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異世界インスタ  作者: 五寸
第5章 光の果て
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8話

 黒い魔物たちによって開かれた大扉をくぐると、広いエントランスの中にあーしたちの足音が響き渡る。

 天井の真ん中には水晶にも見える巨大なシャンデリアが備えられ、周囲の壁にはステンドグラスや魔王軍を示しているらしい旗が飾り付けられている。


 そんな厳かな雰囲気のある空間へと立ち入ったからか、それともただの緊張なのか、自然と口数が少なくなったあーしたちは、中央で待ち構えているエギルとお互い睨み合ったまま話し始めた。


「わざわざ案内してくれるなんざ、思ったより待遇いいじゃねえか」

「私の客だからね。本当なら入り口から迎えようと思っていたんだが、随分と魔王城の探索に精を出していたようだから見守っていたんだ」

「余計なお世話だし・・・!!」


 相変わらず嫌味たっぷりに言葉をぶつけてくるエギルを思いっきり睨みつける。ほんとコイツ嫌い!


「警備が薄かったのもワザと?」

「もちろん。王都で君たちを逃した時から、最初に来るのは君たちだと確信していた。もっとも、そこにアカネ君がいたのは本当に想定外だったが」

「っ・・・!」


 エギルはそこで初めて不思議そうな表情を作り、何か得体の知れないものを見つめるような視線をあーしにぶつけてきた。うわ、寒気がする。

 しかしそれも一瞬の事で、すぐにいつもの相手を見下したような表情に戻る。


「まぁ、それも好都合だ。君が居れば王女様の心も大きく揺れ動くだろう」

「は?」

「気づいているだろうが、あれ以来王女様は抵抗を続けていてね。光の魔法を使うにも時間が掛かるんだ。だから抵抗の意志そのものを壊すために君たちをここへ誘った」


 そう言うなりエギルは体から黒い霧をゆっくりと滲ませ始め、それと比例するように徐々に殺意を高めながらこう語った。


「目の前で君たちを殺せば、きっと彼女の心も壊れるだろう」

「ハッ! 上等だぜこの野郎!! テメェの首を土産に王女サマを叩き起こしてやらァ!!」


 エギルのセリフにゼルが大見得を切って返したその瞬間、戦いの火蓋が切って落とされた。


「出でよ、混沌の魔物よ」


 エギルはエントランスの床全体を覆い尽くすほどの黒い霧を放出すると、そこからおびただしい数の黒い魔物を呼び出した。

 室内だからかスケルトンやオークと大きすぎない魔物で揃えられているものの、それを補って余りある数の暴力があーしたちへと襲い掛かる。


「今さら木っ端どもに俺様の相手が務まるかよ!! 『アーマーライズ』!!」

「待ってゼルさん! 上!!」

「あ? ・・・うおっ!?」


 焦ったようなルビーちゃんの声音にゼルと二人して視線を上げれば、黒い魔物と同じように、天井を埋め尽くすほどに生み出された氷の槍が、あーしたちに狙いを定めていた。

 一拍おいて暴風雨のごとくあーしたちへと降り注ぎ、それをゼルの三重の壁の魔法が受け止める。


「きゃあああああああ!?」

「ぐっ・・・野郎、ふざけたマネしやがって!」

「おやおや、さっきの威勢はどうしたんだいゼル君」


 押し寄せる黒い魔物と氷の雨の向こう側から、嘲るようなエギルの笑い声が聞こえてくる。

 どうやらエギルは黒い魔物が攻撃魔法を無効化する特性を利用し、黒い魔物ごとエイミス様の魔法で攻撃するという戦法を仕掛けてきていた。えげつないなアイツ!


