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異世界インスタ  作者: 五寸
第1章 異世界インスタグラマー爆誕
16/117

15話

「ルビーちゃーん! こっち向いてぇー!」

「次、金髪メイドお願いします! 貧乳で!」

「イセリア農園の青髪の娘を頼む!」


 ゴブリン討伐クエスト・・・からクレイマン討伐に変わったクエストとピクニックを終えたあーしたちは、ギルドに今回の報告を済ませた後、例によってギルドでの宴会を楽しんでいた。

 ルビーちゃんの変装したバリエーション豊かな女の子たちを全力で堪能し、それをインスタに上げた結果、昨日以上の人数がギルドに詰めかける騒ぎになり、アカネさんがいると忙しくなるんですよーと、職員さんがニコニコ笑顔で言っていた。儲かってるんだろうな。

 ・・・それとゴメン、ルビーちゃん。


「やるじゃねえかゼル! ロケットパンチだかいうあの魔法! イカすじゃねえか!」

「俺も魔法覚えたくなっちまったぞこの野郎オイ!」

「ハッハッハ! せやろせやろ? もっと持て囃せお前ら!」


 ゼルはゼルで例のロケットパンチが男たちに大受けし、これまた大騒ぎに。

 人の感性は異世界も一緒なのかな。いわゆる男のロマンってやつ?


 もちろんその二つの大騒ぎは、あーしにとってもメリットがある。

 二人のおかげでここ最近のアクセス数やいいねの数はかなりの勢いで伸びてきている。フォロワーの数は今でようやく八百人越え。世界のどの辺まであーしのインスタ記事が届いてるのか分からないけど、スマホのない異世界でこの数ならまぁまぁ行ってる方じゃないかな。・・・そうだと思いたい。


 ただ、レベルの方は相変わらず1のままだった。

 おそらくいいねかフォロワーの数がレベルアップに関係してるんだろうけど、明確なラインが分からないっていうのは結構もどかしいなぁ。

 ていうか、あーしがレベルアップしたらどうなるんだろう。

 この異世界用インスタみたいに、また変なアプリでも追加されるんだろうか。


「まぁスマホ自体はすでにおかしくなってるんだけどね・・・」


 実はこのスマホ、充電が必要なくなった。なんなら電池残量のメーターすらないし。次にカメラのズームは限界無し。どこまで行けるか試してみたら顕微鏡みたいになった。さらに容量も制限が無いっぽい。おかげで写真に動画撮り放題だからありがたいけど。


 というように、あーしのスマホは〇ップルもビックリのスーパースマホと化していた。多分これも神様パワーなんだろうな。


「そこまでするならあーし自身にもちょっとパワー欲しかったり・・・なんて欲張りすぎかな」

「何言ってるの?」

「あっ、ルビーちゃん。おかえり」

「俺たちの人気に嫉妬でもしたか?」

「私は困ってる」

「まぁぶっちゃけ少しはあるけど、あーしが気にしてるのはそこじゃなくて」


 そう言ってあーしは今まで撮ってきた写真の一覧を二人に見せる。


「・・・ルビーの比率多くねえか?」

「撮りすぎ」

「いやいやまだ足りないくらい・・・じゃなくてさ。この世界の絶景スポット全然撮れてないなって」


 あーしの撮った写真は二人の写真に始まり、料理の写真に魔物の写真。あとは戦闘中に撮った動画とかばかりで、心躍るような絶景なんかは未だ出会えていない。

 もっとも、あーしからすれば珍しい建物はそれなりにあるんだけどね。例えば最初に撮った時計台とか冒険者ギルドとか。

 まぁそういうのはこの世界の人からすれば見慣れた光景なわけで、当然ながら記事の伸びは良くない。


「ラクティスは駆け出しの集まる街。だから周辺についてはほとんど調査済み」

「じゃあやっぱ他の街に行くしかないかな? ・・・となるともう一人メンバーが必要になって来るんだけど」

「いや、あるにはあるぞ。ラクティス近くの絶景スポット」

「あるの!?」


 あーしは身を乗り出してゼルに詰め寄る。


「落ち着け。ラクティスと中央都の間に山があるだろ。あそこの頂上に『氷桜』っつうのが生えてるんだが、これが大層見ごたえあるっつう話だ」

「氷桜・・・」

「っ!」


 ゼルの話を聞いて、なぜかあーし以上に強く反応するルビーちゃん。前から気になってたとか?


