9話
「っしゃあああああ!!」
白い魔法陣が消え去り静けさに満たされていたエントランスに、ゼルの雄たけびが反響する。
見ればルビーちゃんとネクもガッツポーズを取り、それぞれに作戦の成功を喜んでいた。
もちろん、あーしも。
「よし、クモ女」
「はぁい」
「えっ? うひゃあ!?」
かと思えば一瞬で切り替えたらしく、あーしとエイミス様はネクの糸に絡め捕られてすぐに回収された。もうちょっとくらい浸っててもいいんじゃないの? まぁそんな状況じゃないけども。
ゼルたち三人はあーしが渡しておいたポーションで回復したらしく、さっきまで傷だらけだった自分たちはお構い無しにあーしへと駆け寄ってくる。
「アカネさん、ケガは?」
「大丈夫。それよりエイミス様が目を覚まさないんだけど・・・」
「んなモン帰ってから考えろ。もうここに用はねえ、ずらかる・・・ッ!?」
「『インフェルノ』」
すぐにでもここから脱出しようと考えていたあーしたちを大規模な炎の波が襲い、エントランスごと火の海に変えてその道を阻んでくる。
幸いギリギリで壁の魔法が間に合い火だるまになるのを免れたあーしたちは、赤く燃え盛る景色の向こうにぼんやりと映るシルエットへと視線を向けた。
「・・・クッ、クククク・・・ハハハハハハ! ハハハハハハハハハハハ!!!」
陽炎のように揺らめいていたその姿は、狂ったような笑い声を上げながら上半身を大きく逸らす。
ひとしきり笑って満足気な溜息を吐くと、ゆっくりとあーしたちに視線を向けて一人語りだした。
「今にして思い返せば、最初からそうだった・・・ラクティス、アルフィノエ、風の谷、モンテローエ、王都、そして今この瞬間! 私の計画を狂わせたのは、アカネ君、常に君だった・・・!」
「っ!?」
「ユニーククラスとは名ばかりの、ただの一般人と変わらない君に・・・ずっと・・・!!」
火の海の中を歩き進み、あーしたちの前へと再び姿を現したエギルは、他の誰でもないあーしに向かって、声音こそ落ち着いた、しかし底の見えない怒りを滲ませた言葉をぶつけてくる。
「認めよう・・・君がいる限り私の計画は完遂されない・・・だからこそ・・・!!!」
そしてついに、その怒りは爆発した。
「貴様を殺す!!! 今ここでッ!!!」
「ッ!?」
激昂したエギルは感情そのままに黒い霧を爆発的に生み出し、火の海と化したエントランスを瞬く間に飲み込んだ。
ほぼ一瞬であーしたちは完全な闇の中へと閉じ込められ、パーティメンバーの姿以外には何も見えなくなってしまう。
「なっ、何これ!? どうなってんの!?」
「野郎・・・どうやらここで決着をつけるしかねぇみてえだな」
『冥土の土産に見せてあげよう・・・カオスロードの神髄を!!!』
周囲全体にひたすら暗闇だけが続く異常な空間に、ひときわ大きいエギルの声が耳障りに響いてくる。
何を仕掛けてくるのかと全員で警戒していると、闇の中に金色に輝く一本の線が現れた。
あまりにも怪しすぎるそれに注目しつつも警戒している中、不意にその線が上下に開き、中から超巨大な金色の瞳が顔を出した。
「いぃぎゃああああああああああ!!?」
「うおっ、何だ気持ち悪い!?」
あまりにも狂気的な絵面にあーしは半泣きになって腰を抜かし、ゼル含む三人も揃ってドン引きした表情を浮かべる。
あーしたちがそんなリアクションを取っている間も向こうはお構いなしにもう片方の目や口に顔と次々にパーツを露わにしていき、最終的には上半身だけで三十メートルは超えていそうな巨大な化け物が闇の中に浮かび上がった。
禍々しく太い角や鋭く伸びた牙と爪、得体の知れない光る紋様の浮かんだ上半身と、もはや悪魔すらも超えるおぞましいその姿は、どう見てもこの世のものとは思えない。
ただその両の眼で光る金色の瞳が、あーしたちにそいつの正体が何なのかを悟らせた。
「エギル・・・なの?」
