・・ソーサラーでも、プリーストでもない、俺だけの称号」


 状況を把握できずに戸惑うエギルに対し、ゼルは冷静に、己に問いかけながら魔法を唱える。

 その足元には炎で描かれた赤く巨大な魔方陣が浮かび、さらにその周囲を囲う緑色の魔方陣から生み出される風が、燃え盛る炎をさらに激しく煽り立てる。

 やがて全身の傷口から炎が漏れ出し、ついには羽が失われた背中からもゆっくりと炎が吹き出し始めた。

 

「まさか、風神の・・・!?」

「世界最強の武闘派魔法使い!! それが俺の目指す道だ!!!」


 自分の道を突き進むように、もう一度エギルに向かって突撃魔法で突っ込んだゼル。

 今までと違って強烈な回転が加えられたゼルの突撃魔法は、自身を阻むエギルの壁の魔法に瞬く間にヒビを入れ、ついにはそれを打ち砕いてみせた。

 

「くたばれェエエエエエエエエエエエ!!!」

「ウグァアアアアアアアアアアアアア!!?」


 壁の魔法を打ち砕いたゼルはそのままエギルの鳩尾にめり込んだまま、その勢いを殺すこと無く祭壇の壁や柱を砕き進み、最後には中央にそびえる巨大な樹にエギルの体を打ち付けた。


爆撃にも劣らない衝撃を起こしたゼルの新たな突撃魔法は、自身の何万倍以上はあろうかという大木すらも大きく揺らし、空を埋め尽くすほどに広がった草葉を吹雪のように舞い散らせた。

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