「あの山は、ゴブリンとブラッドグリズリーが住処にしてる。私達だけじゃ危険だと思う」

「うへぇ・・・やっぱそう簡単にはいかないか」

「そうは言っても、ここ意外だと一般人でも見慣れた所しかねえぞ」

「・・・それも困るなぁ」


 元々あーしは異世界の絶景スポットを目当てにやってきたわけだし、いい加減一か所くらいは行っておきたい。ていうか他の絶景スポットだって冒険者しか行けない危険な場所って話だし、今後の為にも戦闘含め慣れておいた方がいいとも思ったり。

 ・・・だからって死んだら元も子もないしなぁ。


 あーしがうんうん唸っていると、なぜかその隣でルビーちゃんもうんうんと唸っている。なに? あーしのモノマネ?

 なんてふざけたことを考えている間に、ルビーちゃんは迷った様子を見せつつも腰のポーチから筒状の紙を取り出し、テーブルの上にポイポイと積み重ねた。なにこれ?


「おぉ、スクロールか。珍しいな」

「職業上、逃げる準備は万全だから。もしものために」

「閃光、防壁・・・転移まであんのか、すげえな」

「ねえ、スクロールってなに?」


 また新しい異世界単語が出てきたので、解説のゼルさんに聞いてみる。


「魔法を閉じ込めた紙の事だ。魔法使いじゃなくても魔法を使えるが、一回きりな上に高い」

 

