11話
「ハッ! まさか本当に駆けつけてくるとはなぁ」
「約束は守るさ。それにもちろん、助けに来たのは僕だけじゃないよ」
「ダァーーーーリィーーーーーーーーン!!」
「・・・」
ルークさんからの補足と背後からの呼び声に、ゼルはため息を吐きながら無表情に変わる。多分魔王でもゼルをこの表情にすることはできないと思う。
そんなゼルに向かって好き好きオーラ全開で現れたシルヴァさんは、ほとんどタックルに近い勢いでその小さな体に飛びついた。それをゼルは珍しく拒むことなく、死んだ目をしながらされるがままになっている。あれ、珍しい。
「あれ? 今日はダーリンが冷たくない」
「相手する体力がねえだけだ。分かったらさっさと離れろ」
「さっきの戦いで、愛の力に助けられたから」
「ウッフフ、そうねぇ。あれのおかげで命拾いしたわぁ」
「おまッ!? 余計なこと言うんじゃねぇテメェら!」
「ああん! ツンデレなダーリンも大好きぃーーー!!」
「ああああああ!! 頰を擦りつけんな!! 離れやがれテメェコノヤロー!!」
ゼルらしい不器用なお礼を速攻でバラされ、心の底から二人を睨みつけながらシルヴァさんの手の中でもがくゼル。あの、楽しんでるとこ悪いけどここ魔王城だから。てか魔王目の前だし。
そんなシルヴァさんたちを優しい笑みで眺めていたルークさんは、すぐに鋭い視線に切り替えて目の前の魔王へと差し向けた。
「ようやく会えたな、魔王」
「お前たちは、王立騎士団の団長と副団長だったな。まさか、境界線での戦を制してきたのか?」
「あぁ」
「えぇっ!?」
「うそぉ!?」
ルークさんのセリフに魔王よりも大きいリアクションを浮かべて驚くあーしとネク。いやだって、戦力半分以下になったって言ってなかったっけ? 隙を見て抜けてきたとかなら分かるけどさ。
そんなあーしに補足してくれるのは、今も嫌がるゼルを撫で繰り回すシルヴァさん。そろそろ放してあげてもいいと思う。
「アカネちゃんのインスタのおかげだよ」
「えっ、ここであーし? 何で?」
「ついさっき、エギル撃破とエイミス様救出の記事が上がっていた。これを見て奮起しないようでは、騎士団の名折れというものさ」
「やっぱ士気って大事だからねー」
言われてハッと思い返す。確かにあーしはついさっき短めの記事を上げていた。写真はブレブレで何が映ってるか分かんなかったけど、まぁ報告くらいはと思って。
まさかそれが、ここまで状況を動かしていたなんて。
かなり予想外だけど、インスタグラマーらしい成果で思わず頬が緩んでしまう。
「後はお前だけだ! 魔王!!」
ここまでの状況説明を終えて、ルークさんはその手に持った剣を魔王へと差し向けてそう叫ぶ。おぉ、なんかめっちゃ勇者っぽい。
対する魔王は俯いて肩を大きく震わせていたかと思えば、勢いよく顔を上げて盛大に笑いだした。
「フフフフハハハハハハハハハハハハハ!! 素晴らしい! まさかあの状況からここまで盛り返してみせるとは!! 流石の余も想定していなかったぞ!」
瞳孔を開いて心底楽しそうに笑う魔王は、大仰に手を開いて演説のようにこう叫んだ。
「役者は揃った! 魔王軍と人類、互いに残った戦力はこの場に集まった者たちのみ! ならばここで雌雄を決しようではないか!!」