「さすがにこれは・・・アタシも聞いたことないわねぇ・・・」
「カオスロードの神髄か。ハッ! 面白ェ!」
「全員注意して。何を仕掛けてくるか分からない」
ルビーちゃんのセリフに全員が気を引き締めて化け物と化したエギルを睨みつけると、向こうは激情そのままに怒りの叫び声をあげながら、自身の周囲におびただしい数の黒い魔法陣を呼び出した。
『『テンタクルストーム』!!!』
「ヤベッ!?」
珍しく慌てた様子のゼルの視線の先では、黒い魔法陣の一つ一つから極太の黒い触手が生み出され、猛烈なラッシュをあーしたちに浴びせかけてきた。それを間一髪で三重の壁の魔法が阻んだものの、圧倒的なまでの威力と数でいとも簡単に一枚また一枚と砕き割ってくる。
「おおおおおおおおおおおおお!!! クモ女ァアアアア!!」
「分かってるわよぉ!!」
特に内容を語らずとも意思疎通はできているのか、ネクはエイミス様の首元に糸をくっつけ、そこからネク自身を経由してゼルへと魔力を送り込む。
するとゼルは割られる前に追加でどんどん壁の魔法を新たに張り出し、暴風雨のように打ち付ける黒い触手の攻撃をひたすらに耐え続けてみせた。
さすがのエギルもこれでは時間の無駄と考えたのか、攻撃を止めてまた別の魔法を唱え始める。
「ハァッ・・・!! ハァッ・・・!! 野郎・・・気合の入った攻撃してくるじゃねえか・・・!!」
「だ、大丈夫ゼル!? めっちゃ汗かいてるけど」
「ちょっと息切れしただけだ。問題ねぇ」
「だったらアレもどうにかしてもらえるかしらぁ・・・?」
強がりを言うゼルに対し、震えるネクの声が一切の煽りを抜いて質問する。
何事かとネクと同じ方へ視線を向ければ、エギルがブラックホールを思わせる闇の渦を作り出し、今まさにあーしたちへと差し向けようとしていた。ちょっ、嘘でしょ!?
「何アレ!? 何アレ!? きゃあああああああ!?」
「全員掴まって!!」
予想をはるかに超える強烈な吸引力であーしたちを飲み込もうとしてくる闇の渦に対して、ルビーちゃんがサイクロプスに変身して力づくで踏みとどまる。そこにあーしたちもネクの糸で絡みつき、吸い込まれまいと必死に堪えるものの、ルビーちゃん自身が少しずつ闇の渦へと引っ張られてしまっていた。
「ルビー頑張って! アレに吸い込まれたら間違いなく終わりよぉ!?」
「くっ・・・ぐぅ・・・!」
「どっ、どうしようコレ!? どうしたら!?」
「チッ、こいつでどうだァ!!」
ほとんどパニック状態であても無くあっちこっちを慌てながら見回していると、ほとんど悪あがき同然でゼルが魔法の弾丸を闇の渦に向かって撃ち出したのが見えた。
一発だけでどこか頼りなく見えるその魔法の弾丸は、闇の渦の吸引に従ってほぼど真ん中に入って消えていく。
それだけで終わりかと思った、その時。
『ウギャアアアアアアアアアア!!?』
突然闇の渦の中で激しい閃光が瞬いたかと思えば、エギルが大声をあげて苦しみ始め、それにつられて闇の渦も消えて無くなった。
どうにか命からがら助かったものの、いまいち何が起こったのか理解できず、あーしたちは苦しむエギルを尻目にゼルへと問いかける。
「ゼル、さっきのアレ何したの?」
「あのクソ女からもらった光の力あったろ。アレをシェルに詰めて撃ち込んでやった」
「あぁ、それで!」
「ちょっと待ちなさぁい。アタシたちのもらった力にそこまでの威力はなかったはずよぉ」
「俺が知るかよ。やってみたらこうなっただけだ」
「・・・多分これは、エギル様の方に原因があると思う」
「エギルに?」
考えるのをやめたゼルに代わって推理していたルビーちゃんが、今のエギルの状態を見て一つの仮説を語ってくれる。
「今のエギル様はおそらく、この空間と合わせて闇の魔法そのものみたいになってるんだと思う。そのぶん強力になった代わりに、ちょっとした光の魔法でも致命傷になるのかも」