 あぁー、だからあんなに迷ってたのか。ちょっと申し訳ないなぁ。


「あーしも買っといた方がいいかな?」

「止めろ。俺の存在意義が薄くなる」

「もうちょっとマシな理由考えようよ・・・」


 なぜこの妖精は変なとこでみみっちいのか。


「まぁでも、いつでも逃げられるのは大きいね。あー、でも高いらしいし、そこまでルビーちゃんに頼りすぎるのも悪いかな」

「私の知り合いが融通してくれるから、平気」


 ルビーちゃんが首をふるふると振りながら答えた。それでも迷ったような表情は消えてないけど。無理してないか心配だなぁ。


「マジかよ。その知り合い俺にも紹介してくんない?」

「ダメ。秘密」

「メシ奢るから」

「・・・・・・・・・・・・ダメ」


 今ものすごい葛藤してたなルビーちゃん。


「じゃあ明日はその氷桜を見に行くってことでいい?」

「・・・わかった。でも、今回ばかりは危なくなったら逃げるべき」

「安心しろよ。この俺様がついてる」

「「・・・・・・」」

「・・・何だよ」


 言わないとダメ? と、更に視線で訴えてみる。


「忘れたか? この俺様が不本意ながらもレベル7に到達しているクラスを。その気になればシェルを使ったまま下山できるから問題ねえよ」

「出来るの?」

「妖精の使う支援魔法はな、十倍燃費がいいんだ」

「極端っ!?」

「ほんとにな。あったま悪い特性だぜマジで」


 ゼルが辟易しきった顔で吐き捨てる。色んな意味で妖精やめてるよねゼルって。


「・・・・・・」


 一方ルビーちゃんの方は、ゼルの秘策を聞いてもまだ悩んだ表情が晴れていない。

 ・・・もしかして、今日あったことまだ気にしてるのかな。


「ねえルビーちゃ」

「・・・・・・おなかすいた」

「・・・」


 ・・・どうやら杞憂だったみたい。

 ほんっともうつくづく、締まらないパーティだわあーしたち。






「来いやオラアアアアアアアア!」


 というセリフを発しながら、ゴブリンの群れへと突っ込むゼル。どっちやねん。

 あーしたちは予定通り、始まりの街から北東へ進んだ先にそびえる、大きな山の中を突き進んでいる。

 この山の頂上にだけ自生する「氷桜」の写真を撮るために。

 名前の通り氷の花びらを咲かせる桜と聞いて、ようやくファンタジーらしい絶景スポットにもうワクワクが止まらない。


 まぁ、それだけが目的って訳じゃないんだけど。


「オラオラアアアア!」


 魔法で作り出した炎の両腕で、周囲のゴブリンを大雑把に薙ぎ払うゼル。


「熱くなるのはいいけど、木に燃え移るのだけは勘弁してよー!」

「あいよー!」


 適当な返事を返しながら、燃える両腕でなおもゴブリンをしばき回すゼル。

 あれはどう見ても妖精には見えない。一応撮影はしているけど、これは逆に評判下がったりしないだろうか。


 この山にはラクティスから繋がる山道があり、道なりに進めばたくさんの種族や物資が集まる、中央都へとたどり着く。人口比だけで言えば、実力者揃いの王都よりも多いらしい。

 そんな中央都とラクティスを繋ぐこの山道は、特に商人が行き来する割合が多く、それ故にゴブリンにとっての格好の狩場となる。・・・ってゼルが言ってた。


 今回はそのゴブリンが巣くう山の頂上に用があるので、ついでに討伐クエストを受けてお金を稼いでしまおうという魂胆だ。

 あーしとゼルは百万そこらのお金を持ってるけど、長い目で見れば大した金額でもないし、稼いでおいて損はないからね。


「シャアアアアア! ・・・っとぉ、何だよ。ビビってんのか?」


 炎の腕を大げさに動かし、ゴブリンを挑発するゼル。

 正直、格下相手に調子に乗る痛い奴に見えなくも無いんだけど、ゴブリン相手ならこれが一番有効らしい。

 事実ゴブリンたちは、言葉が分からなくてもおちょくられていることは理解したのか、緑色の顔を真っ赤にするまで怒っている様だった。


 そしてそれを待っていたかのように。


「っ」


 どこからともなく現れたルビーちゃんが、怒りで周りが見えなくなったゴブリンたちの喉を、短刀でかっさばいていく。うわグロ・・・。

 今回はちゃんと本物のゴブリンだからこその凄惨な光景に、撮影担当のあーしもさすがにカメラを背けてしまう。


 突如振り出した血の雨に困惑するゴブリンたち。

 その隙にルビーちゃんはまたも風景に溶け込み、ゼルへとバトンタッチする。


「これで終いだ!」


 掛け声と共に炎の腕を巨大化させ、左右からゴブリンたちを包み込む。

 完全に判断力を失ったゴブリンたちは、そのまま炎に抱きこまれて消え去った。


「ふぅー。ナイスだルビー! 相変わらずのいぶし銀な仕事ぶりだな!」


 魔法を解除し、ルビーちゃんに労いの声をかけるゼル。

 言われて空間から染み出すように現れたルビーちゃんは、ふるふると首を振って答えた。


「あれはゼルさんのおかげ。私は大したことはしてない」

「いや滅茶苦茶大したことあると思うよ」


 今も当たり前のようにやってたけど、その景色に溶け込むやつスゴすぎない? 見るたんびに小声で「うぉっ」って言っちゃうもんあーし。


「・・・」


 俯きながら、ほんのり頬を染めるルビーちゃん。かわいい。

 本物の妖精を遥かに上回るかわいさを写真に収め、ついでにあーしはクエストを確認する。


「今のでだいたい十匹前後だったけど、これって何匹倒せばいいの?」


 クエスト内容の書かれた記事には、ゴブリン討伐と書かれているだけで、これといった具体的な数字が示されていない。


「特に指定はない。好きな数だけ倒して終わり」

「え、何それ?」

「この辺のゴブリンは定期的に増えるからな。ギルド側もついでにやっつけてくれみたいなノリで出してたと思う」


 適当だなぁ・・・。

 ていうか定期的に増えるって、ゴブリンってどういう生態してるんだろうか。


「連携もバッチリだし、ガンガン倒して稼げるだけ稼いどこうぜ」

「了解」

「はりきり過ぎて魔力切れになるのは止めてよ」


 そんな風に軽口を叩きながら、あーしたちは氷桜を目指して再び歩き始めた。

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