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異世界インスタ  作者: 五寸
第1章 異世界インスタグラマー爆誕
13/117

12話

「初めまして、私はルビー。レベル4のアサシンです」


 そう言って深々と頭を下げる、ルビーという女の子。

 頭を動かす度にさらさらと流れる黒髪は星空のように綺麗で、長い前髪から覗く白銀の瞳も相まって、まるでこの世の存在とは思えない雰囲気を漂わせていた。

 おかげで面接するあーしたち含め、滅茶苦茶目立っている。

 まぁ気持ちは分からなくもない。かくいうあーしも色々着せて写真を撮りたい欲が昂りまくってるし。


 そうして若干鼻息が荒くなるあーしに、ゼルが横から肘でつついてきた。

 おっと、いかんいかん。


「オホンッ ご丁寧にどうも。あーしは赤羽茜、アカネでいいよ。職業はインスタグラマーやってます」

「俺様はゼル。いずれ魔王をぶっとばs」以下略。


 あーしたちの自己紹介を聞いて、ぺこりと頭を下げるルビーちゃん。


「えーっと、あーしたちのパーティに入りたいって事だよね。・・・一応聞くけど、応募先間違えてたりしないよね?」

「おまっ! 余計な事言うなよ!」

「仕方ないじゃん! ゼルがあーしらネタパーティと思われてるなんて言うから!」


 ギャーギャーと揉めるあーしたちを一切意に介する事なく、ふるふると首を横に振って意思表示するルビーちゃん。

 これが逆の立場だったら絶対落とされてるなあーしたち・・・。


「オホンッ あーしたちのパーティで間違いないって事ね。じゃあ一応、志望動機・・・とか聞いてもいい?」


 まさか異世界に来て、バイトの面接じみた事をやるとは思わなかった。

 ぶっちゃけバイトでのこの質問は意味が分からなったけど、今のあーしたちの状況だと話は別だ。

 あーしはインスタ映えが目的で、ゼルは名を広める為にいずれは魔王討伐。真面目に冒険者として稼いでいこうというのなら、他のパーティを強くオススメする。

 ・・・あれ? やっぱあーしたちネタパーティで間違ってない?


 なんて考えていると、ルビーちゃんが真っ直ぐな視線であーしに告げた。


「・・・私、アカネさんのファンなんです」

「えっほんと!? 嬉しー! ありがとー!」


 突然のファン宣言に、あーしは身を乗り出してルビーちゃんの手を握る。

 あーしもそれなりに有名にはなったけど、面と向かってファンと言われたのは、日本含めて今回が初めて。ヤバい、顔がにやける。


「だから、一緒のパーティになりたいなって」

「OKOK! 大歓迎だよ!」

「お前・・・」


 呆れた目で見つめてくるゼル。

 さすがにちょっと浮かれすぎたかなと、言い訳を探していると。


「ゼルさんも、あの見た事も無い魔法、カッコよかったです」

「歓迎しようお嬢さん。ようこそ、俺たちのパーティへ」






「そういえば、『アサシン』ってどんなクラスだったっけ?」

「案の定だなお前さん」

「うっさいし」


 歓迎会もかねた昼食をとっている中、雑談ついでにルビーちゃんに聞いてみた。

 戦力増強のために募集してたんだし、ちゃんと聞いとかないとね。まぁ一番役に立たないあーしが偉そうに聞ける立場じゃないけど。


「姿を隠して、敵の急所を狙い打ちます」

「戦闘前に敵の数を減らしたり、乱戦中に不意打ちでズバッとやったりな。あとはレンジャーの代わりに斥候なんかも出来る」


 最低限の説明を済ませて大きな肉にがっつくルビーちゃんに変わり、説明役が板についてきたゼルが補足してくれる。

 なるほど、忍者みたいなやつね。ルビーちゃん黒髪だし、くのいちコスとか似合いそう。

 しかしこの娘、男前な食いっぷりだなあ。

 ギャップ萌えなので、バンバン写真を撮っておく。


「かなり癖の強い構成だが、まぁ悪くないんじゃねえか」

「そうなの?」


 戦闘に関しては素人なので、ストレートにゼルに聞いてみる。


「さっきも言った通り、アサシンなら戦闘前に敵の数を減らすことが出来る。お前さんのスマホもあれば、そこら辺のフォローもしやすいだろうしな。戦闘中は俺がメインで戦って、打ち漏らしはルビーが処理。アカネは撮影。完璧だ」

