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東京ダンジョンソロ編 Ⅰ

 2020年4月11日金曜日 マンション


 装備を受け取った次の日、部活も休みなので学校が終わるとすぐ帰ってきた。

 普段、早朝にランニング、筋トレと体幹、風呂上がりにストレッチをするのだが、少しばかりダンジョンに入らなかった期間が長かったので、運動出来る服装に着替える。

 最低限の動具を持ち、駅に向かう。

 今日はこの後ダイとサッカーをする。体を動かしたいというと、快く了承してくれた。

 待ち合わせの公園に行くと、既にそこでリフティングをしているダイの姿があった。


「相変わらず早いな」


「そりゃあ家から近いからな」


 靴紐を結び直し、ダイから蹴られたボールをトラップする。


「お、上手いな。もしかしてやってた?」


「いいや、習い事は何もしてないな。でも動くのは好きだから大体それなりに出来るぞ」


 インサイドを意識しながらボールを蹴る。なんかサッカーをするのは懐かしいな。


「それは凄えな……もしかしてこんなの出来る?」


 ダイはリフティングをはじめ、何やらタイミングを計りリフティングの途中で足でボールを一周させる。

 ボールを渡され挑戦してみる。


「あー……難しいな。そうか、最初の小さくトントンのリフティングはタイミング調整、こうか?」


 何度か失敗したが、諦めることなく続ける。すると、一回だけ成功した。


「あれ?これって、そんな短時間で出来るやつだっけ?」


「難しいな!ボール蹴る方が楽でいいな」


「じゃあ、ロングパスやるか」


 お互いの距離が40メートル程になるまで離れ、綺麗なフォームでキックしてくる。

 トラップしようとしたが、上手く出来ず転がっていってしまった。


「確か、インステップで、こうっ!」


 とりあえず全力で蹴ってみたら、ダイがバックステップで下がっていき、胸トラップでボールを収めていた。


「ほんとすごいな、お前!」


「ダイこそ、さすがスポーツ推薦なだけあって上手いな!」


「そりゃあ一つくらいはお前より上じゃなかったら、ダメだろ!」


「一つだけでいいのかよ!」


「勝ってるものがあればいいんだよ!」


 お互いに蹴りながら声を出す。30分程経ったら、ダイがこちらに戻ってきた。


「とりあえず休憩するか」


「そうだな」


 ベンチに座り、リュックからスポーツドリンクを取り出し飲む。運動した時はやっぱこれだよな。


「紅葉この後どうする?2人だけだとあれだし、もし良かったら近くにフットサル場とかあるぞ?」


「フットサルか、ルールよくわかんないけど大丈夫かな?」


「大丈夫大丈夫!やれば何とかなるって!」


 ダイの案内の元、屋内競技場に到着した。自転車置き場には中々の数の自転車がある。

 見ていたのに気づいたのか、教えてくれた。


「ここはフットサルの他にも色々出来るんだよ、だから大体人が多い」


「成る程な」


 入り口で入場料を支払い、フットサルコートに移動すると、そこには5人ずつのチームに分かれ試合をしていた。床は人工芝で、赤ビブスと青ビブスに分かれていた。


「久しぶりでーす!」


 ダイが大声で入って行くと、ベンチで休んでいた何人かがこちらに向かってきた。

 ダイの社交的な部分は絶対に俺、負けてる自信があるんだが……


「おー!久しぶりだな、ダイ!珍しいなここにくるなんて、そっちの人は知り合い?」


 ダイによると、今の時間は学生が多く、夜間になると社会人が多いそう。


「まあな、こいつは高校の友達で、運動したいっていうから連れてきた。実力は保証するぞ?」


「バカ言うな、素人に何求めてんだよ!初めまして、日向 紅葉です、好きに呼んでください」


「敬語とかここじゃ要らないから大丈夫だぞ、俺は佐藤 純平(さとう じゅんぺい)、みんなからジュンって呼ばれてる、よろしくなコウ!」


 その後ダイとジュンが話していると試合が終わり、俺たちの順番となった。


「はいこれ、フットサルは人数が少ないから全員で守って、全員で攻める、だから体力は消耗するからな」


「出来る範囲内で頑張るよ」


 手渡された赤ビブスを着る。試合が始まり、相手は中学生チーム。とは言っても当然経験者で、このフィールドにいる俺以外は経験者らしい。


「コウ!」


 パスされたボールをトラップする。さっきより、トラップしやすい?