「なるほどなぁ。あながち間違ってねぇ仮説だと思うぜ」
「となると、残った光の力はあと二つ」
「私と、ネクさんの二人」
「ここに来て重大な役割が回ってきたわねぇ・・・」
正直嫌なのかうんざりした表情を隠しもしないネク。まぁでもアレ相手にってなると気持ちは分からなくもない。
「やらなきゃここでくたばるだけだ。残る弾はあと二つ。確実に弱点に叩き込んで、あのクソ野郎を地獄に送ってやるぞ」
「弱点って?」
「ご立派な金色の目がついてるだろ」
「うげっ・・・目ぇ狙うの・・・?」
「それなら空中戦の方が都合がいい。みんな乗って」
ルビーちゃんは返事も待たずにグリフィンの姿に変身すると、あーしたちを乗せて闇の大空へと羽ばたき飛び立つ。
するとちょうど同じタイミングでエギルもダメージから回復したらしく、瞳孔の開いた巨大な瞳をギョロリとこちらに向けてきた。
『小賢しい真似を・・・!!』
「野郎の攻撃は俺が全部弾いてやる。攻撃の方は任せるぜルビー」
「了解」
「アタシはぁ!?」
ある程度の余裕が戻ったからか、エギルの言葉を一切無視して漫才を繰り広げるゼルたち。緊張感削がれるなぁ・・・らしいっちゃらしいけど。
対してエギルは今の態度が相当頭にきたのか、怒りをそのまま形にするように新たな魔法陣を呼び出した。
『遊びは終わりだァアアアア!! 『ラーヴァスコール』!!』
エギルが怒りを乗せて魔法を唱えると、あーしたちよりもさらに上空、しかもそこら一帯を埋め尽くすほどの広範囲に赤い魔法陣が広がり、そこから大量のマグマがドロドロと滴り落ちてきた。
「ぎゃああああああああ!? マグマが!? マグマが降ってきたぁああああ!?」
「うっせえなちょっと黙ってろ! 『三重シェル』!!」
ゼルに半ギレで注意されてあーしはうぐと黙り込むと、空を飛ぶルビーちゃんの周囲に三重の壁の魔法が張り出された。
落ちてくるマグマは壁の魔法を伝ってドロドロと下に流れ落ちていき、赤い雨の中をルビーちゃんがスイスイと飛び回りながらエギルの周囲を旋回する。
「こいつはチャンスだ、うまく活用しろルビー」
「大丈夫、任せて」
降り注ぐマグマの中であーしには一切理解できないチャンスを感じ取ったらしいルビーちゃんは、あえてマグマの中へと突っ込みながら徐々にスピードを上げていく。
そしてあるタイミングで急旋回し、巨大なエギルの瞳に向かって飛び込んだ。
『目くらましのつもりか!? 舐めるなァ!!』
しかしそう来ることはエギルも予想していたらしく、巨大な腕を振り上げてルビーちゃんを迎え撃つ。
だけど。
「それも予想済み」
『なにっ!?』
十分に加速したルビーちゃんはそのまま変身を解いて迫る腕をすり抜け、あっけに取られて見開いていたエギルの右目に小刀を突き刺した。
『グアアアアアアアアア!!?』
小刀に込められた光の力が全身を巡り、またも絶叫を上げてもだえ苦しむエギル。
それを見る事もせず再びグリフィンに変身したルビーちゃんは、壁の魔法に包まれて落下していたあーしたちをすぐに回収してくれた。
「よくやったぜルビー、さすがだな」
「大したことはしてない」
「いや大したことあるでしょ」
さっきの攻撃はあえてエギルに攻撃を予測させて、そのカウンターを狙う単純な作戦。
怒りに飲まれて冷静さを欠いている今ならと、アサシンのルビーちゃんが確信を持って仕掛けたもの。
ちなみにあーしたちは安全のために、急旋回中にやんわりと振り落とされた。最初は心臓飛び出るかと思った。
「さぁーて残るはあと一発。期待してるぜ元魔王軍幹部サマよぉ?」
「ハードル上げないでくれるかしらぁ!?」
「でも、ネクの糸でどうやって光の力をぶつけんの?」
「あぁ、それについてはもう仕込み済みよぉ」
「えっ?」
焦ったような振舞いから一転、確かめるように動かすネクの指先には、いつもの超極細のクモ糸がエギルに向かって伸びていた。いつの間に!?