「ハッ! 上等だぜ! テメェをブッ殺して俺が最強の座を手に入れる!!」
売り言葉に買い言葉でそう叫んだのは、今もシルヴァさんの胸に抱かれているゼルさん。ほんとつくづく締まらないなぁ・・・。
そんなゼルを尻目に、ルークさんは苦笑しながら一応といった体であーしたちにも聞いてきた。
「連戦続きで申し訳ないけど、手伝ってもらえるかな? 君たちがいれば心強い」
「問題ない」
「ウフフ。まぁ、ここまで来れば最後まで付き合うわぁ」
「えっと、あーしはどうすれば・・・」
「んなモン決まってんだろ! この戦いを生放送して俺様の勇姿を全世界に」
「アカネ君には、エイミス様を守っていてほしい。お願いできるかな?」
「! 分かりました!」
ちょっと居心地の悪かったあーしを、ルークさんがきちんと役割を振ってフォローしてくれる。やっぱこの人イケメンだわ。あと一応ゼルも。
まぁ確かに、魔王との最終決戦なんて今後一生撮れる機会無いかもだし、あーしは生放送の準備をしながら、魔王に向かって構えるみんなの背中をフレームに収める。
それを満足そうに眺めていた魔王が部下に攻撃の指示を出し、ついに最後の戦いの火蓋が切って落とされた。
「イーライ!」
「御意」
魔王が鋭く名前を叫ぶと、前で構えていたイーライが一気に加速してあーしたちとの距離を詰めてくる。それを真正面から迎え撃ったルークさんは、甲高い金属のぶつかり合う音を響かせながら、鍔迫り合いへと持ち込んだ。
「改めて自己紹介を。某の名はイーライ。黒騎士の称号を授かった、魔王様の黒き剣」
「これはご丁寧に。僕は王立騎士団団長、ルーク」
「我が主の命により、貴殿の首を貰い受ける」
「ならば抵抗させてもらおう!」
鍔迫り合いの状態で何やらかっこいい会話を交わした騎士二人は、互いを大きく弾き飛ばした後、激しい剣戟を交えながら端の方へと移動していく。
その一部始終を見送った後、続いてゼルが先陣を切って動き出した。
「雑魚どもは任せるぞテメェら。俺様は魔王の奴をブッ殺す」
「ちょっ、待ってよゼル! そんな勝手に!」
「俺様が今まで何のために冒険者やってきたと思ってる! こいつだけは誰にも譲れねェ!」
そう叫ぶなりゼルはいつものように岩の右腕を生み出しながら、一番奥で構えている魔王に向かって飛び出していく。しかしその周囲に控えていたゴーストメイルが当然のように動き出し、ゼルの行く手を阻む。
「邪魔すんじゃねぇガラクタども!! 『シェルスマッシュ』!!」
そんな鎧騎士の集まりに向かってゼルは壁の魔法で強化した岩の拳を打ち出し、ものの見事にその全てを吹き飛ばしてみせた。おお、さすがゼル!
名前の通り中身がないのか、吹き飛ばされたゴーストメイルたちは虚しい音を響かせながら鎧を辺り一帯に撒き散らし、そうして空いた道に堂々とゼルが飛び込んでいく。
「くたばりやがれェエエエエエエエエエエ!!!」
「気が早いな、妖精よ」
「あァ!? ・・・ッ!?」
意味深に笑う魔王に眉を歪めていたゼルは、何かを察したように突然壁の魔法を展開した。
すると一拍置いてバラバラになった鎧のパーツが猛烈な勢いで四方八方からぶつかってきて、そのまま打ち破ってやると言わんばかりに何度も何度も前後して叩きつけてくる。あの鎧ってまさか!?