「どっ、どうするの!?」

「とにかくまずは、王女様の無力化が最優先。救出する以前にこの状況を打開するには、それ以外に方法はない」

「前と一緒だ、殺す気で行くぞ。全身の骨ブチ折ってでも止めてやれ」

「えぇっ!? そこまで!?」

「でなきゃこっちが殺されんだろ! 準備はいいかお前ら!!」

「問題ない」

「いつでもいいわよぉ」


 ルビーちゃんとネクの返事を聞いたゼルは、満足そうに頷いて新たに魔法を唱え始める。

 絶え間なく続く猛攻にいよいよ壁の魔法にヒビが入り始める中、ゼルは自身の魔法で反撃の狼煙を上げた。


「行くぜ新技! 『三連アドバンスシェル』!!!」


 叫んだ技名の通りゼルは三回連続で壁の魔法を撃ち出し、迫る黒い魔物たち全てをエギルの方へと弾き飛ばした。

 近くにいたエイミス様も飛ばされてきた魔物に怯み、黒い魔物に続いて氷の槍も目の前から消えていく。


「クモ女ァ!!」

「分かってるわよぉ!!」


 ゼルの短い合図にネクは大量の糸を飛ばすと、天井に備えられた水晶のようなシャンデリアへと絡み付けた。そこからネクは何とシャンデリアを力づくで引きずり落とし、真下に集められた黒い魔物やエギルたちをまとめて下敷きにしてしまう。ごっ、豪快・・・!


「よし! 行くぞルビー!!」

「了解」


 恐らくは今の攻撃ですら大したダメージにはなっていないんだろう、ゼルは間を置かずにルビーちゃんと落としたシャンデリアの真上に飛び上がると、変身したグリフィンの足を魔法で強化して急降下する。

