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異世界インスタ  作者: 五寸
第2章 アルフィノエの騒乱
29/117

2話

 ギルドでの一件からしばらく。

 宿を取って荷物を置いたあーしたちは、改めてアセムに招待されたギルドでの宴会に顔を出していた。

 アセムが獲ってきた魚は色々な料理へと姿を変え、ビュッフェ形式でずらりと長テーブルに並んでいる。さらにその中央ではデカイ魚の頭が目立つようにドンと乗せてあった。この辺は異世界も同じなのね。


「ほんと、お昼はゴメンね」

「いいえ、ゼルさんに聞きました。アカネは遠い国の出身だから、この世界の常識に疎いって」

「アハハ・・・」


 これからはホント気を付けよう。最悪お縄につくことだってあり得なくはないし。


「そういえば、結局海には行けなかったわねぇ」

「そういやそんな話してたな」

「何だお前ら、アルフィノエには海に入りに来たのか?」

「あー、いや、どっちかっていうとこの辺りの絶景スポットを探しに」


 元々はお昼ついでにその辺も話し合うつもりだったんだけど、あぁなっちゃったからね。


「そうか! アルフィノエの絶景と言えば、俺は社をオススメするぜ!」

「社?」

「海神の社、水の大精霊を祀る場所だ。・・・お前さんこれも知らねえのか?」

「アッハハ、恥ずかしながら・・・」


 アルフィノエには図書館とか無いんだろうか。今度探してみよう。


「海神の社は、アルフィノエの海の中にあります。中は特別な人しか入れないけど、近くまでなら誰でも行けますよ。なんならツアーもありますし」

「へぇー面白そう! インスタ映えもしそうだし、明日行ってみる?」

「あー、スマン。オススメしといてなんだが、最近は海の大シケを抑える為に祈祷中だから立入禁止のハズだ」

「・・・そっかー」


 水の大精霊とかファンタジー感バリバリで、めっちゃインスタ映えしそうなのに。

 てか水があるなら、他にも大精霊はいたりするんだろうか。


「他にも大精霊はいるの?」

「・・・お前さん、本当に学校通ってたのか?」

「なっ!? 失礼だし!」

「人類の教育カリキュラムが気になるわねぇ・・・」

「そんなレベルで!?」

「大丈夫アカネさん。今から覚えれば、何も問題ない」

「そういう問題じゃないんだってば」


 そこからは妙に生易しい視線で、この世界の常識、四大精霊についての授業が始まった。

 大精霊は自然に満ちる魔力の根源との事で、火、水、風、土、それぞれの属性ごとに大精霊が居て、合わせて四大精霊と呼ぶらしい。

 属性ごとの魔力が満ちる場所に社が建っているらしく、日本でいう所の神社のような感じで祀られているみたい。


「火は火山、風は谷、地は王都にあるな。つっても地の社は王族しか入れんし、火と風も道中は屈強な魔物がお出迎えしてくれるぜ。俺は大歓迎だが」

「あーしはノーサンキューだよ・・・」


 ただし参拝までの難易度が、日本と比べてケタ違いに高かった。

 相変わらず、この世界は世知辛い。もうちょっと優しくしてくれても良くない?


「最初に確認した通り、冒険するならそれなりの力が必要ってことね・・・」

「慌てても仕方ないわぁ。まずは羽を休めて、それからゆっくり考えましょう」

「そうだね。それじゃ明日は海で思いっきり遊ぶって事で。オッケー?」

「水着写真もな」

「忘れてなかったのねぇ・・・」

「ふぉうふぁい」


 意味不明なセリフを発したのは、口がパンパンになるまで料理を頬張ったルビーちゃん。

 全然会話に入ってこないと思ったら、ずっと食べてたのね・・・。






「海だーーーーーー!」


 宴会の翌日。

 あーしたちは朝早くから宿を出て、アルフィノエの東にある海へと繰り出していた。

 照り付ける日差しに心地いい波の音。

 さすがに異世界といえど、海は何も変わらない。


「おうアカネ、女組はお前さんが一番乗りか。ほう・・・ふん・・・結構似合ってんじゃねえか」

「遠慮が無いねゼル」


 真正面から全身をガッツリ見回してきたゼルの格好は、髪色と同じ赤い海パン。

 ビジュアルだけは可愛い分、上半身丸出しの格好に一瞬だけ焦ってしまった。まぁ何回か裸見てるんだし今更だけど。

 あーしは胸元にフリルのついた黄緑色のビキニ。もうちょっと見せても良いかなって思ったけど、今回は可愛さ重視で行く事にした。・・・それにそっちで魅せるにしても、ネクっていう巨大な山があるし。