「ゴーストメイル!?」
「小賢しいマネしやがって! オラァ!!」
ゼルは壁の魔法を一気に拡大して、周囲に纏わりつくバラバラゴーストメイルをまとめて吹き飛ばした。
しかしその一瞬の隙に魔王が赤い魔法陣を呼び出し、自身から注意の逸れたゼルに向けてそれを解き放つ。
「どこを見ている。『プロミネンス』」
「ヤベッ!? ぐっ!?」
赤い魔法陣から生み出された爆発はいとも簡単にゼルの壁の魔法を砕き割り、無防備になった周囲にもう一度バラバラゴーストメイルたちが集まって来る。
そのままゼルを取り囲みながら一か所に寄り集まった鎧のパーツは、最終的に巨大な籠手のような姿を形取り、その手に掴んだゼルを思いきりあーしたちへと投げ捨てた。
それをネクの作った網が見事キャッチし、戦いの仕切り直しを図る。
「なに一人ではしゃいでるのよぉ」
「あァ!? んだとクモ女コラ!」
「あまり突っ走らないでゼルさん。気持ちは分かるけど、こういう時こそ協力しないと」
「あーしたちはパーティなんだから」
「・・・チッ、悪かった」
ネクにはいつも通り食って掛かったものの、あーしとルビーちゃんにも諭されたからか、バツが悪そうに謝ったゼル。ルビーちゃんの言う通り、メンバー全員ゼルの気持ちは分かってるから。
「ちぇー、なーんか妬けちゃうなぁー」
「んな事よりあのガラクタ共だ。どうなってんだありゃ」
「ゴーストメイルは名前通り、鎧そのものが本体で中身が存在しない。倒すなら鎧自体を破壊するか、操っている術者を倒す必要がある」
「じゅちゅしゃって・・・」
「言えてねえぞ」
「うっさいし!」
「ま、彼を倒す事になるわねぇ」
噛んだあーしには一切触れずにネクが視線を向けるのは、今もルークさんと激しく切り結んでいる黒騎士、イーライの姿。
互いに一歩も引かない剣と剣のぶつかり合いは、しかしルークさんの方が優勢に見えた。
「『グランドアッパー』!!」
「むっ!?」
ルークさんはエントランスの床ごと抉る勢いで剣を振り上げると、そうして巻き上げられた瓦礫の破片がショットガンのような勢いでイーライへと襲い掛かった。
突然繰り出された広い攻撃にイーライが思わず距離を取ると、それを見計らっていたかのようにルークさんは追撃を仕掛ける。
「『ソニックスラッシュ』!!」
「ぬぁっ!?」
鞘に剣を収めて技を叫んだかと思えば、一瞬にして距離を取っていたイーライの背後へと移動していたルークさん。
まさに居合斬りのような一瞬の剣捌きは、一、二秒遅れてから気づいたようにイーライの首をゆっくりと転がり落とした。
「えっ、やった! 倒した!」
「そんな訳ないでしょう」
「えっ?」
「どういうことネクちゃん?」
無邪気に喜ぶあーしを冷静に鎮めたネクは、その意味について尋ねたシルヴァさんからの問いかけに答えない。
見ていれば分かるとでも言いたげな顔に、もう一度ルークさんたちへと視線と一緒にカメラを向けると、驚きの光景がフレームの中に映り込んだ。
「っ!? ルーくん後ろ!!」
「っ!? なっ!?」
「『クリスタルランス』」
何とイーライは首を失ったまま魔法を唱え、背中を向けていたルークさんへと極太の氷の槍を撃ち出した。
シルヴァさんからのフォローでギリギリ直撃は避けたものの態勢を崩してしまい、そこに未だ首なしのイーライが剣を振りかぶって襲い掛かる。
「『プロミネンスブレイク』」
「くっ、『シェル』!」
赤い炎を纏ったイーライの剣は、咄嗟に唱えたルークさんの壁の魔法に直撃するなり大爆発を引き起こした。
爆音の中でかすかにガラスが割れたような音が聞こえたかと思えば、立ち昇る黒煙の中から煤に汚れたルークさんがあーしたちの下へと飛び退いてくる。
「ルークさん! 大丈夫!?」
「大丈夫。助かったよシルヴァ」
「どーいたしまして。それよりあいつ何者なのネクちゃん?」
「今ので分からなかったかしらぁ? 彼の正体はアンデッドよぉ」