 しかし。


「『クリスタルタワー』」

「っ!?」

「危ねっ!?」


 落ちたシャンデリアを中心に巨大な青い魔法陣が広がったかと思えば、そこからシャンデリアごと砕き貫いて極太の氷の柱が飛び出してきた。

 めちゃくちゃなカウンターにゼルたち二人は弾き飛ばされてしまい、そのまま距離を取るように着地すれば、そこへ更に追撃の魔法がお見舞いされる。


「『ハイドロストリーム』『マグニスパーク』」

「くっ!! 『三重シェル』!!」


 エイミス様の抑揚のない声に続いて、まずは強烈な水の濁流があーしたちへと襲い掛かり、その後に走った電撃が飛び散った水に感電して爆発を引き起こす。

 ただ二つの魔法を唱えるんじゃなく、それらを組み合わせた攻撃の連鎖に三重の壁はヒビを入れられたものの、なんとか最後の一枚までは耐えきってくれた。


 しかしそれが何だとでも言わんばかりに、エイミス様の猛攻は続く。


「『ラーヴァスフィア』」

「ッ!? 全員構えろ!!」


 次にエイミス様が生み出したのは、赤く燃え盛る超巨大なマグマの塊。

 ゼルからの焦りを含んだ声を聞いて反射的に体を縮こまらせると、視界を覆った腕の隙間からマグマの塊がこっちに飛ばされたのがちらっと見えた。


 次の瞬間、目の前が真っ白になるほどの大爆発が起こり、続いてガラスの割れたような音が爆風の中にうっすらと紛れ込む。

 しばらく経って生ぬるい風も止み、恐る恐る顔を上げれば、両腕を黒く焦がしたゼルの姿が目に入った。


「っ!? ゼル、腕が!?」

「やっぱヤベエなエレメントロード・・・! 俺のシェルでもそう長い事は耐えられんか」


 痛みに眉根を歪めつつも、無理のある笑顔を作って前を見据え続けるゼル。魔法の威力が強かったのか、回復魔法を腕にかけても治りが遅いように感じる。


「今の王女様は風神の社の時とは違う。フルスペックのエレメントロード相手に真っ向勝負は自殺行為」

「だったら何か攻略法でもねえのかよ、元魔王軍幹部サマよぉ」

「それなら闇の魔法が真っ先に上がるけど、肝心の使い手が敵なのよねぇ。前に使った拘束技もすでに対策済みみたいだしぃ」


 そう言ってネクは断ち切られた自分の糸をあーしたちに見せてくる。十中八九エギルの仕業だろう。黒い魔物を呼び出して以来、何もしてないし。

 にしても闇の魔法・・・か。


「どうしたのアカネさん?」

「いや、ちょっと思いついたことが・・・」

「念のため忠告しておこう。君たちに残された時間は多くない」

「っ!?」


 あーしの声に被り気味で聞こえてきたエギルの不穏なセリフに、あーしたち全員が揃って視線を向ける。するとエギルは満足そうに笑って、その続きを語り出した。


「先ほども言った通り、あくまで光の魔法は再使用に時間がかかっているだけだ。君たちがそうして無駄な時間を過ごすほど、タイムリミットは短くなる」

「なっ!?」


 エギルはまるで演説でもするかのように大仰に振舞ってそう語ると、エントランスの左右の壁、天井と床にそれぞれ四大属性を示す巨大な魔法陣が浮かび上がった。それらは一秒一秒刻むごとに輝きを増していき、それこそがタイムリミットなのだと直感で知らせてくる。


「残された時間は少ない。有意義に使ってくれたまえ」

「ご丁寧にどうも! 早速言われた通りにさせてもらうぜ!!」

「っ!? 待ってゼルさん!」


 売り言葉に買い言葉で飛び出していったゼルを慌ててルビーちゃんが呼び止めるも、その声が届くことはなかった。多分ゼルもそれなりに焦ってるんだろうけど、ルビーちゃんが心配するようにこれじゃ向こうの思うツボな気がする。


 そして大体、こういう時の嫌な予感は当たる。


「オォラアアアアア!!!」

「『プロミネンス』」

「甘ェ!」


 やはり焦っているのかゼルはエイミス様へと一直線に突っ込むと、迎撃のために唱えられた炎の魔法をギリギリでかわし、その真横へと周り込んだ。更にそこから岩の拳を作り出し、エイミス様へ向けて叩き込む。

 しかし。


「女性に乱暴は感心しないな」

「ッ!? テメッ・・・」

「『スプラッシュピラー』」

「うがァッ!?」

「ゼル!?」


 エギルの闇の魔法によって岩の拳をかき消されたゼルは、その一瞬の隙を突かれ、エイミス様が生み出した水の柱に勢いよく打ち上げられた。しかもそれで終わりではなく、追撃として唱えられたおびただしい数の魔法陣が、まるで檻のようになってゼルの周囲を囲い込む。


「『エレメンタルケージ』」

「ウゥアアアアアアアアアア!!?」

「ゼルーーーー!?」


 魔法陣の檻の中をありとあらゆる魔法が暴れまわり、ひたすらにゼルに悲鳴を上げさせた後に大爆発を起こしてようやく止まる。

 爆風に飛ばされたゼルは黒焦げになりながらボロ雑巾のように床の上へと投げ捨てられ、それをあーしが大急ぎで助けに向かう。


「ゼル大丈夫!? ねぇ! 返事してゼル!!」

「それよりもまずはポーションをかけてあげなさいな! 壁役がいないともたないわよぉ!」

「わ、分かった!」

「ハッハ、懐かしい光景だな。確か王都でも君はそうしていたね」


 エギルは懐かしむような表情と声音で話しかけてくるものの、あーしはその全てにスルーを決めてゼルにポーションを少しずつ垂らしていく。大丈夫、落ち着いて・・・!


「ならば再現するのも一興か。『ソニックブラスト』」

「まずっ!? キャッ!?」

「ネク!?」


 エギルから放たれた風の弾丸に弾き飛ばされたネクは、そのまま思い切りエントランスの壁へと叩きつけられ、ゆっくりと床の上に崩れ落ちた。

 幸い気絶まではいかなかったものの、苦しそうなうめき声をあげてうずくまっている。ヤバイ・・・ヤバイってこれ・・・!!


「最後の一人は・・・試してみようか」


 エギルはハイドで隠れているルビーちゃんに狙いを移すと、一瞬含みのある笑みを浮かべたかと思えば、今度はあーしに向けて風の弾丸を放った。

 反射的に体を縮こまらせて衝撃に備えていると、目の前に飛び出してきたルビーちゃんがそれを代わりに受け止めてしまう。


「あぐっ!?」

「ルビーちゃん!?」


 ネクと同じように壁へと叩きつけられたルビーちゃんは、それでもなんとか立ち上がろうとするものの、腕がプルプルと震えるせいで思うように体が持ち上がらず、何度も倒れ込んでしまう。


 うそ・・・まさか、また・・・?