「ルビーたちが派手に動いてくれたからねぇ。おかげで仕込みやすかったわぁ」
「じゃあ早くやれやクモ女」
「うるさいわね分かってるわよォ!」
急かすゼルに対し割とマジギレしながら返しつつ、ネクは張り巡らせた自分の糸に光の力を送り込む。もうちょっとくらい浸らせてあげても良かったと思う。
糸を伝った光の力は流れ星のような軌跡を残してエギルへと近づいていき、暴れながら苦しむ全身を駆け巡った後に残った左目へと直撃した。
「ギャアアアアアアアア!!?」
ほとんど間隔を開けずに光の力で両目を潰されたエギルは、半狂乱になりながら両腕を無差別に振り回す。
しかしあーしたち以外に何もない闇の空間ではただ虚しく宙を切るだけで、しばらくすると力尽きたようにがっくりと項垂れ、そのまま動かなくなった。
「やった・・・の?」
「まだこの空間は消えてない。油断は禁物」
「ならここでトドメを刺してやろうじゃねえか!! 魔力よこせクモ女!!」
「アタシに命令しないでくれるかしらぁ!」
いつものやり取りを交わしながらも糸を通してエイミス様から魔力を受け取り、ゼルはその両手にロケットパンチを作り出す。
「じっとしてろよ・・・今すぐとっておきを」
「っ!? ルビーちゃん上!!」
「ッ!?」
動かなくなったエギルに全員が注意を向けていたせいか、頭上から音も無く現れた黒い触手に気づくのが遅れてしまった。
ロケットパンチを準備していたからかゼルの防御も間に合わず、とっさにルビーちゃんは身を翻して触手の攻撃からあーしたちを庇う。
「うぐぁッ!!?」
「ルビーちゃん!?」
無防備なお腹に触手の攻撃をもろに食らってしまい、ルビーちゃんはものすごい勢いで闇に染まった地面へと墜落してしまった。
宙に放り出されていたあーしたちはゼルの風の魔法でゆっくりと着地し、慌ててルビーちゃんの下へと駆け寄っていく。
「ルビーちゃん大丈夫!?」
「うっ・・・ぐぅ・・・!」
「退いてろアカネ、俺が治す」
『無駄だァアアアアアアア!!』
「っ!?」
回復魔法を唱えようとゼルがルビーちゃんに近寄ったその瞬間、死んだように動かなくなっていたエギルがいきなりその両腕を振り下ろしてきた。
治療を中断したゼルは壁の魔法を張り出し、迫るエギルの大腕を壁ごと撃ち出してはじき返す。
『ぐッ!?』
「ハッ! 腰が入ってねえぜ魔王の息子さんよぉ! おっと、目も見えねぇ状態じゃそれも仕方ねえか?」
『・・・どうやら、目障りな光はもう無くなったようだな』
「っ!?」
腕を弾かれたエギルは一言そう呟くと、それ以上攻撃を仕掛けることなく両腕を頭上に掲げた。
まさか、今のでそれを見抜いて・・・!?
『ならば今度こそ、確実に止めを刺してやろう!!』
エギルは見えなくなった両目であーしたちを見降ろしながら、頭上に掲げた両手にありったけの闇を集め始めた。すると闇そのものが黒い魔法陣を形取り、ゆっくりと渦のような物を生み出し始める。
ヤバイ、さっきのブラックホールみたいな魔法だ。
対してあーしたちにはエギルの言った通りもう光の力が残ってない。
ど、どうすれば・・・!?
「お前ら、力貸せ」
不意に隣から届いた力強い声に、自然と顔を引きつけられる。
そこにはルビーちゃんを回復させたゼルが、珍しく真面目な表情であーしたち一人一人を見回していた。
「ゼル?」
「俺様に秘策がある。俺たちにしかできない、必勝法が」
「それって・・・?」
「俺たちで、光の魔法を生み出す」
「えっ」
「「は!?」」
いまいちピンとこないあーしに対し、ルビーちゃんとネクが揃って驚いたような声を上げる。確か光の魔法って・・・。
「アナタそれ本気で言ってるのぉ!?」
「光の魔法は、四属性を均等に合わせて発現する。理論上は可能でも、大精霊の補助無しでは不可能」
「だからお前らが代わりにやるんだよ。クモ女の糸を使ってな」
「!」
「はぁ!? アタシのぉ!?」
「やりながら説明する、さっさと始めるぞ!」
少し合点がいったらしいルビーちゃんに対し、未だチンプンカンプンなあーしとネクはお構いなしに魔法を唱えたゼルは、メンバー一人一人の足下に不揃いな大きさの魔法陣を生み出す。
あーしは水、ゼルは炎、ルビーちゃんは風、ネクは地属性の魔法陣の上にそれぞれ円を描いて立つ形になり、そこに追加してネクの糸があーしたちと魔法陣を繋ぎ合わせる。
「魔力の流れに介入できるお前の糸なら、流れそのものでもある魔法の調律にも介入できる、そうだな?」
「え、えぇ・・・まさか!?」
「その通り、お前ら一人一人が俺の魔法に介入して、それを一つに合わせるんだ」
「えぇっ!?」
ここでようやくあーしもゼルの秘策を理解した。
つまりあーしが、ネクの糸を通して魔法のバランスを整えるってこと・・・?
