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支部長ヘイバーン

 ギルド会館の支部長なのでもっと屈強で怖そうな人を想像していたが、まったく逆の優しそうなおじいちゃんだった。

 髪やひげも真っ白で、よく物語に出てきそうなおじいちゃんそのものだ。

 俺は支部長に勧められるように部屋の中へと入っていく。


「では支部長。私は仕事に戻りますので後はお任せしますよ」

「ふぉふぉふぉ。分かりました」


 お姉さんはそう言うと部屋から出ていく。


「さぁ、そんな固くならずに、座ってくださいな」


 支部長は俺に自分の向かいにあるソファに座るように言ってくる。

 俺はおずおずとソファに腰かけた。


「お茶でもあればよかったですが、すみませんね」

「い、いえ別に」


 支部長は俺が座ったのを確認すると、自分も同じデザインのソファに座る。

 俺と支部長の目が合う。


「あらためて、私はこのギルド会館の支部長を務めていますヘイバーンと申します」


 ヘイバーン支部長が手を伸ばしてくる。

 握手だろうか。

 俺もそれに応じる様に手を伸ばした。


「リュ、リュウカですわ」


 どうにか口調をつくり、ヘイバーン支部長と握手をかわす。


「ふぉふぉふぉ。無理しなくてもいいですよ」

「え?」

「本当は男なのじゃろ」

「……分かりましたか?」

「なんとなくですがね。人生、長く生きていればいろいろ分かるようになるもんですよ」

「そんなもんですか」

「そんなもんです」


 ばれてしまったのならわざわざ取り繕う必要はない。

 俺は男の様に足を広げながら、座る姿勢を楽なものにする。


「リュウカさんの本当の名前を聞いてもいいですかな」

「……分かりました。俺は栗生拓馬って言います」

「くりゅうたくま……言いづらい名前ですのぅ」


 ヘイバーン支部長がそう言って自分のひげを撫でる。

 まぁ、外国みたいな名前の文化だろうから、日本語の響きにはなれないのだろう。話しているのは日本語そのものなんだが。


「しかし、なぜに女性の体なのですかな?」

「まぁ、いろいろあって」


 説明をすると長くなる。

 俺はため息をこぼして答えた。


「そんなことよりも聞いていいです?」

「なんですかね」

「転生者ってなんで分かったんですか?」

「それは魔法ですよ」

「なるほど魔法ですか。……つまり転生者っていうのはすぐにばれるものだと」


 俺がそう聞いたら、ヘイバーン支部長は首を横に振った。


「ばれませんな。転生者の存在は私のような一部の人間しか知りませんから」

「他の人には分からないと? 魔法を使っても?」

「その通りです」

「でもさっきは魔法って……」

「転生者というものがいると知っていれば分かるだけのこと。前提知識がなければ分かりませんよ」

「なんだそっか……よかったぁ」


 俺は安心したような声がもれた。

 なんだ、やっぱり話さなくて正解だったんだな。設定を作ったのも悪くなかったということだ。


「安心しましたかな」

「注目されるのはあんまりだし……」

「ふぉうふぉう」

「まぁ、もう階段を上っていった段階で注目の的だったけど」

「では、その部分の記憶を魔法で消してしまいましょう」

「え?」

「見ていた人全員の記憶から、リュウカさんが階段を上って行ったという部分だけきれいさっぱりと」

「……そんなことできるんですか?」

「出来ますとも。魔法ですから」


 まじかよ。魔法やば。


「じゃあ……いいですか?」

「構いませんな。なんせ転生者のお願いですから」

「ありがとうございます」

「ふぉふぉふぉ。なんのこれくらい。しかし、いろいろと不便でしょうから、ギルド会館の職員の記憶はそのままにしておきますよ」


 俺は頷く。

 それから間髪入れずにヘイバーン支部長はちょっと手を振って見せた。

 何も変わらない。エフェクトが起こるわけでも、何か音がするわけでもなく、ただただヘイバーン支部長が手を振っただけだ。

 しかし、それだけでヘイバーン支部長はにこりとし、自身の髭を触る。


「終わりましたよ」

「はやっ」

「これで安心してここから戻っていただけます。もちろん階段を下りるのも不自然ではないようにしてありますから」

「なんかすいません」

「いいのですよ。こちらも、安心してお話を聞いてもらいたのでのぅ」


 そうして、ヘイバーン支部長は俺に向かって話し始めた。

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