「ゲッホゲッホ!!」

「! ゼル!?」

「アカネ・・・悪いな」


 あーしの腕の中で眠っていたゼルが咳き込みながら目を覚まし、まだボロボロの体を起こしてエギルの方を睨みつける。


「ほう、まだ立ち上がるか」

「あたりめーだ・・・テメェをブッ殺すまで・・・死ねるか・・・!!」

「ハッ、君が巻き起こした惨劇だろう」

「そう仕向けたのはアンタじゃん!!」

「ハッハ、そうだね。もっとも、この戦いそのものがそうとも言えるが」

「はぁ!?」


 意味不明なセリフにあーしがイライラ全開で聞き返すと、エギルはあーしたちを上機嫌に眺めながら語り始める。


「言っただろう、君たちがこの場に来ることは確信していたと。つまり君たちの行動は全て私の掌の上にある。最初から、万に一つも勝ち目などないのさ」

「んなモン・・・やってみねぇと分かんねえだろうが・・・!!」

「分かるさ。現に君たちはすでに虫の息になっている。そして何より、君たちは私たちを何一つ攻略できていない」


 そう言ってエギルは自身とエイミス様を指し示し、言い聞かせるようにゼルたちへと語りかける。


「エレメントロードとカオスロード。最強の矛と盾、そのどちらかすら攻略できない君たちの、一体どこに勝算があると?」

「最強の、矛と盾・・・」


 問いかけられたゼルに代わり、あーしはエギルの言葉をゆっくりと復唱する。

 そこから連想する形でさっき思いついた考えが頭の中に蘇り、あーしは腕の中のゼルにそれを持ちかけた。


「ねぇゼル、アイツに勝てる作戦があるなら、協力してくれる?」

「誰にもの言ってやがる。んなもんこの俺様が協力しねえと思うのか?」

「アハ、そうだね。ごめんごめん」


 短い茶番を交わした後に、あーしは思いついた作戦をゼルに説明する。


「お前・・・!」

「やらなきゃあーしたちが殺される。そうでしょ?」

「ハッ! 言うじゃねえかオイ!」


 乗ってくれたらしいゼルはそのまま傷も治さずに飛び上がると、不敵な笑みを浮かべてエギルの方を睨みつける。


「勝機は見つかったかな?」

「あぁ、バッチリだ」

「ならば最後まで楽しませてくれたまえ」


 勝利を確信しているのか、それだけ言ってエギルは構えも取らずにあーしたちを迎え撃つ。エイミス様の方も特に動く気配はなく、心の底から舐めきっていることが伝わってくる。

 でも、今のあーしたちにはその方が都合が良い。


「言われなくてもそうしてやるよ!! 喰らえ!! 『フレイムバァーーーーストッ』!!!」


 ゼルは小さな両腕を目の前に突き出すと、手の平に浮かび上がらせた赤い魔法陣から猛烈な火炎放射をお見舞いした。しかし当然のようにエギルは黒い霧を呼び出し、迫る炎の波を片っ端から飲み込んでいく。


「まだまだこっからだ! 『サイクロン』」


 対するゼルはそれを一切気にも留めず、さらに風の魔法を組み合わせて炎の竜巻を作り出した。


「やけでも起こしたか? 見苦しい・・・」


 エギルは心底侮蔑したような目をゼルに向けながら、迫りくる炎の竜巻を全て黒い霧へと飲み込んでいく。

 しかしそれでもゼルは絶えず唱え続け、いよいよエギルの黒い霧がエントランス中を覆い始めた。


 よし、こっからが本番!