「あの、あーし魔法使ったことないんだけど・・・」
「なら今日が初魔法だ、良かったな! 後でインスタで報告しとけ」
「そんな簡単に!」
「大丈夫、魔法で重要なのはイメージだ。インスタグラマーのお前さんなら、むしろ得意分野だろ」
「っ!」
正直どこにも根拠はない。けど、ゼルからの確かな信頼を感じ取ったあーしはそれ以上何も言わず、足下に浮かぶ青い魔法陣に視線を落とした。
とりあえずはゼルのを基準に形を変えて・・・。
「うわっ!? 小さくなった!?」
「それでいい、とりあえずは大きさを合わせろ。仕上げは俺が整える」
そうしてゼルからのレクチャーを受け、少しずつ魔法陣の大きさを整えていくあーしたち。当然その間にもエギルの唱える魔法は大きくなっていき、もう残された時間はほとんど無いように思えた。
そんな焦りが影響してしまったのか、魔法陣はほとんど大きさが揃ったにも関わらず、同じ極同士を近づけた磁石のようにお互いを弾き合い、一つになる事を拒んでいた。
「なっ、何で!? 大きさは合ってるのに!」
「まぁ、そう上手くはいかねえよなぁ」
「ちょっ、何よそれぇ!? まさか言い出しっぺのアナタが諦めるのぉ!?」
「誰にもの言ってやがるクモ女! こうなる事も想定済みなんだよ!」
「なら、ここからはどうするの?」
「俺様に秘策その二がある。お前ら、次に俺の言った言葉に正直に答えろ。いいな?」
もう従う以外に方法はないあーしたちは、次にゼルの口から出てくる言葉を固唾を飲んで待ち構える。
しかしそれよりも一歩先に、エギルのけたたましい叫び声が闇の空間に轟いた。
『これで終わりだァアアアアアアア!!!』
ついに完成してしまった闇の渦が、あーしたちに向かっていよいよ差し向けられる。
それでもあーしたちは誰一人として声を上げずに待っていると、ついにゼルの口が開いた。
「この戦いに勝ったら・・・」
「勝利記念グラビアの撮影会だ!!」
「「「絶対お断り!!」だし!!」よぉ!!」
確固たる意志を持ってそう答えると、あろうことか今の宣言をきっかけに四つの魔法陣が重なり合い、神々しい光を放つ白い魔法陣が出来上がった。
「よっしゃキタァアアアアアアアアアアア!!!」
「今ので出来んの!!?」
「正直すっごく不本意だわぁ・・・」
「右に同じ・・・」
まさかこの状況ですらグダグダっぷりを発揮したあーしたちは、それをきっかけに起死回生の切り札を生み出し、迫る闇の渦に向かってそれを撃ち出す。
『バカな!? 何故貴様らが光の魔法を!?」
「インスタ見てねえのかよ? こう見えて俺ら、大概の常識はぶっ壊してきたんだぜ?」
えらくカッコつけてそう答えるゼルだけど、正直そこまでカッコいいものではなかったと思う。今の含めて。
「散々光の魔法でいらん事してくれたんだ・・・テメェにゃコイツでツケ払ってもらわねえとなァ!!」
『おのれ・・・おのれ・・・おのれェエエエエエエエエエ!!!』
円を描いたあーしたちの中心から解き放たれた光の魔法は、全てを飲み込もうとする闇の渦すら消し飛ばして、その奥に構えるエギルの体に直撃する。
『グゥアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』
あーしたちの生み出した光をその身に浴びたエギルは、断末魔の叫びを上げて闇の空間と共に消え失せた。