「えっ!? そうなの!?」
「いかにも」
ネクからのネタ晴らしを一切に気にした風も無く、イーライは拾い上げた自分の首から兜を脱がす。
そうして中から現れたのは、どういう訳か真っ黒に染まったガイコツの顔。しかも普通のスケルトンと違って、目の部分とかのパーツの造りが妙に鋭くなっている。悪い言い方をすれば中二っぽいデザイン。
「えっと、あれって・・・?」
「ゴアスケルトン。幾多の戦場を潜り抜けたスケルトンの上位種よぉ」
「イーライ様はその武勲を讃えられて、黒騎士という称号と幹部の座を授かった」
「やっぱ詳しいねルビーちゃん。でもネクちゃんはどうして?」
「えっ? あっと・・・ル、ルビーに教えてもらったのよぉ」
正体をバラしているルビーちゃんとは違って、元幹部の秘密を未だ守ったままのネクは、シルヴァさんからの純粋な質問に上ずった声で答える。さっきのもカッコつけて黙ってたんじゃなくて、単に言葉を選んでただけかもしれない。
「紹介に預かった通り、某含め我ら黒騎士団は不死者の集まり。首を落とされた程度で倒れはせん」
そう言いながらイーライは兜と一緒に首を付け治すと、改めて魔王の前に立ってあーしたちへと剣を差し向けた。さらに散らばっていたゴーストメイルたちもそれぞれ騎士の姿に戻り、騎士団としてあーしたちの前に立ち塞がる。
「ど、どうするの? 相手死なないみたいだけど」
「関係あるか。物があるなら粉々に叩き潰しゃいいだけだ。なんならアンデッドらしく、聖なる光で地獄に送ってやってもいい」
「相変わらず物騒な考えしてるね・・・」
「となると、あたしがルーくんのフォローに回ればいい?」
「細けぇ所は詳しい奴が調整するだろ。なぁクモ女?」
「いきなり無茶振りしないでくれるかしらぁ!?」
「頼りにしてるよ、ネク君」
「アナタまでぇ!?」
唐突な二人からの無茶振りにネクがあたふたする中、ようやく作戦が固まったのを察したらしい魔王が話しかけてくる。多分固まってないよあの様子じゃ。
「作戦は決まったか?」
「あぁ、お前らが律儀に待ってくれるおかげでな」
「フッ、そのような無粋な真似を余は好かん。全力を叩き潰してこその魔王よ」
「ハッ! つくづく気が合うな魔王サンよォ!!」
そう叫ぶなりデジャブのようにゼルが猛スピードで飛び出すと、案の定ゴーストメイルたちがその行く手に立ち塞がった。
しかし今度はそれも織り込み済みだったのか、ゼルは不敵な笑みを浮かべながら魔法を唱える。
「『シェル』!」
「む?」
「ぬっ!?」
「えっ、ゼル!?」
壁の魔法を唱えたゼルは、何を思ったか自分ごとゴーストメイルを壁の中へと閉じ込めた。それでも一切怯むことなく襲い来るゴーストメイルたちの攻撃をかわしながら、ゼルは更に魔法を唱えてその手に雷を生み出す。
「喰らえ新技! 『サンダーケェエエエエエジ』!!」
ゼルの両手から無差別に放電された雷は、周囲を覆う壁の魔法に反射してゼルもろとも雷の嵐へとゴーストメイルを飲み込んだ。
思わず目を覆うほどの激しい電撃にはさすがのゴーストメイルたちも動きを止めたものの、それでも決定打にはならないのか鎧を焦がした程度で収まる。
「チッ、良い鎧着てんなオイ」
「ちょっ、何してんのゼル!?」
「見ての通りだ! このガラクタ共は俺様が引き受ける! そっちの骨野郎は頼んだぞ!」
そうやって一方的に告げるなり、ゼルは壁の中でのデスマッチを再開した。
「ふむ、中々酔狂な妖精もいるものだ」
「それがゼルさんの・・・良い所」
「言い淀むんだそこ」
「それで、僕らはどうすればいい? ネク君」
「・・・アナタたちは好きに戦いなさいな。どう転がすかはこっちで考えておくわぁ」
「おぉ、頼もしいねネクちゃん」
「あんまり嬉しくないわねぇ」
ネクはルークさんたちにそう指示を出しつつ、今もデスマッチを繰り広げるゼルとチラチラ目配せを行う。えっ、アイコンタクト出来んの二人は?