「今だよルビーちゃん!」

「了解」

「なに?」


 あーしの声を合図に、ルビーちゃんはエントランスの半分を覆い尽くした黒い霧の中へと飛び込んでいく。

 

 今回の作戦もかなり単純。エギルの闇の魔法は、攻撃魔法を飲み込んで無力化してしまう最強の盾。だったらあえてそれをありったけ引き出して、エイミス様の魔法も封じ込めてしまおうという魂胆だ。

 そのためにゼルは自分の回復すら後回しにして、今も攻撃魔法を唱え続けてくれている。


 あとはその間にルビーちゃんが突入し、エイミス様の洗脳を解いて無力化するだけ。

 しかし。


「見くびられたものだな・・・ハァッ!!」

「うぐっ!?」


 霧の中からエギルの声が聞こえてきたかと思えば、続いて鈍い音とうめき声が響き渡り、突入していたルビーちゃんがゼルたちの下へと弾き飛ばされてきた。

 しばらくすると黒い霧も消えて無くなり、何やら黒く巨大な腕を生やしたエギルが姿を現す。


「この霧の中は私のテリトリーだ。視界に頼らずとも敵の探知は十二分に出来る」


 おそらくは闇の魔法で作ったんだろう黒い腕を軽く動かしながら、うずくまるルビーちゃんやゼルたちに説明するエギル。多分あれでルビーちゃんをなぎ払ったんだろう。

 エギルはしばらく黒い腕を弄った後にそれも消し去ると、もうこれ以上動けそうにないゼルたちを見てついにこの話を切り出した。

 

「さて、いよいよタイムリミットだ。今度こそ君たちとお別れすることになるだろう」


 エギルがそう言うなり天井や壁で激しい輝きを放っていた魔法陣が動き出し、エイミス様の足下で重なり合って一つの巨大な白い魔法陣へと生まれ変わる。ついに光の魔法の準備が整ってしまった。

 勝利を確信したエギルはあえて発動をもったいぶり、目の前で膝をついているゼルたちへと語りかける。


「せめてもの情けだ。何か言い残すことはあるかな?」

「そうだな・・・」


 エギルからの質問に、ゼルは不敵な笑みを浮かべてこう返した。


「一人、忘れてねえか?」

「なに?」


 ゼルは周りにいる二人と目配せをして、全員が同じような笑みを浮かべこう続ける。


「俺たちは、四人パーティなんだがな」

「ッ!?」


 そこでようやく、エギルは気づいたらしい。

 目の前にいるゼルたちの中に、あーしだけがいなくなっていることに。


「まさかッ!?」

「頼んだぜ!! アカネェエエエエエ!!」


 エギルが慌てて振り返った先には、ゼルの応援を受けて走り出したあーしの姿が。


 どうしてあーしがここにいるのか。答えは簡単、みんなの協力で送り届けてもらったから。

 ルビーちゃんが黒い霧の中に入っている間、あーしはゼルに壁の魔法で包んでもらい、それをネクの糸で思い切り放り投げてもらうことで、エギルの背後へと強引に回り込んだ。

 後はタイミングを見計らって、あーしがエイミス様の下へとたどり着くだけ。


 全てはこの瞬間のための壮大な仕込み。

 

 そして今こそが作戦の正念場だ!


「うぉおおおおおお!!!」

「小癪な真似を・・・! インフェル」

「させるかァ!!」

「うぐあッ!?」

 

 あーしを魔法で狙おうとしたエギルを、ゼルの飛ばしたロケットパンチがかすめ通る。さらにネクの糸やルビーちゃんのハイドを交えた攻撃により、エギルの行動全てを妨害してくれる。

 対してエイミス様は光の魔法を準備しているためか、一切その場から動く気配は見せない。


「おのれェエエエエエエエ!!!」

「行け!! アカネェエエエ!!」

「お願いアカネさん!!」

「頼んだわよぉ!! アカネちゃん!!」

「うぉおおおおおおおおおおお!!!」


 何もできずに見送ったエイミス様の背中が、ついに目の前に迫る。

 あーしはその背中に思いっきり飛びつき、そのままぎゅーっと抱きしめた。


 しばらくすると足下で眩い光を放っていた魔法陣が消えて無くなり、さらにエイミス様の体から力が抜けて、あーしはちょっともたつきながらエイミス様を抱き寄せる。

 確かめるように腕の中を覗いてみれば、安らかな表情で寝息を立てるエイミス様の寝顔が。


 やっと、やっと助けられた。


 お待たせ、エイミス様。

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