「そんな簡単にいく?」


 今までの戦いを振り返っても、物事が順調に進んだ試しなんて一回もないし。


「まずは安全な所で練習した方がよくない? そうすれば急な魔力切れとかの問題点も事前に分かるし」

「すんません」

「なら、いい場所がある」


 そう言ってルビーちゃんが腰のポーチから取り出したのは、そこそこの厚さがある冊子。


「なになに・・・『ラクティス周辺ダンジョン完全攻略ガイド』・・・何コレ?」

「見ての通り」

「いや、その、えぇ・・・」


 ため息と一緒に変な声が漏れてしまう。

 ダンジョンってこんな街角ガイド感覚で紹介されるもんなの?


「ラクティスは駆け出しの集まる街だからな。こういう形でギルドがフォローしてるんだよ」

「事前の情報収集は重要。それを教えるためでもある」

「・・・意外と考えられてるんだね」


 少し感心しつつページをめくると、数ページごとに分けて各ダンジョンの内容が懇切丁寧に書き込まれていた。

 出てくる魔物、仕掛けられている罠、地図、おすすめパーティなどなど至れり尽くせり。


「つまり、これを頼りに冒険者はレベル上げするってこと?」

「いや、ダンジョンに籠ったところでレベルは上がらんだろ。何言ってんだ?」

「えっ? いや~、えっと・・・」


 またファンタジーギャップにつまづいた。だからあーし知らないんだってば!


「レベルを上げるには、毎日の鍛錬が一番重要。魔物との戦闘やダンジョンへの挑戦は、その成果を試すものでしかない」

「剣士なら素振り、弓なら的当てなりな。まぁ才能なり素質なりが欠けてりゃ、レベルは一切上がらねえんだが」


 世知辛いなぁ・・・これじゃ元居た世界と大して変わらないじゃん。ファンタジーどこいった。


「じゃあ何のためにダンジョンに行くの?」

「経験だよ。金目の物こそ無くなってるが、魔物どもは定期的に湧きやがるからな。戦闘のコツ、ダンジョンへの理解、素材集めにパーティの模擬戦。探索されきったダンジョンでも特徴は千差万別だ。そうやって知識を積んでおけば、死亡率はぐっと下がる」

「逆に未探索や探索中のダンジョンは、危険度や利益面から有名な冒険者に斡旋される仕組み」

「はー、なるほど」

「お前分かってねえだろ」


 失礼な、ちゃんと分かってるし。

 つまり部活みたいなカンジなんだと思う。試合に向けて普段は練習、みたいな。


「じゃああーしたちもそれに倣って、ダンジョンで練習しようってことね」

「そうなるな。で、どれにするよ」

「あーしインスタ映えしそうなところがいい」

「言い出しっぺのお前が趣旨忘れてどうすんだよ」

「それに、この辺のダンジョンに見栄えの良いものは無いと思う」


 ガイドに載っているダンジョンは洞窟のダンジョン、地下迷宮ダンジョン、遺跡ダンジョンの三つ。

 ワンチャン遺跡ダンジョンあるかなと思ったけど、そもそもこうやってガイドが出てる時点で需要が薄そうだった。

 うーん、どうしよっかな・・・。


「で、どこにするよ。俺はどこでも構わんが」

「地下迷宮が良いと思う」

「あーしも賛成。洞窟はなんか汚そうだし、虫出るみたいだし」

「基準そこかよ」

「じゃあご飯食べ終わったら行こっか」

「おう」

「分かった」


 今日の予定が決まり、昼食を再開する二人。

 可愛らしい見た目で男前な食いっぷりを見せる二人を尻目に、あーしはダンジョン攻略ガイドとのにらめっこを続けていた。

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