 なんて考えていると。


「ウッフフ。男どもの視線が心地いいわねえ」


 そう言って現れたネクの着ている水着は、隠す気ゼロの黒い紐水着。

 薄いレースのような物があしらわれていて、余計にエロさを引き立ててしまっている。

 ちなみに、あれもネクのオーダーメイド。


「もう、抑えてって言ったじゃん」

「これでも抑えた方よぉ」

「見せりゃいいってもんじゃねえぞ。クソビッチ」

「誰がビッチよォ!? それにアタシはまだ」


 ギャースカと騒ぐ二人とは無関係の人を装って、あーしは最後に残ったルビーちゃんをスマホ片手に待ち構える。

 胃もたれしそうなほど色気のあるネクと違って、スレンダーで何着ても似合うルビーちゃんは、一体どんな水着姿で現れるのか。そしてどれだけ『いいね』が付くのか。

 色んな興奮で鼻息を荒くしながら待っていると、ついにその時は来た。


「お待たせ」


 なぜかハイドを使い、空間から染み出すように現れたルビーちゃん。


「おぉ~~!」


 綺麗な黒髪をアップに纏めたおかげで、首筋に控えめな色気が生まれている。そこから下へ目線を下げれば、豊かな胸を強調する白色のビキニが黒髪との対比でさらに映える。そして可愛さも忘れずアピールするフリルスカート。

 うん! 超かわいい!


 ・・・うん?


「えっと、ルビーちゃん?」

「なに?」


 めちゃくちゃ白々しい態度で返事をするルビーちゃん。

 いやぁ、その・・・それは無理があると思うよ。


 チラッとネクに視線を向ければ、無言で首を振って返答してくる。だよね。

 失礼な例えだけど、まっ平らな大地に急に山が生えてくれば、誰だって違和感を覚える。


 つまり何が言いたいかっていうと、盛りすぎだよルビーちゃん。


 しかし、これは女の子にとってデリケートな問題。

 追い詰めてしまった手前どうしようかと悩んでいると。


「あん? なんだよルビー。お前その乳どっからかっぱらってきたんだ?」


 ・・・どうしてこのエセ妖精は、こうも最低なセリフがポンポン出てくるんだろう。

 

「っ~~~!!」

「うぉっ!? ちょっ、なんだよオイ!? いきなり乳がでかくなりゃ誰だっておかしく思うだろ!? ちょっ、間接を決めるな!」

「それでもあれは無いよ」

「死ねばいいと思うわぁ」

「イデデデデデデデ!? スイマセン! スイマセンした!」


 半泣きのルビーちゃんはしばらくゼルの間接を固めまくり、落ち着いた後にしかるべきサイズに戻った。・・・切ないなぁ。






 それからしばらくは、異世界での海を満喫に満喫した。

 海で水のかけあいをしたり、泳いで競争してみたり、砂で埋めてみたりと普通の遊びもすれば、海水を凍らせてアートを作ったり、魔法と糸を使ってギミック満載の砂のお城を作ってみたりと異世界らしい遊びまで色々。

 思えば今の今まで命がけの冒険しかしてこなかったから、こうやって普通に遊ぶのがすごく久しぶりに感じる。

 ついこの間までただのJKだったのに、気がつけば遠いところに来ちゃったなぁ。


「どうしたよアカネ。たそがれるなんざ似合わねえマネして」

「一言余計だし。まぁ、こうやって普通に遊ぶのもいいなって」

「そうねぇ。アタシも幹部としての仕事しかしてこなかったから新鮮だわぁ」

「何気にネクが一番はしゃいでたよね」

「べっ、別にいいでしょう!?」

「もちろん。インスタにバッチリ!」

「ちょっ!?」

「ネクさん。このパーティに入るってことは、そういうことだから」


 いつかあーしがルビーちゃんにいった言葉を、そのままネクに送るルビーちゃん。もう完全に染まっちゃったね。

 そんなルビーちゃんのお腹が、お昼ごはんの時刻を鳴いて知らせてくれる。


「・・・おなか空いた」

「いい感じに疲れたし、お昼にしよっか」

「おう、んじゃ頼むわ」

「よろしくねぇ」


「「「「・・・」」」」


 お昼の催促の声が響くも、誰一人として動こうとはしなかった。


「あーしもうクタクタで動けない」

「おいクモ女、テメェ新入りだろ。買ってこい」

「アナタこそ、魔法で回復できるし飛べるんだから、アナタが行きなさいよぉ」

「あー、魔力切れなんだわ俺」

「白々しい! じゃあルビー・・・っていない!?」

「ハイドで隠れやがったな・・・」


 メンバー全員が、海で遊んだあと特有の疲れに襲われ、動くのを拒否していた。


「もー埒が明かないし。じゃんけんで決めよ」

「よしきた」

「仕方ないわねぇ」

「ん」


 空間からニュッと生えてくるルビーちゃんの右手。・・・心臓に悪いから止めてそれ。


「いくよー。じゃーんけーん」


 ポンで勝敗が決まり、ゼルとネクが脱落。二人の一騎討ちへ。


「なぁオイ。俺とお前の決着がじゃんけんってのもしょうもねえ。ここは一つ、別の方法で決着つけようぜ」

「・・・いいわねぇそれ。アタシもアナタとは個人的に決着をつけたいと思ってたのよねぇ」

「えっ、ちょっ、二人とも趣旨忘れてない?」


 なぜか変な方向にヒートアップする二人。あーもうこうなったら止まらないだろうな。

 