「ダイ!」


 前にいるダイに向かって蹴ると、何やらボールが重くサイドラインを割ってしまった。


「どんまい!」


 チームの人からは優しい言葉をかけて貰う中、俺は急いでダイのところに向かう。


「なあ、ボールがやけに重く感じるんだが……」


「あ、紅葉は知らないか。フットサルボールは4号球で……っていうか分かりやすくいうと、普通のサッカーボールに比べて小さくて重いんだ。だから、パスは強く速く低くが理想だ」


「なるほど……心掛ける」


 急いで所定のポジションに戻る。サッカーとは違い、人数は少ないがフィールドも狭い。なので、ドリブルよりパスを多用するようだった。


「へい!」


 声をかけ、パスを要求する。フットサルはオフサイドが無い……はず!


「紅葉!」


 ダイから地面を這うようなグラウンダーのスピードが速いボールが来た。

 俺は慌てずトラップし、キーパーの動きを見ながらシュートする。

 ボールは狙い通りキーパーの股をくぐり抜け、ゴールネットに突き刺さる。


「お前、初シュートで股抜きってオシャレか!?でも、ナイッシュー!」


「ナイスシュート!」


 ダイやジュン、他の2人からもハイタッチ要求が来たので、ハイタッチする。

 試合はそのまま終わり、ベンチへと戻る。


「いやー!コウは上手いな!これで初心者は嘘だな!なによりあの落ち着きようはヤバイな!」


「それな!紅葉まったく慌てずに、冷静に股って!本当になんなん!?」


 ダイのテンションがおかしくなっているが、無視していれば治るだろう。

 落ち着いていたのは、ダンジョンとかの方がプレッシャーとか半端ないからそれで慣れただけだろう。


「初心者はあれでも、遊びのサッカーしかやったことないからな?」


 その後、全部で6試合を行い4勝2敗と言う結果になった。


 良い時間になっていたので、今日は帰ることになった。


「紅葉どうだった?」


「楽しかったな、今ならもう少し上手くやれそうだ!」


「すっかりハマったな、にしても体力的には大丈夫なのか?」


「ああ、これでも一応毎日走ってるからな。ダンジョンでは体力がなきゃ動けないからな」


「はぁー……成る程な、下手したら俺より体力あるんじゃないか?」


 駅までわざわざ付いて来てくれて、礼を言った後別かれた。

 今日はこの後に、Mirrorをする予定だ。戦闘の雰囲気を大事にしたいから、いつも通りダンジョンで使えるようなスキルだけで戦う。

 もし、ゲームだけのスキルを使って翌日ダンジョンでも同じ様にしようとしたら出来ない、ダンジョンでは一瞬のミスでさえ命に直結する。



 家に帰宅すると、両親は未だ帰って来ておらず、シャワーで汗を流した後始める。


 さて、今日はどんなモンスターと闘おうか!



