「ならお言葉に甘えて。行くぞシルヴァ!」
「りょーかい!」
それぞれに武器を構えた騎士団の二人は、今も魔王の前で立っているイーライへと斬りかかる。
まずはルークさんが先制してイーライの態勢を崩し、そこに光の力が宿った精霊槍をシルヴァさんが突き刺した。
しかし。
「わっ!?」
「甘い」
イーライはゴーストメイルと同じように体を分離させ、自身の胴体を狙ってきた精霊槍を見事に回避してみせた。そのまま上半身でルークさんを、下半身でシルヴァさんを弾き飛ばし、更にそこから追撃の魔法を唱える。
「『アイシクルスピア』」
「『シェル』!」
「なんの!」
着地した二人の周囲に降り注いだつららの雨を、ルークさんは壁の魔法で、シルヴァさんを精霊槍をプロペラのように回転させて防ぎきる。さらにルークさんは壁の中で反撃の魔法を唱え、防御を解くなりそれをイーライへと解き放った。
「『フレイムスフィア』!」
「易い!!」
ルークさんから撃ち出された巨大な火の玉を、イーライが一刀のもとに切り捨てる。
パカっと真っ二つに割れた火の玉はイーライの背後で爆炎に変わり、もくもくと立ち昇る黒煙が辺り一帯に広がっていく。
その中からぬるりと現れた黒い影が、イーライの背後へと音もなく忍び寄り、腰に差した小刀を思いきり振り抜いた。
「っ!」
「見えているぞ」
「なっ!?」
しかしイーライは何と上半身ごとぐるっと振り向き、背後に忍び寄っていたルビーちゃんを思いきり弾き飛ばした。
さらにそこから体のパーツをバラバラに分解し、背中を曝したルークさんたちからの攻撃もいとも簡単に回避してみせる。
「はぁっ・・・やるな」
「スケルトンの騎士って、思った以上に厄介だね・・・」
「王立騎士団のトップ二人にお褒め頂けるとは、光栄である」
再び人型に戻ったイーライが、ルークさんたちに向けて小さく頭を下げる。さすが魔王を守る騎士、強い・・・!
ゼルの言った叩き潰すにしても光の力で消すにしても、攻撃が当たらなきゃ意味が無い。あんな自由自在に分離する相手にどうすれば・・・。
「ねっ、ねぇネク。あれどうにか出来ないの?」
「仕込みはもう終わったわぁ」
「「「えっ?」」」
さらりとそう返したネクのセリフに、ルビーちゃん以外の三人の声がハモる。えっ、ちょっと待って。いつの間に?
呆気にとられるあーしに対し、ネクは何のことでもなさそうに答える。
「いつも通りよぉ。アナタたちが暴れてる間にアタシの糸を這わせただけぇ」
「バカな。某は貴殿にも警戒を・・・ぬっ!?」
腑に落ちないとネクに食って掛かろうとしたイーライの体は、その場から一歩も動く事は無かった。
よく見ればネクの極細の糸が、イーライの表面はおろか鎧の中にまで入りこんでガッチリと抑え込んでいる。
「ぬっ、一体いつの間に・・・!?」
「ルビーや団長さんたちの武器にくっつけてたのよぉ。アナタよく体をバラすから、それだけ強く絡まってくれて楽だったわぁ」
「ぬぅ・・・不覚!」
おぉ・・・思ってた以上にネクが大活躍してた。元同僚だけに癖もちゃんと把握してるし、全然無茶振りじゃなかったかも。
「それで、介錯は任せてもいいかしらぁ?」
「あ、あぁ。分かった」
ネクからの催促を受け取り、ルークさんは精霊槍を手に動けなくなったイーライの前へと進み出る。
その間、何故か魔王からの妨害を受ける事は無かった。
「ねっ、ねぇ、何で魔王は何もしてこないの?」
「さっき言ってたじゃなぁい。あの人はそういうのを好まないわぁ。たとえ、それが息子であってもねぇ」
「!」
そう言われて、あーしはこれまでの魔王の振舞いを思い出す。
確かにそうだった。あの魔王は、常に強い者を讃える性分なのだと。
その扱いは、今まで自身を守ってきた騎士に対しても変わらないようだった。
「見事だ」
最期にそれだけ言い残し、イーライの首は精霊槍の光に消えた。