「勝負はそうだな、ビーチバレーでどうだ? スキル魔法有りのツータッチ、それと相手への直接攻撃は無しで」

「直接は無しね。ウッフフ、いいわよぉ。受けて立つわぁ」

「ちょちょちょっ!? 二人とも危ないのは止めてよ!? 他に人いるんだから!」

「わーってるよ。それより撮影の方頼むぜ」

「レフェリーじゃなくて!?」


 ゼルもゼルでインスタ脳に染まっていたみたい。


「先攻はアタシでいいかしらぁ?」

「おう、好きに打ってこい」

「なら、お言葉に甘えてェッ!」


 糸で器用にボールとネットを作り出したネクは、そのまま力一杯のサーブをお見舞いする。・・・何気に器用な真似するなネクって。


 ゼルは自分より大きいボールが迫り来る中でも表情一つ変えず、冷静に何かの魔法を唱えはじめる。


「『スプラッシュ』!」


 ゼルの足元に現れた水色の魔方陣から、勢いよく水が吹き出しボールを跳ね上げる。

 そのままゼルは空中を滑るように移動し、さらに右手に魔方陣を作り出す。


「『ロックハンズ・ミニ』!」


 名前の通り小さめの岩の腕を作り出したゼルは、お返しとばかりにネクへ向かって強烈なスパイクを叩き込んだ。


「甘いわよォ!」


 ネクは素早く糸で網を作り出し、なんとボールを吸着。

 そのまま網をほどいて長い糸へと形を変え、遠心力を利用してゼルの脳天に向けて叩き込む。・・・もうそれ反則じゃないの? 少なくともあーしの知ってるビーチバレーとは違う。


「ンガァ!」


 ゼルは脳天に向けて降り下ろされたボールをそのまま頭で弾き返した。

 その気合いの入ったレシーブに、観客たちがワッと盛り上がる。・・・っていつの間に!?


 ワーワーとあーしをおいてけぼりに盛り上がる観客に気押され、助けを求めてルビーちゃんの方を見れば。


「・・・あっ、ごめん。我慢できなくて」

「・・・謝るのはこっちだよルビーちゃん」


 いつの間にか大量に買ってきていた焼きそばをすするルビーちゃんが目に入った。・・・ほんとごめんね。






 試合開始からどれくらい経っただろう。

 マリンスポーツでなぜか満身創痍の二人は、肩で息をしながら語り始めた。


「以外と粘るじゃねえか・・・見直したぜ」

「アナタこそ・・・けっこう頭が回るのねぇ」


 互いを認めるように笑い合う二人。・・・何これ?

 

「さぁー! 点数はそれぞれ二対二! 次に相手のコートへボールを叩き込んだ方の勝利だァーーー!」


 いつの間にか沸いて出た実況に場はさらに過熱し、観客は固唾を飲んで二人を見守る。

 ボールは今ゼルの側にあるけど、どうも魔法を使いまくったせいで魔力もギリギリみたいだった。

 そしてネクの方も、今まで裏方メインだったツケが回ってきたのか、体もフラフラで足元がおぼつかない様子。


「さぁてクライマックスだ! 俺様の勝利とクモ女のポロリで勝負を決めようじゃねえか!」

「ちょっ、何を言ってるのかしらぁ!?」

「しっかり撮ってろよアカネ!」

「撮らないから! あーしの記事は健全だから!」


 あーしの言葉を聞いているのかいないのか、ポロリというワードでより一層盛り上がった観客に見守られながら、ゼルは空高くボールを投げる。

 青い空へと高く高く飛んだボールに向かって、力一杯飛び上がるゼル。

 青い空と海をバックに、赤い髪をなびかせて宙を舞うゼルの姿が妙に絵になっていて、一枚撮ろうと構えたその時、背景の海が突然大きく跳ね上がった。


「・・・えっ?」


 大きな音と波しぶきを伴って現れたのは、昨日アセムの獲った魚に負けない大きさを誇る、イカの魔物。

 一瞬何が起きたのか分からず、場の全員がイカの魔物に注目したまま時が止まる。

 ・・・サーブ途中だったゼルを除いて。


「オラァ!」

「ブフッ!?」


 イカの魔物もお構いなしにサーブをかまされたネクは、よそ見していたせいもあって見事な顔面レシーブを決める。

 その軽快な音を引き金に、海岸はパニックに陥った。


「よっしゃ! 俺の勝ち・・・って何だコイツ!? いつの間に!?」

「今さっきだよ!」


 あーもう、せめて休みの時くらいはゆっくりさせてよね!

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