 2020年4月11日 【札幌】本拠地



 目を開けるとそこはいつものマイホームだった。今日の目的は、明日のダンジョン探索に備えてであるため、出来る限り装備やアイテムを現実とそろえる必要がある。


「あー、『霊刀シルラ』はダメだし、『光輝剣シャイロン』も当然ダメ……何しよう」


 今悩んでいるのは現実での武器と似た性能のものを探している。

 このゲーム、Mirrorにも当然幻想金属、ミスリル、オリハルコン、アダマンタイト、ヒヒイロカネが存在する。

 しかし現実より遥かに強い為、同じヒヒイロカネの武器を使う事ができない。

 本拠地のアイテムボックスを探していると、丁度いいのを発見した。


「これなら良いんじゃないか?『黒刀』!」


 黒刀とは、以前暇な時に【オークション】を眺めていた時に一目惚れで購入した武器だ。

 名前の通り、刀身は真っ黒だが、金属的輝きも持つ芸術品のような刀だ。実戦使用回数は0だ。

 この黒刀の能力は、ひたすらに強度が高い。ただ頑丈、それだけだ。

 現実の刀に特殊能力なんてものは付いていない為、丁度良い。


「で、武器は良いとして防具は軽いやつでいいや。アイテムは中位回復薬(ミドル・ポーション)だけ、後は……大丈夫だな」


 インベントリから使わないアイテム類をアイテムボックスに移動させる。


「さて、どんな奴がいいかなー」


 今の俺の格好は、この世界を始めて1ヶ月程度……という中級者の装備で、変装アイテムも使用してないのでコウヨウとバレる事はない。


 向かっている先は【冒険者協会】である。現実の冒険者協会と違い、各村や街、都市に必ず一つは存在してそこでは[クエスト]を受ける事ができる。

 [クエスト]の種類は戦闘、採取、護衛、その他に分かれる。

【冒険者協会】は誰でも使用する事ができるが、ランクにより受けれる[クエスト]の種類が増減する。

 初期がFで、最高がSだ。当然俺はSだが、長年やってれば大体の人がSに到達できるので、そこまで難しくはない。


 例えばゴブリン単体は最弱評価のGランク相当で、これはFランク冒険者1人で倒せる程度だ。

 モンスターのランクはパーティのランクで丁度いいとされる。

 ゴブリンエンペラーはレイド級とは言っても、Bランク級であり、Bランクの6人パーティが討伐目安ということになる。

 先日のゴブリンの群れは評価にして、B+程度だろう。

 ただし、ランクを上げる事はできても、倒せるとは限らない。

 なぜなら、最悪他のプレイヤーに寄生してもSランクになる事はできる。

 なので、冒険者ランクはそこまで重要視されていない。


「お、これでいいか」


 見つけたのは[未探索ダンジョンの調査]というクエストだ。

 Mirrorにもダンジョンは存在し、多少違う点はあるが大体は同じだ。なので、Mirrorのダンジョンで足慣らししてから、現実のダンジョンに挑む冒険者は少なくない。

 確か『冒険者の道』に書かれている方法だった筈だ。


 [クエスト]の場所は、ここから車で約2時間程度の場所にある。車は無いけど。


「ということで、ウロ頼むよ」


「ウォン」


 召喚石からウロは呼び出し、もふもふのウロの上で寝っ転がりながら移動する。それがいつもの移動方法だ。

 ウロは時速300キロで、数時間は走り続けれる。なので、20分弱で到達する事ができる。


「レッツゴー!」


「ウォン!」


 俺はその時間を利用して、使用するスキルについて考える。ダンジョンで使用可能スキルのみとなると、数が絞られる。


「とりあえず《空間把握》に、《攻撃予測》、《雷神》は……諦めるか。《HP自然回復》はONのままでいいよね、あっ、《敵意感知》忘れるところだった。後は……《立体機動》だな。後のパッシブスキルはOFFにして、と。

 こう見ると、本当にダンジョンのスキルとMirrorのスキル似てるな、てか同じ?」


 今までも幾度となく戦闘感を養う為、Mirrorで戦闘してきたが、ここまでダンジョンに合わせて戦うのは初めてだった。


「なんかすごい縛りプレイしてるよな、俺って。一応[未探検ダンジョンの調査]ってSランククエストなんだけど大丈夫かな……」


 クエストの場所は、森の中にポツンと佇む立方体の光る建物だった。


「場所とのマッチしなさ過ぎてヤバイ」


 建物の壁が鏡の様になっていて、遠くから見たら隠れるが、近くで見たら異物感がすごいのである。


「あー……確かこういう〝謎文明〟を感じる様なやつで、まともだった試しがないな」


 今までもこれと似た様なものが何度か存在した。


 大海原で燃える城だったり、砂漠で毒ガスを吹き出し続けるパンクスチームだったり、突如街に飛来してきたUFOだったり、そのどれもが最高難易度ダンジョンもしくは、笑えるぐらいの強さのモンスターであった。


「今回は[未探索ダンジョンの調査]と、最高難易度ダンジョン決定じゃねぇか!今からでも、一度戻って装備を準備し直して本気で……いや、現実でもあるかもしれないしな。いっちょ行ってやるか!」


 勇気を振り絞り、未探索ダンジョンへと足を踏み入れ……やっぱり《雷神》は使える事にしよう、そうしよう。


 気を取り直して、足を踏み入れ……これどうやって入るの?

 あっ、ここに手を触れると。


 ガシャッガシャ


 立方体の一面に自動ドアが作られ、今度こそ足を踏み入れる。


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